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ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

「現役生は冬から伸びる」について考えるその1

 「現役生は冬から伸びる」は受験大手の某社がよく使う言葉です。

    高校では成績が思うように伸びず弱気になって第一志望をあきらめたり、国公立への出願を取りやめて私立に「流れる」生徒に対して、担任がもうひとふんばりを促すために(ひとりでも多く国公立を受験しに行くように?)この言葉を使います。

 大学受験は1点2点で合否が分かれます(東大は小数点まで見ているそうです)。気持ちを鼓舞することは必要ですが、根拠のない応援ばかりでは困ります。どのような条件が揃えば成績が伸びるのか、そのためには具体的に何をするのか、を生徒と一緒に考えたいものです。

 受験本番を前に「現役生は冬から伸びる」を検証したいと思います。

 

 某社さんの根拠は明快です。1学期に受験したマーク模試の結果と、センター試験の点数を比べると、素点で100点ぐらいは増えている、だから「現役生は冬から伸びる」です。

 また、他社の難関大学入試動向会で聞いた話ですが、神戸大学の合否追跡調査のデータによると、センターの自己採点ではボーダーラインの下だった生徒のうち逆転できたのは現役生だけ、だから「現役生はまだ伸びしろがある」です。

 

 後者のデータは興味深いですが、こうした数字を根拠に「現役生は冬から伸びる」と言われても、私はすっきりとしません。

 まず、勉強が進んでない状態で受験した模擬試験より勉強して臨んだセンターの点数の方が高いのは普通です。問題そのものの難易度も違いますし、私が教えている世界史では、模擬試験で「そこまだ授業でやってない」という到達ラグも発生します。

 また過年度生は一年間受験生をしていましたから、5月の模試で強いのは当たり前、その彼らが冬場に10点上乗せするのと、何も勉強していなかった人が勉強しはじめて10点成績が上がるのとは同じ10点でもしんどさが違います。

 「成長曲線」という言い方もあります。成績は二次関数的に上がる、つまり最初のうち(x<1)は成績が上がらないが、x>1になれば成績は爆発的に上がる、という訳です。

 確かに経験上成績が急に伸びる生徒はいますが、それが二次関数であるという根拠はなく、これも「気休め」の域を出ないような気がします。生徒にはもう少し論理的に「どうすれば伸びる」のか、説明してあげた方がいいです。

 では「伸びる」を三つのステップ、「知識が増える」「知識が活用できる」「知識から未知を推理する」に分類し、現役生が何をして、どのような状態に達すれば成績が伸びるのかを考えます。

 

 

1 知識を増やす

 

 テストで出くわす問題は

1「全く見たことない問題」

2「見たことがあるけど解けない問題」

3「見たことがあるので解ける問題」

のいずれかです。「伸びる」は3が増える状態、特に2が3になると「実力がついた」という実感がわきます。

 どの高校生も毎日勉強しています。しかし予習や復習をするときに答えを写す、先生の授業を聞いてきれいなノート作りに精を出す、塾の講義に参加してわかったような気になる、など「作業」のような勉強では知識が定着しません。

 国公立大学を志望する人は5教科7科目を勉強しますから、「やった先から忘れる」を繰り返しがちです。見たことさえ忘れることもあります。

 この曖昧な知識を「見たことがあって、その意味や解き方を知っている」知識に変えます。

 

 まず覚えるときに「忘れにくい記憶」「取り出しやすい記憶」を形成することです。具体的には五感を使う、自分の知っていることと関連づけて覚える(○○は△△と似ている/違う、ゴロ)、論理的に考える(たとえば上座部仏教の伝来は地理的に考えてスリランカミャンマー(パガン朝)→タイ(スコータイ朝)になる)です。

 次に「エビングハウス忘却曲線」の理論です。英単語を10ずつ100語覚えるならば、昨日したことを覚えているか、おさらいで100語言えるか、など少し時間をおいて復習します。忘れて、思い出してを繰り返すことで強い記憶が形成されます。

 数学ならば解法を暗記するのではなく「どうしてそうなるのか」を納得し、類題が解けるか試します。

 この時に「間違って悔しかった」とか「へーうまい方法があるものだ」など「感情」と一緒に記憶すると忘れにくくなります。

 このように丁寧な学習によって「使える」知識量を増やすことが「伸びる」の最初のステップだと思います。

 

 さて、私の学校にはよく勉強していて模擬試験の成績も順調にあがっているのに、ある時点でぴたっと止まる、あるいはストーンと落ちる生徒がいます。模擬試験ならいいですが、センター試験本番に「ストーン」が来る生徒が毎年必ずいて、本人も周囲もパニックになることになります。

 これを「踊り場」と呼ぶ人もいます。

    私が教えている世界史だと次のようなことが起こります。勉強を始めた頃は知識量が少ないので、四択の選択肢の中で迷わず知っているものを選びます。ところが勉強の量が増えてくると間違い選択肢も「正しいのでは」と思ってしまいます。

 また聞き方を変えられたり、複数の単元にまたがる問題が答えられないことがあります。「中国の税制について正しいものを選べ、1唐では□世紀に○○で徴収する△△制が…2明では…」と事項がすべての範囲からシャッフルで出題されると、知識がごっちゃになります。

 難関大学の問題は基本的に複合問題で、英文和訳なら複数の構文が重なって主語が取りにくいところが狙われます。模試も本番が近づくにつれそういう問題が増えてきて、その結果成績は頭打ちになります。

 

 これを克服するのが「知識を活用できる」です。(続く)

 

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bunbunshinrosaijki.hatenablog.com