ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

三年生10月 受験生のストレスについて考える

 10月も終わりに近づき、そろそろ行き先が内定する生徒が出始める頃です。

 

 国公立第一志望の生徒は当面は1月のセンター試験で高得点が目標です。しかし10月には8月・9月の模試の結果が戻ってきて、第一志望が軒並みE判定だと、「本当に成績が上がるのか」と不安になることがあります。

 また3年生の1学期まで部活に入れ込んで夏休みから勉強し始めた生徒は、残り3ヶ月で5教科7科目を仕上げることが、部活で育んだ気力と体力をもってしてもハードルが高いということに気がつく頃です。

 

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*いらすとやさんは相変わらず「ユーモアあふれる毒」があります。

 

 そんなときに友だちがAOや推薦で志望校に合格してルンルンしていると「私も早く受験を終わらせたい…」という気持ちに襲われるのも無理ありません。


 また後がない過年度生(浪人)のプレッシャーは現役生以上です。そこで予備校では臨床心理士に依頼して塾生のメンタルケアをしているところもあります。

  河合塾のサイトには「保護者の受験生にどう声かけをするか」などメンタル管理のヒントが載っています。

www.keinet.ne.jp

 

 先日私の学校で、河合塾で受験生のカウンセリングを行っている臨床心理士吉田恵さんが「ストレスや困難との向き合い方」と題して三年生向けに講演会を行いました。

 河合塾の営業担当さんに紹介の許可をいただきましたので、私なりに小見出しを付けてその要旨をまとめました。また私が重要と思った項目には連番を振りました。

 

1 ストレスとは何か

  •  ストレスとは心や体に負荷がかかることである。
  •  ①ストレスは嫌なことだけではない。好きなことをしている時のドキドキ感もストレス
  •  まったくストレスがないとやる気がでない。多少ストレスがあった方が「やる気スイッチ」が入りやすい。
  •  ストレスが強すぎると体も心も休んでしまう。つまり「やる気が出ない」のではなく「出せなくなる」。
  •  適度な緊張があると集中力が高まる。緊張でパニックになるのは「緊張してはいけない」と思うから。

 

2 「受験のストレス」との向き合い方

  •  受験は高校生が直面するストレスであるが、受験はゴールではなくてスタートである。目標が達成できれば嬉しいが、もし第一志望とは違うスタートラインに立ったとしてもこの先のすべてが決まるわけではないし挽回のチャンスはいくらでもある。
  •  ②「自分を大事に思ってくれている人は試験の結果で見方が変わるわけではない」と思えば頑張れる。
  •  「自立する」とは何でも自分でできるようになることではなく「依存先」をたくさん見つけること、自分で乗り越えるための「手立て」が増えること。
  •  他人や「世間の普通」と自分を比べない。比べるなら過去の自分。

 

3 「受験勉強のストレス」との向き合い方

  •  緊張のオンとオフはスイッチのように切り替えようとしない。疲れたら休む。休み明けにいきなりトップギアにしない。自然に集中力を高める。
  •  スランプは心と体が疲れている状態。今できることは続け、できないことは一時的に休む。
  •  脳は休んでいる時にバックグラウンドで動いていて、記憶の整理などをしている。休んでいる時にゲームをして脳を使うのは逆効果。ぼんやりする時間も必要。

 

4 まとめ

  •  ③合格する人は最後まで続けられた人。試験会場に行けた人。会場にいかなければ合格も不合格もない。最善を尽くして試験の日を迎える。

 

 以下話を聞いて思ったことを書きます。

 

 

1 ストレスは私が私にかけている

 

  私は①「勉強の内部から発するストレス」はどんどん感じるべきだと思います。

 問題は②「受験の外部から発するストレス」です。

 ただ外からのストレスは「内在化」、つまり「しくじったら私は価値のない人間に思われるのでは」など自分で自分を必要以上に追い詰めてしまうことで発露します。

 

 都会のトップ校や特別進学クラスに入学すると、地元の進学校の生徒が行くような大学に進学するのは格好悪いと感じる生徒もいます。

 しかし成績は入学がピークでどんどん下降、それなのに「私は○○大学以上しか行かない」と大風呂敷を広げ、理想と現実がどんどん乖離していく、こういう生徒を私は何人も見ています。

 

 また部活で「毎年全国に出場しているのにここで負けたら先輩に顔が立たない」と思えば思うほど頭が真っ白になって身体が動かなくなる、という経験をした人もいると思います。

 

 保護者が子どもよりも近所の評判を気にしている、○○高校は国立に多数合格するのが当たり前、など大人が目の前の生徒と違う方向(例えば「世間体」)を向いている、あるいはそういう雰囲気を出している場合、アンテナが敏感な高校生は、何気ない言動や態度からそれを嗅ぎ取ってしまいます。

  生徒の中には大人の目標を自分の目標と思いこんで、「できない私は価値がない人間だ」とストレスに苛まれることもあります。特に家業を継ぐ必要がある人のプレッシャーは想像以上です。

 

 しかし腹を割って話すと、多くの場合それらが誤解であることがわかります。

 保護者が普段厳しいことを言っているのは「演出」(「入れる大学でOK」と優しくすると子どもがだらける)という可能性もあります。常勝軍団が県大会で一回戦負けしても、監督は「結果は結果」として労をねぎらってくれます。

 保護者も先生も受験生を「駒」だとは思っていません。だから受験生は自分で自分を追い詰める前に、腹を割って話をしましょう。話したら「何~だ」とすっきりすることの方が多いです。

 

 *もしマジで世間体しか考えてない大人は今すぐ悔い改めましょう。

 

 最終的には「あなたがどうしたいか」が大事です。「他人のためにあなたがある」のではありません。大人はあなたに正面から向き合う必要がありますが、あなたもあなたに正面から向き合う必要があります。

 大人はあなたの結論を必ず尊重します。安心してください。

 

 

 2 勉強のストレスは「気持ちイイ」と思う

 

 部活は好きでやっています。だから試合のプレッシャーは根本的には心地よいものです。全国大会ならワンミスでアウト、吐きそうなプレッシャーの連続ですが、好きなことでそんな経験ができるなんてありがたいことです。

 一方勉強を「嫌いだけど進学しなければならない」「就職するには資格がなければならない」と義務感でやっていると、不快なストレスしか感じません。

 その結果「早く逃げ出したい」「なるべく楽をしたい」という気持ちが生まれ、「国立大学に指定校推薦はないですか?」など(笑)安易な受験方法を探したくなります。


 これは「文武両道」を正しく実践すれば解決します。

 「やらされている勉強」から「面白いと思ってする勉強」にテイクオフすれば、受験は部活と同じ「ポジティブなストレス」になります。

 勉強そのものを面白いと思う、楽しく頭に残る勉強法を編み出す、戦略を立てて相手を撃破してスッキリする、など部活の創意工夫を勉強にも活かしましょう。

 

 難関大学を目指す人のプレッシャーも想像以上です。「いくら頑張っても自信が持てない」、「当日知らない問題が出たらどうしよう」と感じる人が多いです。

 それは「高み」にいる人だけが感じるプレッシャーです。「私がきついときは周りもきつい」と思いましょう。今はそのプレッシャーを楽しむ余裕はないでしょうが、得がたい経験をしているとは思いましょう。

 

 

まとめ

 

 受験は人生の中でかなり大きいイベントですがすべてではありません。進学した大学であなたの人生がすべて決まる訳でもありません。「世間体」と言いますが「世間」はたぶんあなたに何もしてくれません。

  受験生は自分にちゃんと向き合い、よく担任と相談し、③「できることをすべてやった」上で合格した学校の中で一番納得できる進学先にする。それでいいと思います。

 ただし、勉強は楽しく、一生懸命やってください。受験生がストレスフルなのは間違いないですが、自分の成長を実感し、ストレスを楽しんでほしいです。ドキドキしないと人生楽しくありません。

 そのためにも私はこのブログで「勉強が楽しいと思える」方法を紹介していきます(笑)。