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ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

世界史の学習方法について考える(2 記憶を定着させる)

世界史

 前回は、世界史という科目が生徒の何を試そうとしているかを話しました。

 今回は、知識を定着させるための効果的な入力や出力の方法について考えたいと思います。

 

1 教科書を読んで「ストーリー」を把握する

 

 世界史は全体・章・各単元で「伝えたいこと」があります。

 古代アテネの民主政なら、「狭い土地をみんなで守る」→「市民は全員兵士」→「命張っている分政治に参加させろ!」→「民主政システム」→「衆愚政治、貧富の差の拡大で傭兵の使用」→「民主政の崩壊」というように「民主主義は自分たちで守らないと崩壊するぞ!」という今との共通点や、「アテネの民主政と今の民主政との違い」などが、この単元の「伝えたいこと」といえます。

 このストーリーの裏付けとなる語句、例えば「オストラシズム」=トピック、「ペリクレス」=人名、「カイロネイアの戦い」=終了のきっかけ、などが記憶するべき「重要語句」です。

 

 ただ太字だから丸暗記するのではなく、伝えたいストーリーに沿って語句が並んでいるので、ストーリーとの関連性の深さが語句の重要度=テストに出やすい、といえます。ストーリーに沿って教科書をもう一度読みます。

 このストーリーを解説するのが授業です。1,2年生の時に授業をちゃんと聞いていない人が教科書を読んでも事項と事項との関連性が理解できません。この場合は参考書か「講義本」を読んで、ストーリーを補完します。

 

 

2 「ストーリー」が頭に入っているかチェックする。

 

 学校で購入、あるいは市販されている書き込み式ノートを使って、空欄の事項が思い出せるかどうかチェックします。最初は空欄に適する語句を正確に書く(漢字、濁点や半濁点に注意)、次に声に出します。この時空欄だけではなく、書かれている事項も含めて口頭で「ああなって、こうなった」と人に説明するように答えます。

 次に一問一答形式で重要語句を確認します。間違ったら教科書、書き込み式ノートに戻ります。特によく間違うものは「間違いノート」につけます。

 一問一答の問題集をする時、問題文を見て用語を思い出すだけでなく、用語を見て説明を言う「逆方向」トレーニングもしましょう。センター試験では四つの選択肢から「唐の時代のことはどれか」という問われ方をしますから、事項だけではなくそれがいつ、誰がしたことかまで覚えていないと判別できません。

 

 論述問題対策には、用語を頼りに自分で単元のまとめを一通り話すトレーニングをしたり、「反転授業」といって、「アヘン戦争清朝はなぜ負けたのか」という問いを立てて復習していく(『本能寺の変』はまさにそれ)のも効果的です。

 

 最後にその範囲の入試形式の問題をやって、解答できるかチェックします。答えられなかったところは書き込み式ノートに戻って復習します。入試問題で書き込み式ノートに載っていなかった「突っ込んだ情報」が出ていれば、ノートに書き込みます。

 

 

3 出力する方向を変えて知識を定着させる

 

 受験勉強の最初は教科書順、8月からは各国史(一つの地域を通史で復習)、テーマ史(中国の制度史、遊牧民史)の演習をします。世界史のセンター試験は100%テーマ史で、全範囲の事項がシャッフルで出題されます。間違ったら1や2に戻り、間違ったことはノートにつけましょう。

 教科書の索引は事項が時系列ではなく五十音順に並んでいるので、索引の語句から「いつの何」かが言えるかトレーニングに使えます。

 資料集もシャッフルトレーニングには効果的です。例えば北魏、金、元、清は別々に習いますが、遊牧民が農耕世界を支配するという構造は似ている一方、それぞれの統治方法は違います。これらをまとめて比較できるページを活用します。

 

 センター試験でよく出題される「○○世紀の世界」は、資料集の地図で復習します。学校で購入する問題集にも地図付きで「○○世紀の世界」を復習できるページがあります。年号の知識も必要ですが、世紀別の地図を見てどこがどの王朝か瞬時に言うトレーニングは、特にマーク模試の前に効果的です。

 

 最近は地理的な感覚を問う出題が多いので、主要な都市や山脈・川の名前も地図で学習します。

 特にアフリカ史や東南アジア史は「何世紀にどこにどのような王朝があって、どんな文化を持っていた」、「ヨーロッパはどこに拠点を置き、どういう争いが起こるか」について、地図入りまとめノートを作ります。必ず川の名前、島の名前も入れます。

 受験も後半にさしかかるとこうしたまとめノートを作っている暇がなくなりますから、地図入りまとめノートは早めに作ってマーク模試の前に活用しましょう。

 

 

4 ストーリーと比較の観点で復習する(長いので、一寸休憩してください)

 

 私は生徒から「世界史の受験勉強をどこから始めたらいいか分からない」と相談を受けます。その時に「中国史から復習しましょう」とアドバイスします。中国史は王朝ごとの「ストーリー」がはっきりしていて、その「ストーリー」の比較ポイントが明確だからです。

 中国史は、A成立→B王朝の特徴→C転機となる事件→D滅亡のサイクルで、主要な人名、地名、事件名、制度名を目標にストーリーを覚えていきます。

 

 

1)ざっくりと覚える 例:唐

 

A隋末に、    李淵が挙兵して618年に建国 首都は長安

 ひとつ前は?      最初は誰? いつ? どこ?

B 李世民の時に  律令体制確立、 第3代高宗の時に領土最大

  人名           トピック→何?   人名    トピック→どこ?

C1 則天武后の時に王室一時中断     玄宗の時に最盛期も均田制が行き詰まる

   流れ変化の人名  トピック→何?  流れ変化の人名  トピック→なぜ?

C2 安史の乱が発生、その後節度使自立、両税法導入など律令制崩壊

    トピック→経緯?           トピック→何?

D 黄巣の乱で衰退、朱全忠により907年に唐滅亡 後梁建国

      滅亡のきっかけ 滅亡させた人、いつ?→ その後どうなった?

 

 

2)「2周目の知識」として重要事項の「いつ、どこ、だれ、なに、なぜ、どのように」を覚える。

 

A隋末に、    李淵が挙兵して618年に建国 首都は長安

 滅亡の原因は?   どんな人?→山西省の豪族     地図で場所確認

 →煬帝高句麗遠征失敗                     →前漢の首都。隋では大興城

B 李世民の時に     律令体制確立、     第3代高宗の時に領土最大

   貞観の治            中書門下尚書・六部・御史台            西突厥吐蕃

                          均田制・府兵制・租庸調        都護府設置

C1 則天武后の時に王室一時中断    玄宗の時に最盛期も均田制が行き詰まる

     国号を周とした 科挙官僚を重用      開元の治 府兵制が募兵制に 節度使

C2 玄宗の時に安史の乱が発生、   その後節度使自立、両税法導入など律令制崩壊

  755年節度使安禄山・史思明       藩鎮・内地にも置かれる 780年 楊炎

  楊貴妃一族重用 ウイグルの援助で鎮圧                夏秋2回 資産に応じて銭納

D 黄巣の乱で衰退、朱全忠により907年に唐滅亡 後梁建国

  私塩商人が中心   節度使の短命な政権    後唐以外は開封が首都

                        後晋(燕雲十六州)後周→宋

 

 三省六部の詳細、ソンツェンガンポなどさらに細かい事項は、模試や演習で出てきた時に教科書や書き込みノートに随時追加していきます。

 

 

3)つっこみ=解釈を入れる

 

 自分なりのストーリーができてきたら。「つっこみ」を入れます。歴史の登場人物は私たちと同じ人間、考えることはそう変わりません。どうすれば自分の支配領域を守ることができるか、どうすれば支配領域の人々が自分の言うことを聞いてくれて協力してくれるか、を考えます。

 

・行政組織、法律、徴税や軍制を整え、皇帝中心の帝国を作った(特徴…やるじゃん!)

科挙官僚もいるが、門下省など貴族が力を持っていた(縦の比較…宋は士大夫科挙官僚重視!)

周辺諸国とは都護府冊封など関係に強弱はあるが、唐の軍事力と文化の力で均衡を保ち、長安では国際色豊かな文化が栄えた(横のつながり… 日本も関係、なるほど!)

・でもだんだん制度が行き詰まり、節度使を置いたら逆に反乱は起こされるし、それを抑えるためにウイグルに援軍頼んだら遊牧民が力をつけるし、さんざん。最後は節度使に滅ぼされて血で血を洗う五代十国時代に(滅亡原因…あれまあ~)。

・人に対する課税、徴兵という制度も、金持ちに土地が集まって、結局資産に応じて課税する、来てくれる人を兵隊にするという現実路線に(変化…そりゃそうだ)。

・でもこの過程で貴族が没落して新興地主層が台頭、次の王朝は彼らを科挙で取り込み、皇帝親政の官僚体制(文治主義)を作る(次へのつながり!)

 

 

5 複数単元のマクロな比較と関連づけが知識を強化する

 

 中国史の重要な観点は「王朝ごとの比較」です。

 隋と唐はそれぞれ鮮卑系貴族の王朝で、農耕世界を上手に管理する方法として律令制度を、南部の貴族を懐柔し貴族を押さえるために、九品官人法に変えて科挙制度を考案します。

 しかし隋が改革や対外政策を早急にしすぎたため崩壊したので、唐はまず太宗の時に内政を整え、高宗の時に冊封体制を整えます。この辺は秦と漢の関係と比較です。

 社会が安定すると均田制が行き詰まり、人に対する課税は資産に対する課税へと変化し、貴族が没落して新興地主層が台頭して、宋では科挙を通じて政界に進出し、士大夫層を形成します。対外政策も積極策から消極策へ変化します。これは「唐宋変化」といって入試の定番です。

 このように王朝のサイクルを覚え、前後の王朝と比較することで中国史の大きな流れを理解します。中国の官吏登用制度の変遷なら、次のような感じで頭に入れます。

 

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 科挙制度も隋から清の廃止まで、王朝の特徴と絡めて比較して記憶します。

 

 参考に入試問題について言及します。同志社大学は「南アジアと東南アジアの植民地化、民族意識の芽生え、独立闘争、独立後の苦難」の範囲をほぼ毎年出題します。

 教科書でこの範囲は「インドでは…、ベトナムでは…」と並列で記述されるため「タキン党ってどこのこと?」と事項がごっちゃになり、なおかつ19世紀、20世紀の単元を中国史やヨーロッパ史の隙間にぶつ切りで習うので、「ベンガル分割令とローラット法ってどっちがどっちだっけ?」と混乱してしまい、受験生泣かせです。

 複数の単元について、横の比較(地理的な把握)がちゃんとできて、なおかつ縦の比較(地域史)も学習しているか、という受験生の学習に対する姿勢が見られています。

 同志社がこの範囲が好きなのはホーチミンが最初に作った革命団体が「ベトナム青年革命同志会」だからかもしれませんが(笑)。

 

まとめ

1 「歴史は流れ」と言うが、事実を流れで覚えるのではなく、流れがまずあって、それに基づいて事項が配列されていると考える。

2 最初は時系列で入力し、別の観点から出力することで知識を定着させる。また文章から語句、語句から文章と双方向で出力する。

3 単元の中の事項や、単元と単元のストーリーを比較しながらセットで記憶する。

 

 今回は長くなりました。最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

 次回はお薦めの参考書を紹介し、私が取り組んでいる「どういう事項が出題されやすいか」という分析をしたいと思います。