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ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

卒業式 4月から学生になる人に贈る言葉

 今日は高校の卒業式でした。

 

    最近は最後のLHRで生徒が担任に花束やクラス全員のメッセージを記した色紙を渡したり、担任が一年間撮りためた写真をスライドショーにして上映したり、DVDに焼いて渡したりと「メモリアル演出」が増えました。私の学校でも90分以上も最後のLHRが続いたクラスがありました。

 私はこうした演出が苦手なので、生徒ひとりひとりに一年間の活躍を簡単にコメントしつつ卒業証書を渡して、卒業するに当たって話をして終わります。

 

 今年は3年生の副担任だったので、最後のLHRに呼ばれて話をしました。今日卒業する生徒に向けて話した「はなむけ」の言葉を加筆して再録したいと思います。

 

 

 私がかつて担任した女子生徒のことです。彼女は1,2年生では不振者補習の常連で、見た目も派手(ビ◯ギャ◯?)、3年生で初めて私のクラスになりました。

 

 4月のある日、世界史の授業の後で彼女がやってきて「先生、世界史わからない、どうしたらいいですか」と聞いてきました。2年生では別の先生に教えてもらっていたのですが、毎回赤点すれすれだったそうです。

 それでいくつかの勉強方法を伝授しました。おかげで5月の中間テストで平均点以上がとれ、俄然やる気が出てきました。その後何度も質問に来るようになり、自分で教材を探して自習するようになりました。

    大学もまず私立大学に合格し、国公立大学もチャレンジするといって前期、後期と出願しました。結果は両方とも不合格でしたが、彼女は「12月から2月にかけて今までやったことがないぐらい勉強した、不合格だったけど悔いはない」と言って私立大学へ進学しました。

 

 1年後、突然彼女から電話がかかってきました。「来年度のゼミを選ぶ時期で、人気のアメリカ文化のゼミを希望しているけれども面接選考がある、どうしたらいいですか」という相談でした。

    彼女はグランドホステス(空港の地上勤務)になりたかったのでそれに関係する話をするか、世界史のビデオ学習で印象に残った黒人差別の話をするかで迷っていました。私は、高校の授業を思い出して、なぜその話に興味を持ったのか、そこからどんな勉強をしたいのか話をするようにアドバイスしました。

 おかげでそのゼミに入ることができ、4年生の時に連絡があって希望する就職先に内定し、現在は空港で働いています。

 

 彼女から学んだことは「小さな穴を空ける」ということです。

   まず嫌いでやりたくない世界史を放棄せず、我慢して(嫌いなことを頼むのは嫌なものです)先生に相談しました。でもそれが突破口になって勉強する好循環が生まれました。

    ゼミの面接も、たぶん自分の就職に無理矢理つなげた理由を述べていたら不合格だったでしょう。高校の時に印象に残ったことを突破口に大学で勉強する目標を見つけたから、ゼミでの学習が充実し、就職につながったのだと思います。

 

 大学生になったら、いきなり大きなことをやろうとせず、小さな手がかりから自分の未来を切り開いてほしいと思います。

    また大学は資格を取って就職するためのところではありません。最近の私立大学には学生獲得のためにほとんど専門学校のようなところもあります。もちろんある種の職種では資格や専門的知識が必要ですが、学問を通じて自分の芯を鍛えるという視点を忘れないでほしいと思います。

 

 もうひとつ彼女が苦手を克服したきっかけがあります。

    クラス替えでそれまで仲良くしていた友だちは私立文系クラスに行ってしまい、何かの拍子で数学を選んでしまった彼女はひとり私の国文クラスへ来ました。

    そのとき2年生の時に私のクラスだった2人が彼女に声をかけ、その後はいつも3人で行動していました。その2人は勉強がかなりできて、国立のそうそう合格できない大学に進学しました。

 

 人間誰しも「流され」ます。「周りが勉強していないから自分もいいか」とか「みんながやっているからこれぐらい許されるかな」と、つい他人を自分の言い訳に使ってしまいます。でも逆に「いい方に流される」こともあります。

    これも私の担任した生徒ですが、彼女の大学は教育系で、同じゼミの先輩のほとんどが地域の子ども会ボランティアに参加していて、最初は誘われるまま参加していた彼女もだんだん面白くなって、次第にどっぷりはまってしまった、と言っていました。

 

 大学に行くと高校のように縛られることがない。勉強するのも自由、しないのも自由です。大学時代は色々なことを経験できる貴重な時間ですが自分で自分を律する必要があります。そんなときはいい友だちを作って「いい方に流される」こともお薦めです。

    4月からの新しい生活が実り多いものになることを期待して止みません。