放送大学で教員免許更新講習「教育の最新事情」、テストで満点(のはず)に甘えず、復習しながら教育の現状について考えます。
前回
bunbunshinrosaijki.hatenablog.com
*引用部分は私が放送大学を視聴してメモした内容の一部であり、自説が主で引用が従という著作権法の範囲内での利用です。
*文部科学省の文言に従い「障害」で統一します。
発達障害とは
- 注意欠如多動性障害(ADHD)
- 中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されていて、環境的な要因が直接の原因ではない。
「自閉症スペクトラム障害」はこれまで自閉症、アスペルガー症候群、特定不能の広汎性発達障害と独立して診断されてきた症状について、これら症状は「多様性がある連続体(スペクトラム)」という観点からの統合的な名称です。
学校支援体制
1)特別支援教育コーディネーターの役割
- 校内や関係機関との連絡調整、保護者の相談窓口
2)特別支援教育に関する校内委員会
- 支援の必要な子どもに気づく
- 支援を要する子どもの実態把握と支援方法の検討
- 個別の教育支援計画、指導計画の作成
- 校内研修会
3)特別支援教育支援員
- 支援員は発達障害のある子どもだけではなく,様々なタイプの子どもが通常の学級にいるときに配置される。
4)巡回相談員と専門家チーム
- 障害のある子どもの支援に慣れていない学校を支援する体制。
5)教育相談システム
- 発達障害があると思われる子どもに対する指導・支援を行う際のアセスメント。
学校教育法等の改正(2009年施行)によって、従来の盲・聾・養護学校の制度は複数の障害種別を受け入れることができる特別支援学校の制度に転換され、また小・中学校等においても特別支援教育を推進することが法律上明記されました(文科省HP)。
また障害のある児童の就学先を決定する際には保護者の意見も聴くことが義務付けられました。
つまり特別支援教育はどの学校においても組織として取り組む内容です。
高校の進路指導が直接関わってくるのは発達障害を有する生徒の就職や進学です。かなり深刻な問題なので日を改めて。
指導・支援のポイント
- 時間の見積もりがしやすいような具体的な声かけをする。
- 「~しないように」より「(代替行動)しなさい」の方が有効。
- 予告する・事前にリハーサルをする。
- 自らのことに置きかえて想像させる。
- 誰かが気持ちを言語化,代弁することも必要。
- 曖昧指示が苦手。具体的に指示するとできることも多い。
段階別の指導・支援
- どのようなタイプの子どもでも授業の内容にアクセスしやすい授業のやり方に心がける。
- 何か苦戦している様子を見せてきている子どもたちへの支援。気をつけて声かけをする,何が原因かを突き止め早期に対応していく。
- 特別な教育ニーズのある特定の子どもに対する支援。通級学級などでの個別指導や小集団指導。
インクルーシブ教育
「発達障害」について理解がないと絵のような展開になりがちです。このため教師は「指導・支援ポイント」の校内研修を行ったり、可能な限り情報交換を行ったりします。
第7章 子どもの生活変化と生徒指導
私生活化
- 公的事象に対して私的事象を優先する生活態度。
- 政治や社会よりも自分の生活や家族生活を優先させ,将来の価値実現よりも現在の生活満足を優先させる生活態度をとる。
私生活化と子どもの問題
- タテの関係が基本である親子関係が対等なパートナーシップというヨコの関係になっている。
- 現代の子どもたちは,本人および親の「私生活化」によって自己本位的になり、対人関係能力を発達させることができず,社会性が低下しがちである。
近頃の学校に対する様々な要求は、親が学校(公的領域)から家族や子ども(私的領域)を防衛しようとする「私生活化」に起因する行動と解釈できます。
学校教育と子どもの集団生活
- 学校は公的教育機関として子どもたちをその社会の普遍的・客観的な規範に一致するように意識的・計画的に社会化していく。
- 社会化とは個人が他者との関係を通して所属している集団の価値・規範・行動様式を習得していく過程をいう。
- 集団生活を通して子どもは学力の形成,規律・規範の遵守,他者への配慮,コミュニケーション能力といった社会性を涵養し,自発性を伸長させて社会人としての資質を獲得する。
生徒指導と子どもの集団活動
- 生徒指導の「集団指導」とは集団活動を通して社会性を育成していこうという教育活動である。
- 集団指導は「フォーマル」と「インフォーマル」に分けることができる。
- 「フォーマルな集団指導」は特別活動(児童会・生徒会活動,学校行事,学級活動)。
- 集団活動において子どもは,成員間の対人関係を通して,他人の存在を意識し,自己統制を発達させ,コミュニケーション能力を高め,集団活動遂行上の個々の成員の地位と役割を知り,社会性を獲得していく。
- 「インフォーマルな集団指導」は特に異年齢集団活動。
- 集団的興奮によって対人関係は一挙に深まり,表面的な関係から内面的な関係へと深まっていく。
- 異年齢集団は年齢に従った地位・役割を構成し,子どもたちはそれを自然に受容し,自分に期待されている役割を認知しやすい。
- リーダーシップとフォロアーシップのあり方の理解,モデリングによる役割取得によって対人関係能力を高め,社会性を培っていく。
学校の本来の役割は「集団活動によって社会性を内在化させること」といえます。
「勉強はネットでできるし、友達もネット上にいる、学校は必要ない」という生徒からすると、まさにこれが行きたくない原因かもしれません。
「私生活化」が進行すると、学校に対して「社会性の内在化」よりも「サービスとしての教育行為」の要求が増えます。
結果として学校の仕事は拡大し、それが「教職員の多忙化」や「学校そのものの軋み」につながっています。「何でもかんでも学校に求めないで!」というのが多くの教師の正直な思いではないでしょうか。
第8章 子どもの問題行動と教育相談
子どもたちの「問題行動」
- 「反社会的行動」「非社会的行動」、さらに両者の複合ケースも増えている。
- 問題行動はそのものは決して望ましいことではなくても,その行動を通して子どもたちからのSOSが読みとれる場合もある。
問題行動には「行動化」(暴力・非行・いじめ・自傷)と「身体化」(心身症)がありますが、表面的な問題だけ見ず、「どうなくすか」に加えて「その行動をどう理解するか」という目をもつことが肝要ということです。
教育相談の実際
- 聴くこと(傾聴)。子どもと同じ目線に立ち,人間対人間として対等な関係を築く努力が必要。
- 心で感じること(共感)。相手の立場や気持ちをそのままに感じる。
- ひとまずしっかりと受け留めること(受容)。非行行為については、そうせざるを得なかった心情を受け留める。
反社会的「行為」は肯定できませんが、「どうしてその行動に至ったか」についての心情は受けとめましょう、ということです。
教員は答えを求めたがる癖(笑)があるので、先回りをして誘導したり、黙っていたら話を促そうとしがちですが、教育相談の場ではよくないです。
教師とカウンセラー
- 教員は「個の集まりからなる集団」である学級で、個人も指導する。集団指導とカウンセリングの両方が必要。
- 教師は日常生活を子どもと共有しているために,問題の早期発見や予防が可能。教師集団で連携して情報を共有できる。家庭との連携や友だちの協力を得ることも比較的容易。
- 教師とカウンセラーがそれぞれの役割を相互に理解しながら協力して職務を果たす。教師かカウンセラーかという二項対立を超えた新しい教師の立ち位置を構築する。
アセスメントと「つなぐ力」
- 教師に求められるのは,カウンセリング的な関わりが必要な子どもを見分けるアセスメント力。
- 教師は関わりが必要な子どもに対し必要な時に過不足なくカウンセリング的に接することができる。自分の力量や専門性を超える場合は,専門機関や専門家にすみやかにつなぐ。
- 学校・家庭・外部の専門機関が「連携トライアングル」を形成する。互いの主体性を尊重しながら適切な関わりができる「オープンな関係」の構築が求められる。
いわゆる「学級王国」のように担任がクラスの全責任を負うのではなく、子どもの身近にいるメリットをいかして問題の早期発見をし、手に負えないときには上司・同僚、保護者、関係機関にヘルプを求める、ということです。
そのためには職場のオープンな雰囲気は不可欠です。
まとめ
免許更新制度には疑問ありですが、放送大学のコンテンツは教員のブラックな労働環境の背景をあぶり出していて面白かったです。
現在の教師は授業と行事、集団指導と教育相談など「ベクトル」の向きが違う仕事を同時にやらなければいけません。授業とHRで仕事終了ではありません。
しかも残業代4%で労務管理はほぼありません。この実態が明るみに出ると後継者がいなくなるのではないかと心配です。
先生方、お身体を大切にして、ぜひ免許更新講習は放送大学を利用して(宣伝)適度の頑張りでクリアしてください。