ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

新年度に向けて 卒業生の話から「縦の繋がり」について考える(その1)

 高校は学年末考査も終わり、そろそろ終業式です。この時期はクラスマッチや次年度の教材販売など年度末の行事が続きます。

 

 私の学校ではこの時期に大学に合格した卒業生が在校生の学年集会で合格体験談を話します。ただ私が2年生の担任をしていたとき、最難関大学に合格した卒業生が「3年の8月末まで部活動中心の生活をしていても合格する」と言って進路の先生が大慌てしていました。

    こうした集会はひとつ運営を間違えると「私はこんな難しい大学に入りました」を見せびらかす会になってしまいます。

 

 「縦の繋がり」は部活動でよく使われる言葉です。先輩は後輩に競技技術や部の運営などテクニカルな「やり方」だけでなく、部員としての態度や心構えなどメンタルな「あり方」も部活動のあらゆる場面で伝えます(いわゆるOJT)。

    そしてもっと単純に、後輩は「あんなかっこいい先輩になりたい」と憧れを抱いて、先輩のいいところを真似します。

 

 進路指導においてもこのように先輩を「モデル」とし、その「やり方」と「あり方」を継承することは非常に重要です。だから成功、失敗を含めた先輩の話は貴重です。

 私の知人が勤務している学校には特進クラスがあって、「縦の繋がり」と称して新入生歓迎会をしたり、一緒に学習合宿をしたり、果てはセンター試験の時に後輩が先輩にお菓子(有名なあれ)を配ったりしています。それ自身は悪いことではありませんが、それだけで終わってしまえばイベントです。

 

 先ほどの一件を受けて私が進路主任の時は、集会に参加する卒業生は大学名だけで判断せず(もちろん入学するのが難しい大学に合格した人は相当の努力をしています)、学年団と相談して「何を伝えるか」目的をはっきりさせて人選しました。

    また教科別に効果的だった学習法や心の持ち方を卒業の時に書いてもらい、「大学別学習法」の冊子を編集して在校生に配布しました。この2つは今も続いています。

    また私が卒業生の通う大学に押しかけてインタビューし、大学の様子と高校時代の苦労を進路通信にして高校のHPにあげました(今も掲載されています)。

 

    現在は大学生と在校生の座談会や、生徒が教育実習生にインタビューする取り組みが行われています。

 卒業生の合格体験談も講演方式ではなく、担任が卒業生に一対一でインタビューする形(公開面談と呼んでいます)になりました。卒業生にその様子をブログに載せていいですかと聞いたところ、快諾を頂いたので再録します。

 

 

三重大学人文学部

 

Q:3年生の5月に部活動を引退して、受験モードへの切り替えるときのコツは?

A:部活をしている時から授業や定期テストにしっかり取り組んで勉強する習慣を身につけました。習慣は急に身につきません。

 

Q:夏休みから本格的に受験勉強をはじめて、2学期からセンター試験前ぐらいが一番しんどかったそうですが、どうやって乗り切りましたか?

A:時間を決めて休憩を取ったり、志望校に合格した自分をイメージしたりしました。自習室で勉強していましたが、頑張っている友だちを見てモチベーションを維持しました。

 

Q:センター試験から国立前期試験までに行った学習の中で効果的だったのは?

A:間違いノートを作って、問題をやって間違えたところを書き出し、復習しました。

 

Q:もう少しこれをやっておけばよかった、と思うことは?

A:勉強をもう少し早くから始めればよかったです。また自分に合った学習法をもっと早く見つけておけばよかったと思います。

 

 

富山大学工学部

 

Q:2年生の時に気をつけたことは?

A:部活をやっていると帰ってきてからもしんどかったですが。それでも毎日勉強する時間を決めて授業の予習と復習はやりました。

 

Q:苦手科目、得意科目の取り組み方は?

A:苦手な英語は予習をしてわからないところをチェックしました。得意な数学は復習をメインにしました。授業中にわからなかったことは自分でやり直したり、先生に聞くなどして納得するまでやりました。納得したところで自分の力になります。

 

Q:薬学部から志望変更、葛藤はあった?

A:薬に興味があり、研究者になりたかったので、最初は創薬科学を志望していました。しかし模試の判定が思わしくなく、そんなときに担任から「その研究をしたいなら別の方法がある」とアドバイスをいただきました。それで自分で色々と調べ、オープンキャンパスに参加して現在の進学先(生命工学)を見つけました。

 

Q:センター後のデータリサーチでは判定は厳しかった。それでもこの大学に挑戦したのは?

A:この大学なら自分の学びたいことができる。可能性があるなら挑戦したかったです。より安全な大学を受験して、後から「受けていたら合格したかも」とくよくよしたくなかったです。

 

Q:しんどいときにあなたを支えたものは?

A:家族です。毎朝学校へ送ってもらったり、お弁当を作ってもらったりしました。感謝しています。

 

Q:後輩へのアドバイスをお願いします。

A:部活をやっていて不安や苦しいことがあっても、それを乗り越えられたら受験勉強も乗り越えられます。何でも全力で頑張ります。

 

 

奈良女子大学 文学部

 

Q:部活の引退時期がコンクールの関係で8月。部活と学業をどう両立した?

A:授業を大切にしました。2年の途中までは勉強は丸暗記が中心で、数学は例題、現代文はワークの中から試験で出そうなことを丸暗記していました。定期テストでは点が取れましたが、2年11月の模試で全く書けずショックだった。そこで普段から自分で考えて書けるかに注意して勉強しました。国・数・英は積み重ねが大事です。

 

Q:理科基礎はどうやって勉強した?

A:過去問が少なかったので。模試の過去問をできる限り集めて12月の一ヶ月間に何周もしました。分からなかったことはノートにつけて、暇なときに何度も見返しました。

 

Q:後輩に対してアドバイスをお願いします。

A:この部活がしたくて私はこの学校に来ました。でも3年になり他の部活はどんどん終わっていくのに私の部活は終わらないので焦りました。そこで自分にあった学習のサイクルを作りました。私は学校が終わった後は個別指導中心の塾へ行き、その宿題や学校の予習・復習をこなしました。塾で自分のできていないところをチェックしてもらい、苦手に集中して取り組みました。

   また学校の先生が「一日は24時間、8時間寝て、8時間遊んでも8時間勉強できる」と言っているのを聞いて、今以上に勉強する時間があると思いました。3年の夏になると焦ってくるから、今のうちに勉強をやっておきましょう。私は3年8月の全統マーク模試で成績が落ちなかったから、今の自分があると思います。(つづく)。