ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

今なら聞ける共通テストの基礎知識(出願編+リスニング変更)

はじめに

 7月22日、大学入学センターのHPに2021年度の大学入学共通テスト(以下共通テスト)の受験案内がアップされました。現物は、現役生は9月初旬に担任から配布されます(過年度生はお近くの大学で入手が早い)。

 受験生は9月中に共通テストの願書を完成させます。今回はその予習です。

*これは2021年度入学者選抜の記事です。ー 2022年度入学者選抜用はこちら

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

 さて入試改革の三本柱であった不公平な英語民間検定利用、採点できない国語と数学の記述式、使えないJAPAN e-Portfolioは次々と破綻しました。

 共通テストも現場から見れば問題山積です。

  • 問題にたどり着く前に疲れてしまう架空アクティブラーニングのリード文
  • 「民間検定を必須化したい」という未練からかリーディングとリスニングだけ、「四技能をバランスよくの大義名分はどこへ」?と言いたくなる英語
  • サンプル問題なしに新学習指導要領の3要素を現代文2題にねじ込む、ぶっつけ本番の国語
  • 倫理の出題をめぐるいざこざ

 さらに今年はコロナ禍から「2日程」に「特例追試がセンター試験の予備問題」とメチャクチャです。

 おまけに大学入試センターはもう一発ぶっ放してきました。『受験案内』2頁

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 (゚Д゚)? 第3問から一回読み?

 

 2回目の試行調査が第4問以降が1回読みだったので、対策本や模試はその仕様になっています(「第3問1回読みは」たしか最初の試行調査B)。

 センターの言い分が( ̄ε ̄ ) .。oO(「1回読みが出る」とは言ったけど、どの問題とまでは言ってないヨ!)なら、受験生は (、´・ω・)▄︻┻┳═一 ・∵.・∵. な気分でしょう(人に向けて撃ってはいけません)。

   

 

補記:2021年度の特例について

 「学業の遅れ」を理由に1月30日・31日の日程を受験したい場合は「学校から説明があります」と書いてあります(『受験案内』3頁)。

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補足 8月3日

 7月31日に「志願票及び訂正届の取りまとめ方法」がアップされました。

www.dnc.ac.jp

「取りまとめ案内」のスクリーンショット、ハイライトは筆者

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 文章の端々に「やってあげてます」感がにじみ出ていますが(個人の感想)、第二日程を希望する生徒の志願票は別の「総括表」にまとめて送付する段取りです(特別配慮申請と同じ)。

スクリーンショット 公的機関の公的な発行物は自由に活用していいです。

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 日程は出願したら変更できません志願票には日程を選ぶ欄がなく、高校に志願者がどの日程を選択したかを確認する文書を作るよう求めています。「配慮を言い出したのはあなた方でしょ」感にあふれています(個人の感想)。

追記 9/13 こんな感じ 裏面にも何もない (--〆) DNCの『受験案内』のスクリーンショット

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 受験届表面の空きスペース大きく朱書きで「1」「2」と書くしかないです。

 

 

 大学の先生たちが文科省に要望書を提出、第一日程だけにするよう(第二日程は単なる追試 センター試験の問題を使う特例追試は廃止)要望しています。受験届に選択欄がないことも問題視しています。 

www.asahi.com

 灘高のキムタツ氏が取り上げて、新聞も遅まきながら記事にした模様です。 

www.nikkei.com

 

 

 表紙

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出典 大学入試センター

https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/shiken_jouhou/r3.html

でもこれが入っていた箱は「令和3年大学入試センター試験」(´⊙ω⊙`)

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目次

 

1 基本編

 ① 「大学入試共通テスト」とは?

 高等学校の段階における基礎的な学習の到達度を判定する目的で行われる試験のことです。毎年1月13日以降の最初の土曜日及び翌日の日曜日に全国で一斉に行われます。会場は各都道府県の大学などを使用します。

 

② 共通テストの主な特徴

(1)国公立大学を受験する人はマスト

 すべての国公立大学が一次試験として利用します。大学ごとの個別試験(二次試験)と組み合わせて合否判定を行います(一次カットのみに使う大学もあります)。

 

(2) 私立大学も入学試験として利用できる

 現在ほとんどの私立大学が、自校で作成した問題による試験以外に、共通テストを利用する受験方式を採用しています。

 「利用方式」は共通テストの成績のみで合否を判定します。「併用方式」は一般試験と共通テストを組み合わせて合否を決定します。


(3)入試として課す科目・配点は各大学に任されている

  共通テストで用意されている6教科30科目のうち、受験生にどの教科・科目を課すのか、配点をどうするかについては、すべて各大学の裁量に任されています。

a)教科・科目

 国公立大学の大半は国語、外国語(英語はリスニング含む)、数学①・数学②が必須で、それに加えて文系は地歴・公民から2、理科の基礎科目2を、理系は地歴または公民から1、理科専門科目から2、の計5教科(7or8科目)を課すのが一般的です。

 「アラカルト方式」は任意の教科・科目を点数化することです。例えば東京都立大学の法学部は私立文系と同じ科目で受験可能です(詳しくは募集要項を参照)。

b)配点

 例えば三重大学の工学部は、二次試験で英語の試験がない代わりに一次の英語の配点を高くするなど教科間の「傾斜配点」を実施しています。最難関の国立大学は共通テストの点数を圧縮して二次試験重視のところが大半です。

c)私立大学の共通テスト利用方式

 一般試験と同じ2~3教科が主流です。難関国立の併願先にあたる私立では5教科を判定に使う方式もあります。

 首都圏では早稲田大学上智大学青山学院大学などで一般試験で共通テスト受験が必須の方式や学部があるので、募集要項で確認してください。

(4) 全問マークセンス方式

 選択肢から正解と思われるものを選び、マークを鉛筆で塗りつぶしていく「マークセンス方式」で実施され、採点はコンピュータによって行われます。記述式はなくなりました。

(5) 出題は学習指導要領にもとづく

 次期学習指導要領の先取り疑惑もありますが、基本は教科書の範囲から出題されます。センター試験は平均6割、試行調査は5割を目標にしていましたが、本番はどう平均点管理するつもりか不明です。

(6) 受験生本人には年度内に得点が通知されない

 受験生に点数が開示されるのは翌年の4月以降(出願時に申請)、出願時には自分の持ち点がわからないので、受験生は解答を記録し、発表された正解をみて自己採点し、それをもとに受験する大学を決めます。

 当然「自分の持ち点」でどの大学に合格しそうかはわかりませんから、受験産業の「自己採点サービス」を利用します。

(7) 試験時間

 数学①が70分になったので、二日目の時間に変更があります。『受験案内』7頁。

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2 出願編

 

①出願時の基本的な注意事項 

(1)当日の受験教科をすべて申告する

 何を受験するか出願時に申告する必要があります

 国公立大学を考えている人は原則5教科フル受験、私立専願の人は必要な教科を申請します。

 数学は受験科目数に関係なくA「受験する」×「受験しない」のいずれか選びます。地歴・公民と理科は後述します。『受験案内』22頁

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(2)オプション科目が必要なら申告する

 数学②で簿記・会計などを受験する場合、外国語で英語以外を選択する場合は申告します。申告した生徒には本冊子に加えて申し込んだ別冊子も準備されます。当日気が変わって本冊子の問題を解答してもかまいません。

 なお英語はリーディング、リスニング各100点、英語以外は筆記200点で、後者を選んだ受験生はリスニング不要です。

 2021年の特例追試は英語のみで、筆記200点リスニング50点とセンターの予備問題を解答します。 

(3)成績開示通知を希望するかどうか申告する

 1の②の(6)参照

(4)受験料を計算して郵便局等で振り込み、領収書を願書に貼る

 3教科以上18,000円、2教科以下12,000円で、開示を希望するとプラス800円必要です。郵便局等で必ず指定の振込用紙を使って窓口で支払い「D振替払込請求書兼受領証」と「E検定料受付証明書」をもらってください。

 ATMを使うとこの2枚に判が押されない=支払いが証明できない=出願受理されない、ので絶対やめてください

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 金額を間違うと(特に3教科なのに2教科の料金しか支払わないと)煩雑な訂正手続きがあるのでやめてください

 保護者が振り込む場合でも「支払人欄」は受験者本人の住所と名前にしてください。保護者の名前で振り込むと大騒動になります,フリガナも必要です。

*上記のことをやらかすと、必要な金額を再度振り込み、先に振り込んだ分を返還請求する、という段取りになります。(´・ω・`)

 支払いを終えたら「E検定料受付証明書」を願書に糊付けします。

(5)イヤホンが入るかどうかチェックする

 おそらく進路指導室にリスニングのイヤホン(耳の穴にぶち込むカナルタイプ)があるはずです。学校で必ず耳の穴に入るか試してください。

 「入らない!」という人は「イヤホン不適合措置申請書」をHPからダウンロードして、必要事項を記入し、お近くの共通テスト参加大学へ志願者本人が出向いて確認のサインをもらい、願書の所定の欄に貼り付けて出願します。

 こうすると当日試験会場の大学がヘッドホンを用意してくれます。最寄り大学が遠方の人は担任に一言伝えて早引きさせてもらいましょう。

(6)ハンディキャップがある人への配慮

 まず進路の先生に相談してください。次に「受験上の配慮案内」をHPからダウンロードまたは郵送で入手し、必要事項を記入し、医師の診断書をつけて学校経由で願書と共に大学入試センターに申請します。「視覚障がい」から「トイレが近い」まで幅広く対応しています。

 審査の上、出願の「確認はがき」が帰ってくる頃に「○○の配慮をします」等の審査結果が来ます。なお「出願前申請」も用意されています。

 詳しくは先ほどのリンクの「受験上の配慮案内」を参照してください。

 また出願完了した後に事故にあったとか、試験が近づいてきて急におなかの調子が悪くなった場合も対応可能です。

 その場合はまず受験票に記載されている「問い合わせ大学」に本人または代理人が電話連絡した上で、受験票と医師の診断書を持参して申請してください。

(7)担任に提出し、チェック後、学校が一括して送付する

 現役生については、校長がその在籍を一括証明して、全員分を学校からまとめて送ります。

    受験案内には封筒が入っていますが、過年度生(浪人生)用です。現役生がこれを使って自分で送る(保護者が気を利かせて送ってしまう)と大騒動に発展しますから、絶対やめてください。

*過年度生は学校で卒業証明書などを発行してもらって、封筒に必要な書類を入れて自分で送ります。

 なお担任に提出する前に志願票のコピー(表裏)をとります。センターはデータ入力後に確認はがきを学校へ送ります。コピーと照合して、特に教科の入力ミスがないか確かめます。 

 

②共通テスト出願時の重大注意事項

(1) 地歴と公民は何科目受けるか出願時に申告する

 地歴と公民は「ひとつの教科」として扱い、同じ試験時間帯で実施します。

 1科目受験は60分で解答、2科目受験は130分(10分は回収時間)の中で2科目を解答します。ただし開始60分後に「第一解答科目」を回収します。

 センター試験の出願時に、地歴・公民については

A「1科目受験」

B「2科目受験」

×「受験しない」

 を申告します。この申告を元に受験教室が指定されます(同パターン同教室)。

 このため、2科目受ける人は20分前入室+130分試験と、150分は教室から出られません!(トイレ休憩はありません)。(+_+)

 したがって2科目受験で申し込みながら、その後志望変更で1科目でよくなったとしても、試験の途中で退出したり、途中から入ることはできません(ここ大事)

 国立文系は通常2科目を登録します。地歴と公民はまとめて1教科扱いなので、「2科目受験」と申請しておけば、当日地歴を2つ、地歴と公民を1ずつ、どちらも受験可能です。

 理系は1科目必須かつ「第一解答科目」のみ得点化なので、基本1科目登録です。

 地歴・公民と発展理科の「第一解答科目」「第二解答科目」については別回を参照してください。

  

(3) 理科の基礎科目と発展科目の組み合わせを出願時に申告

 理科は出願時に次のどれで受験するか申告する必要があります。

A 理科①(基礎科目。科目に「基礎」がつく)を2科目

 (理科基礎1科目だけ受験は不可)。

B 理科②(発展科目。「物理」「化学」など)を1科目

C 理科①(基礎)2科目、理科②(発展)1科目

D 理科②(発展)2科目

× 受験しない

 文系はA、理系はDが基本で、たぶんこれでどの大学も受験できるはずです。

 Bはアラカルト型の公立や中堅私立理系に狙いを絞っている人向けです。

 Cパターンは、看護系の学部に「基礎2または発展1」というところがあるので、このパターンを使う人もいます(基礎2と発展1は別時間割なので、両方受験したら高得点を採用する場合が多い。詳細は募集要項で確認)。

  つまり共通テストの出願時(9月下旬)に「どの大学を受験」するかほぼ決めた上で、必要な科目(地歴・公民と理科は科目数)を申告する必要があります。

 願書を書く時に、自分が受験する可能性のあるすべての大学について受験科目を調べ、すべてに当てはまるような科目・科目数の申告をしてください。

 科目調べは河合塾の『栄冠目指してvol.2』などを参考にし、念のため各大学のHPに掲載されている募集要項を確認してください。

 

3 おわりに

 

 共通テストに出願する時点から受験は始まっています。「自分がどの大学・学部を受験するのか」、「第一志望が難しいときの押さえはどうするか」をシミュレーションしておきましょう。

 なお各学校で共通テストの受験について考え方が違いますので、受験生は必ず担任と進路指導部の指導に従ってください。

 

出願したら

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 直前準備

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