ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

フィールドワーク 京大エネルギー理工学研究所

 昨年の11月に生徒たちが京都大学エネルギー理工学研究所に見学に行くのを聞きつけ、私も強引にメンバーに入れてもらい、京都府宇治市に行きました。

 広報の人に「ブログにあげていいですか?」とお聞きしたらOKをいただきましたのでその様子を伝えます。

 

*エネルギー理工学研究所は産学協同に熱心で、登場する機材はすべてパンフやHPに公開されています。国家機密ではないのでご安心を。

 

    キャンパスは紅葉が見頃でした。

 

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www.iae.kyoto-u.ac.jp

 

 この研究所は直属学部を持たず、院生は各学部や他大学出身の学生からなります。研究内容も学際的です。

 

 最初に見学したのは複合ビーム材料実験施設(DuET)です。

 中性子加速器で原子にぶつけて物質を変化させる、というのが有名ですが、ここでは加速させたイオンビームを材料に照射して小さな穴をあけ、物質にどのような変化が起こるのか電子顕微鏡で調べているそうです。

 物質の組成や劣化の仕組みを調べることで、過酷な条件に耐える材質の開発を目指しているそうです。

 

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 次に見学したのはNMR装置群です。

 院生さんは「非可食性木質バイオマスの構造解析と動態」(稲藁やサトウキビの絞りかすには不要物質が絡みついていてバイオエタノールの原料となるセルロースが抽出できない。NMRが発する強力な磁気を使って不要物質が分子レベルでどう絡んでいるか構造解析する)の研究をしているそうです。

 成功すれば廃棄物質を解体して必要な物質のみを取り出せるみたいで、食料とバイオエタノールを両立させることが可能になります。

 

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 次に見学したのがエネルギー理工学研究所の本丸、量子物理学の湯川秀樹教授らが始めたヘリオトロンです。現在「ヘリオトロンJ」が稼働しています。

 核融合重水素三重水素を融合した際に発生するエネルギーを得る方法です(原子力核分裂)。しかし核融合反応を起こすためには、重水素三重水素の2つの原子核同士をものすごいスピードで衝突させる必要があります。

 常温だと反発するので加熱装置を用いて1億度以上の高温プラズマを作り、その状態を維持するに重水素三重水素原子核を高い密度で長時間、一定の空間に閉じ込めます。その装置がヘリオトロンで、ヘリカル(らせん)型のコイルと磁力でプラズマを閉じ込めます。

 

   体育館のようなところに機械が並びます。

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 最後に見学したのが自由電子レーザー(FEL)施設です。

 電子ビームを磁石を互い違いに並べた装置(アンジュレータ)の中に通すと、電子ビームはシンクロトロン放射光を発しながら蛇行します。電子ビームと放射光を重ねると、電子ビームの量や磁力の強さを変えると波長も変わるという可変レーザーが出力できます。X線に代わるレーザーとして医療分野への応用が期待されています。

 

    機械はテニスコート並みの大きさです。

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 研究は細分化されていて施設も巨大、今すぐ商用化とはいかないもののこれらが最終的に私たちの生活に還元されると思うとワクワクします。

 

 ただ身体の大部分がSFアニメと特撮でできている(笑)私は、「可変レーザーを使えばガミラスの戦艦の装甲板に穴を空けられる」、「波動砲は波動エネルギーをプラズマ化してヘリカルコイルに閉じ込めて一気に放出するのでは」、「強磁気で物質を分子レベルに解体するのは『キャシャーン』の上月ルナが持っているMF銃ではないか」など妄想していましたが、「軍事転用ありきで科学研究をしてはいけない」と池内了先生がおっしゃっていました。ごめんなさい。

 

軍と学の接近と学問の自由 池内了

 

 私の高校の周りには大学がなく、こうやって研究内容をがっつり見せてもらうと、大学は資格とか就職とかの前に、やりたいことを思う存分やる場所だと感じました。院生さんも「『何でこれやってるのだろう』と思うことはあるけど『やりたい』がモチベーション」と言ってみえました。

 

 エネルギー理工学研究所のみなさん、ありがとうございました。

 *私は純粋文系人間なので記述が間違っていたらごめんなさい。

 

 10月末には毎年宇治十帖ウォークラリーとタイアップして他の施設も見学できる機会があるそうです。ぜひ皆さんも見学に行ってください。

 

源氏ろまん2016 第26回宇治十帖スタンプラリーの開催について | 宇治市公式ホームページ ~宇治茶と源氏物語のまち~