「文武両道」の竹は、「両立」から一歩進んで、「部活で学んだことを勉強に活用する」です。
私の学校の二年生が「部長会議」に取り組んでいました。会議の中で日頃の悩み、特に勉強と部活の両立について話し合いました。そのまとめとして議長が学年集会で「今はシーズンオフで県大会は6ヶ月後ですが、基礎トレーニングを積んで大会に備えています。勉強も、受験はまだ先ですが、今のうちに基礎を固めておきたいと思います」とアピールしていました。
また、私が担任していた野球部の生徒は、「毎日炎天下のグラウンドで体力の限界まで練習していたので、それに比べればエアコンの効いた部屋で座って長時間勉強するのはなんでもないし、また分刻みで次々と練習メニューが組まれていたので、計画を立てて勉強するのは苦にならない」と言っていました。
このように部活で学んだ「ものの考え方」や「物事の効率的な進め方」を勉強に応用したり、培った体力や気力で受験勉強を乗り切ることができる人は、特別活動である部活動の意義を理解できています。
しかし言うのは簡単ですがこれが実践できる人はごく少数です。なぜならこの「竹」を実践するためには大きな壁があるからです。
部活と勉強には決定的な違いがあります。部活動は「任意」、好きだから加入しているのであって、嫌になったら退部することができます。一方、勉強は「全員参加」(大学受験を目指す高校に進学するのは「任意」ですが)、嫌いだから即退学という訳にはいきません。
何事も嫌なことはつい後回しにしてしまいがちです。私の学校の場合、三年生5月のK社マーク模試と記述模試は県総体の練習の最中で準備できず、B社の6月・7月模試は体育祭や文化祭の準備に気をとられ、夏休みにやっと基礎に手をつけだし、9月・10月の本番に沿った模試には歯が立たず、気がつけばセンター試験は目前、という生徒がかなりいます。
勉強が嫌で受験勉強のスタートを先送りした結果、十分な準備が整わないまま受験本番を迎える、これでは志望校に合格するのは難しいです。
勉強でも部活でも、その中に好きなこと、嫌なことは存在します。部活動だと基礎練習は辛いものです。しかし好きなことの中の嫌なことだから我慢できます。一方嫌いな勉強の中に嫌いな教科があるとやる気が起こりません。
嫌なものを克服するためには時間をかける必要がありますが、後回しにすればするほどその時間はなくなり、最後は「捨てる」。そうなると5教科7科目を課す国公立大学は無理、私立も「物理は無理」「英語はいらない」と言い出せば、受験できる大学はどんどん限定され、最後は不本意な進路先を選択をすることになります。
「文武両道」の松は、「部活と勉強の相乗効果」の一歩先「勉強を部活のように好きになる」です。これも「言うは易く行うは難し」ですが、「部活の楽しさ」にヒントがあります。(続く)