ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

今なら聞ける大学入学共通テストの基礎知識(1センター試験との違い?)

 4月になりました。新三年生は「大学入学共通テスト」一期生になります。

 大学入試には「2年前ルール」という不文律があり、2019年の6月にはすべてのことが決まっているものです。

 しかし制度設計時から「無理ちゃう?」という指摘があった英語民間検定の活用と国語・数学の記述式について、文科省は「できる!」と言い張り、つじつま合わせを試みてはボロが出るの繰り返し、やっと昨年末、つまり実施1年前に両方とも見送りになりました。

*現在でも政府与党には英語民間検定について、問題の所在を経済的格差に矮小化し、復活を目指す動きがあります。英語民間検定を受けさせることが自己目的化=マーケット拡大しているように思えます。

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 現在も新テストの出題者が参考書を作って販売していることが発覚するなど問題山積(当事者は問題と思っていない模様)です。

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 今回は「大学入学共通テスト」(以下「共通テスト」)について、「大学入試センター試験」(以下「センター試験」)と変更がない点と変更点について整理します。

 付録に国公立大学の英語「リーディング」と「リスニング」の配点比率もつけましたのでご活用ください。

 

過去ログ 工事中 coming soon 

 

1 変更なし…日時・活用方法・試験科目・試験範囲・試験方法

① 日時

 毎年1月13日以降の最初の土曜日及び翌日の日曜日に全国で一斉に行われます(2020年度は2021年1月16、17日)。会場は各都道府県の大学などを使用します。

② 活用方法

 すべての国公立大学が一次試験として利用する共通試験です。受験後、大学ごとの個別試験(二次試験)を受け、両試験の総合得点で合否を決定します(一部例外あり)。

 多くの私立大学が、自校で作成した問題による試験(一般試験)以外に、共通テストを利用する受験方式を、従来の「センター利用」と同様に行なうと発表しています。

③ 試験科目

 用意されている6教科30科目もセンター試験と同じ、国公立大学の大半は国語、外国語(英語はリスニング含む)、数学①・数学②が必須で、それに加えて文系は地歴・公民から2、理科の基礎科目2を、理系は地歴または公民から1、理科専門科目から2、の計5教科(7or8科目)を課すのが一般的です。

 私立大学は2~3教科が主流、難関国立の併願先にあたる私立では5教科を判定に使う方式もあります。

 なお当初は民間の英語検定国公立大学の一般入試で必須化する予定でしたが、不公平が解消できないので初年度は見送りになりました。

おさらい1…英語民間検定を大学受験で必須化するのは無理ゲー

  1. 複数の用途が違う(高校生用や留学用、到達度を試すのか熟達度を試すのか)英語検定を点数化する。マラソン砲丸投げを比較するようなもの。
  2. 点数化する際に用いるCEFRは"can do list"であって複数の英語検定を比較するものではない。しかもその比較表を作ったのは検定業者とその関係者。
  3. 内容や採点の質が怪しい検定あり。50万人規模の受験生を収容できない。監督や実施体制の問題(高校で実施するとか)。
  4. 地域格差自治体によっては実施されていない検定がある。
  5. 経済格差…何度も練習できるお金持ちに有利。
  6. 利益相反…業者が検定ビジネスで儲ける

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④ 試験方法

 当初は国語と数学ⅠAに記述式を使用する方針でしたが、すべて「マークセンス方式」で実施され(正解の番号または数値・記号を塗る)、採点はコンピュータによって行われます。

おさらい2 50万人規模のナショナルテストで記述式は無理ゲー

  1. 答案を正確かつ公平に短時間で採点することは不可能。イレギュラーな解答が出て採点基準を見直せば、50万人分の答案をその都度見直す必要がある。
  2. 採点の利便性のためにイレギュラーな解答が出ないような問題にすれば表現力を図るという目的が達成できない。
  3. 採点は模試を運営する民間業者の関連団体が実施を委託されている。問題の漏洩や利益相反の疑い。
  4. 答案を採点する人員を確保できるかどうか疑問。 

 

2 変更あり…問われ方、実用的な問題、知識を活用する出題、英語の配点変更

① 問題文が長くなる

 数学や理科の場合、従来は問題は必要最低限の長さで、解答そのもので論理的思考力を試していましたが、共通テストでは最初に実用的な場面や先生と生徒の「アクティブラーニング」の場面が設定されます。つまり問題の読解より説明文の読解に時間と労力がかかります。

 

② 数学①は試験時間が延びる

 数学は従来試験時間が60分でしたが、記述式導入によって数学①は70分になりました。その後記述式はなくなりましたが、時間はそのまま70分です。なお数学②は従来通り60分での実施です。

 国語は記述式で問題が1題増えて100分の予定でしたが、記述式がなくなって元の80分に戻りました。

 

③ 英語はリーディングとリスニングだけに

 センター試験の英語(筆記)は発音・アクセント(スピーキング代替)、文法・語法・並び替え(ライティング代替)、リーディングで構成されていました。

 共通テストでは当初英語の試験廃止し英語民間検定に完全移行するつもりでしたが、現場の反対から当面は実施することになりました。

 その英語は、「リーディング」では文法問題などがなくなり、メール・広告・レポートなど実用的な文章の読解が延々と続きます。

 また「リスニング」は同じ試験時間で問題数が増加、そのため一回読み問題が出題されます。隣の生徒が大きなくしゃみをしたらどうするのでしょう。

 このように共通テストの英語がバランスを欠くものになった一方、多くの国公立、私立大学は入試を大きく変えません。つまり文法・語法問題、抽象的な論説文がガッツリ出題されます。

 そして共通テスト最大の変更点が、英語筆記とリスニングの配点比です。センター試験は英語筆記200点:リスニング50点でしたが、共通テストはリーディング100点:リスニング100点になります。

 これについて文科省は「配点比率は各大学で考えてよい」と(丸投げ)しているので、各大学でその比率がとんでもないことになっています(後述)。

 

④ 実用的な問題

 国語は試行調査では近代以降の文章(以下現代文)3題(実用的文章、論理的文章、文学的文章)でうち1題が記述式の予定でしたが、記述式廃止に伴い現代文が2題に戻りましたが、「実用的な文章は出題する」と残すとなっています。

 これ以上の試行調査は行なわないとのことですから、現代文2題はどのような出題になるのか未知の世界です。

 

⑤ 知識を活用する問題

 世界史の試行調査では初見の史料が出題され、学習した内容からその意味を類推する設問がありました。また国語や英語では複数の資料をクリティカルに読み取るというよりは、情報をつまみ食いする出題です。

 

3 対策は?

 私は、共通テストの肝は次の三点、特に3番目が大事な点と考えます。

  1. 問われている知識は教科書レベル。
  2. 問題そのものの前に対話文などを読解する必要がある。
  3. 初見の資料を見て知識をつなぎ合わせる作業が必要。

① インプット…基本は授業

 これまで「自称進学校」と称される一部の高校では、センター試験に特化した学習、すなわちセンター試験の出題パターンを覚えて高得点を稼ぎ、持ち点で判定がAやBのところに出願して逃げ切るという「対策」が採られてきました(個人の体験です)。

 最後のセンター試験は共通テストを意識して「目先を変えた」出題が目立ち、平均点は大きく下がりました。おそらくこの「パターン学習」しかやらなかった生徒たちが足元をすくわれたのではないでしょうか。

 共通テストも何年かすれば「パターン学習」が確立するでしょうが、現状では未知です。とはいえ問われている知識は教科書の範囲内です。問題をよく見るとアクティブラーニングもどきの場面や実用の場面など長い文章が続きますが、しょせん「ギミック」、内容は授業でやっていることばかりです。

 つまり月並みですが基本は授業です。予習→授業→復習→考査のサイクルで、教科書の内容をきちんと理解することを心がけましょう。

 

② アウトプット…予想問題集を「よく考えながら」やる

 とはいえ文章を読むのが嫌いな受験生にとって「ギミック」の文章を読むのは骨が折れます。

 やはり「問題慣れ」が必要です。教材販売各社は試行調査を参考に予想問題集を出しています。できるだけ多く予想問題にあたることは必要です。

 ただし「パターン覚え」はやめましょう。共通テストは「初見の資料に対して複数の知識を組み合わせて解答する」ことを目的にしていますので、まずは基礎基本を徹底し、演習をしながら「頭を使う」(論理、比較と関連づけ、発見)を心がけましょう。

 

4 おまけ 国公立大学のリーディング、リスニング配点比率

 志望校ごとに配点比率が著しく違うと勉強計画が立てづらいです。受験生および英語の先生泣かせです。

河合塾のサイトを参考にしました。受験生は大学HPで確認してください。

www.keinet.ne.jp

大学 学部 RL比率
小樽商科   1:1
帯広畜産   3:2
釧路公立   4:1
札幌医科   1:1
北海道   1:1
青森県立保健   4:1
弘前   1:1
東北   3:1
宮城   4:1
秋田県   1:1
福島   4:1
茨城   4:1
茨城県立医療   7:3
筑波   4:1
宇都宮   3:1
群馬   4:1
群馬県立県民健康科学   4:1
千葉   4:1
お茶の水女子   1:1
東京   7:3
東京医科歯科   3:1
東京学芸   1:1
東京都立 人文社会、法、経済経営、 4:1
理、都市環境(地理環境、
環境応用化学)、システム
デザイン、健康福祉(作業
療法を除く)
都市環境(都市基盤環境) 1:1
都市環境(建築) 2:1
都市環境(観光科学(前)) 3:2
都市環境(観光科学(後)) 3:1
都市環境(都市政策科学 5:1
(前(文系)・後))
都市環境(都市政策科学 6:1
(前(理系)))
健康福祉(作業療法 8:3
東京農工   13:7
長岡造形   1:1
新潟   4:1
新潟県立看護   3:1
公立小松   4:1
山梨 教育、生命環境(生命工)、 1:1
4:1
生命環境(生命工を除く) 3:1
信州   4:1
長野   1:1
岐阜   3:1
岐阜薬科   3:2
静岡文化芸術   1:1
愛知県立芸術 音楽 4:1
豊橋技術科学   1:1
名古屋   3:1
名古屋工業   1:1
名古屋市   4:1
三重   2:1
三重県立看護   1:1
京都   3:1
京都府 文、生命環境 4:1
公共政策 10:1
福知山公立   1:1
大阪   3:1
神戸   4:1
神戸市看護   4:1
奈良教育   4:1
奈良女子   4:1
公立鳥取環境   1:1
鳥取   4:1
島根   4:1
岡山   4:1
広島   1:1
広島市   4:1
下関市   7:3
山口   4:1
山口県 国際文化(国際文化) 5:2
国際文化(文化創造) 4:1
社会福祉、看護栄養(看護) 1:1
看護栄養(栄養) 3:1
鳴門教育   1:1
九州工業   1:1
福岡教育   1:1
福岡県立   1:1
大分県立看護科学   1:1
鹿児島 医(医)を除く 4:1
医(医) 3:1
沖縄県立看護   3:2
名桜   1:1