先日生徒が「一日看護体験」に参加したので、受け入れ病院にご挨拶および生徒の様子を見に行きました。
「一日看護体験」は県と看護協会が中心になって、高校生・高等学校専門生が看護師の仕事を体験する行事で、県内各地の病院で行われます。
私は伊賀市立上野総合市民病院へ行きました。生徒たちがナース服に着替えて(画像なし)各病棟に分かれて体験をしますが、その前に全員で「手洗いの実習」をするので混ぜてもらいました。
病院のマスコット。
講師は感染防止対策室の感染管理認定看護師さんでした。
*発展:「認定看護師」は日本看護協会の資格で、看護師免許取得後実務研修が通算5年以上ある看護師が(うち3年以上は認定看護分野の実務研修)、認定機関の課程を修了し(6か月・615時間以上)、認定審査にパスすると「認定看護師」に登録されます。5年ごとの更新には実践報告の提出が必要です。
研修の概要
病院は様々な病気を持っている人が集まる場所です。体力や気力が通常よりも落ちていますし、治療の結果免疫力が低下している方も見えます。特に伊賀市の高齢化率は31%(全国26%)、入院患者の中にも80代、90代の方が見えます。
医療従事者はそうした人たちに常に接していて、治療や看護のために手で触ることが多いです。医療従事者が感染経路になることは避けなければいけません。
感染症で気をつけなければいけないのは細菌(一過性菌や常在菌)とウイルスです。
私たちの体には常在菌が無数に付着しています。それらは私たちの体を守ってくれる一方、体のバランスが崩れると私たちを攻撃することもあります。
細菌は生きた細胞の中で増殖するウイルスとは違って、水や栄養分で増殖します。いい栄養状態だと30分に1回分裂するので、一晩で約一億個に増えます!
細菌が医療行為を介して抵抗力の弱っている患者にとりつくと大変なことになります。だから手洗いは非常に重要です。
ではまず手指消毒から。
指先→手のひら→手の甲→指の間→親指→手首の順で消毒液をすり込みます。
実習のために蛍光塗料が入ったものを使いました。手になじませた後、ブラックライトを使って全体まで消毒液が行き渡っているか見てもらいました。
次に手洗いで消毒液を落としました。
手のひら→指の間→手の甲→指先→親指→手首→水洗い→ペーパータオルで拭き取る→ペーパータオルで蛇口を閉める。
*発展:蛇口以外にもドアノブ、キーボード、点滴の機械、エレベーターのボタン(人気刑事ドラマの劇場版?)など、不特定多数が触るところは要注意です。
ブラックライトを当ててみて消毒剤が落ちているかを見ました。
え、全然落ちてない!
看護師さんに「先生の手はいいサンプルだからみんな見に来てください」と言われました(笑)。私は手荒れが激しいらしく、手のひらに無数の細い溝があって、ブドウ球菌などが入り込みやすいとのことです。
いかん、ちゃんと手洗いします(反省)。
その他、マスクやエプロンの正しい付け方、ゴム手袋の正しい外し方を教えていただきました。
*発展:医療行為をして汚れた手袋を何となく外すと手に汚れがついてしまいます。まず汚れている片方の手袋の手のひら部分をもう一方の手でつまんで外します。次に手袋を外した方の指をもう片方の手袋の手首部分にいれて、手袋を裏返すように(先に外した手袋も巻き込む)取り外します。そうすれば手を汚さずに2つの手袋がコンパクトかつ汚れが内側になって取り外せます。
医療従事者はそれぞれ「マイ消毒液」を身につけています。一人の患者さんのケアをしたら必ずそれで消毒して、次の患者さんのケアをするそうです。
感想
医療従事者は直接命を預かる仕事です。「人間の尊厳を守る意思」「責任感」「的確な判断力と迅速な行動力」が求められます。
だから「誰でも感染症を持っている可能性がある」という前提で行動して感染症を防ぎます。その第一歩が「手洗い」です。
私の高校には看護師を志望する生徒が毎年約10人います。最初の動機が「手に職をつけたい」という人もいますが、必ず医療の現場に行って看護師さんの話を聞き、仕事を体験してほしいです。
生徒たちはその後小グループに分かれて病棟で看護体験をしました。
感想を聞きましたが、生徒は看護師や患者さんと直接関わる中で、「看護の仕事とは何か」「看護師さんのすごいところ」「しんどい部分とやり甲斐」について肌で感じたそうです(内容は企業秘密。体験しましょう)。
さらに看護職について掘り下げた結果、「わたしは必ず看護師になる」と覚悟して受験してもらいたいです。
そして教員も責任が重く、やり甲斐がある、覚悟が必要な仕事です。
だから手洗いをちゃんとしないと(笑)。
伊賀市立上野総合市民病院には看護部長さんをはじめ、たくさんの方にお世話になりました。どうもありがとうございました。