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ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

外国籍生徒の交流会に参加する

 私の生活している地域は住民に対する外国籍の人の割合が県内1位、学校にもたくさん外国籍の児童・生徒が通っています。

 先日、外国籍の生徒たちの交流会があったので参加しました。

 

ペルー紹介の様子

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 この会は12年前に外国籍の高校生から「違う学校に行って会う機会が減った仲間と交流したい」という声が上がり、人権担当の先生の支援を得て立ち上がりました。

 外国籍の生徒が中心になって実行委員会を組織し、会を運営します。交流会には日本籍や外国籍の高校生・中学生が参加し、母国の紹介やゲームで楽しんだ後、分散会で日頃の悩みについて話し合います。

 2年前から先輩の講演が始まりました。この日は初期の参加者である柿内ディアナさんに来ていただきました。非常に考えさせられる話でしたので、本人の了解の上紹介します。

 

 

講演の内容

 

 ディアナさんは16年前、小学校6年生の時に来日しました。来日当時は全く日本語がわからない上に学校でスペイン語がわかるのは小2にひとりだけという状態でした。

 

 ディアナさんは日本とペルーの文化の違いに戸惑います。給食の和食が食べられない、お箸が使えない、ペルーでは小6の卒業時にパーティーや旅行があるのに日本にはないのでがっかりし、逆に卒業文集の意味がわからず適当なことを書いてしまいます。

 中学校で弁当にペルー料理を入れてもらったとき、その独特の臭いでからかわれます。話を聞いた保護者が中学校を訪れますが、それがきっかけで外国の料理をみんなで体験しようイベントが生まれ、現在でも続いているそうです。

 

 ディアナさんは勉強して日本語も上手になります。高校受験に挑みますが、テストとなると日本語のニュアンスや漢字が難しく、最終的には定時制に進学することになります。


 2年生の時に市役所の通訳の職を得ます。自分と同じように困っている人(特に日本語が分からないと年金、保険、税金が理解できず、日常生活に支障が出る)と関わる中で、もっとみんなの力になりたいと思うようになります。

 そこでディアナさんは大学進学を目指すのですが、彼女の置かれている状況ではかなりのハードルです。当時同じクラスで外国人はディアナさんひとり。分からないことはとにかく同級生や先生に聞きまくります。

 

 努力の甲斐あってディアナさんは合格し、大学で英語とスペイン語を学びます。卒業後は企業の通訳としてメキシコで働いた経験もあるそうです。現在は日本で仕事をしていますが、4月からはまた海外で働くそうです。

 

 

 この後会場との質問応答がありました。

 

 「日本語の勉強はどうしたのですか」という質問がありましたが、中学校の宿題が少ないので先生に「もっとください!」と直談判したそうです。家では他の人よりプラス2時間勉強し、母親からは「毎日漢字を5個覚える」というノルマがあったそうです。「間違ってもいいから使う」「本を読む」を心がけたそうです。

 

 ディアナさんは高校入試で第一志望は残念ながら不合格だったのですが、最初から「無理」とあきらめずにチャレンジしました。ディアナさんは「今を頑張れば後で楽になる」ということをこの時に学んだそうです。

  NPOで通訳のボランティアをしていたとき、救命救急講習の通訳を頼まれ、ディアナさんも一緒に講習を受けました。その後家族が急に倒れたとき、救急車がくるまで覚えたての心臓マッサージを続けて、家族は一命を取り留めたそうです。

  今、色々なことにチャレンジすることで可能性が広がる。マイナスの状態から始まってもいつかはプラスになります。「『できない』と他人から言われたことが『できた』に変わるとどれだけ快感か」とディアナさんは会場の笑いを誘っていました。

 

 

感想とまとめ

 

 入管法が改正されて日系人が労働者として来日するようになってすでに20年が経過しました。ディアナさんの頃とは違い、実行委員の高校生は日本生まれで日本語は堪能です。

 実行委員のひとりは祖父が中国人で「広島生まれのペルー人」と自己紹介していました。彼のように三つのアイデンティティをしっかり持っている人もいれば、この日参加した中学生の中には来日して日が浅く、日本語がほぼ分からない生徒もいました。保護者の日本語力を含め、ひとりひとり事情が違います。

 

 ディアナさんが前向きに生きてきたのは性格も多分にありますが(小学校の頃蹴ってきた男の子を蹴り返したそうです。後で話し合うと、男の子は「友だちになりたいのに言葉が通じないからとりあえず蹴ってみた」そうです)、彼女がしっかりヘルプを出し、周りがそれに答えたからでもあります。

 いくらチャレンジしたくても、言葉が通じない、周りが冷たいと問題を自分ひとりで抱え込んでしまいます。その結果コミュニティーの中で孤立し、育児支援生活保護など必要な保護が受けられない、それがまた「あそこの外国人さんは…」と新たな偏見の種になる可能性があります。

 

 外国籍の方に限らず、色々としんどいことを抱えている人すべてが「ヘルプ」を出しやすい環境(行政のシステムと住民の意識)を作ることは、私たちが「それは自分にも起こりうること」と思って行動できるかに懸かっています。

    分散会では日本語がわからない中学生に対し、実行委員は英語を使うなど彼がコミュニケーションしやすい方法を試行錯誤していました。ディアナさんも中学生の保護者の悩み相談に即席で応じていました。誰もがこうした配慮をできるようになれば、「チャレンジ精神」をみんなが発揮できる世の中になります。

 

    ですから私もまず職場で話しやすい雰囲気を作ります(笑)。

 

 会を運営した実行委員と人権サークルの皆さん、協力していただいたNPO法人伊賀の伝丸さん、どうもありがとうございました。

世界史の入試問題について考える(4 大阪大学2017)

 2017年の国立大学の世界史論述問題を解きながら、何に注意して授業に臨むか、どのような準備をするかについて考えます。

 

 最終回は大阪大学です。

 

*発展 3月末の駿台予備校大阪校の入試研究会で東京、京都、一橋、大阪の問題が取り上げられるので事前に解答例を作っています。予備校の解説を聞いて「今年は簡単だ」と評論家気分では受験生と相対する時に指導できません。

 関西の難関・中堅私立大学については解答例だけでなく「東南アジアの抵抗」なら「○○大学の△△年の大問□」と大問ごとに取り出せるようにしてあります。

 

追記 3/19

    駿台の研究会に行ったら参考になったので少し直しました。本番では推敲できないですね。すみません。

 

 

大阪大学 2017年

 


問1

課題 資料文が編纂された(1330年頃)当時のイタリアの政治状況について、地域差や様々な政治・宗教勢力に注意しながら 150字程度

 

メモ

北イタリア海岸 ヴェネツィアジェノヴァなど都市共和国、東方貿易で繁栄。

北イタリア内陸 フィレンツェは毛織物工業と金融業で海港都市を支える。メディチ家教皇を輩出。ミラノロンバルディア同盟の盟主として神聖ローマ皇帝と争う。

中部 教皇

南部 ナポリ王国アンジュー家シチリア王国アラゴン家が支配。カトリックビザンツイスラームの三勢力が混在する。

全般 神聖ローマ皇帝のイタリア政策に対して、教皇派、皇帝派に分かれて争う。

 

解答例 3/19  ちょっと直しました。

北部の海岸部ではヴェネツィアジェノヴァ、内陸部ではフィレンツェなどが都市共和国を形成し、特にミラノ神聖ローマ帝国から自立していた。中部には教皇領があり、南部ではアンジュー家ナポリ王国アラゴン家のシチリア王国があった。これらは神聖ローマ皇帝のイタリア政策に対して教皇派、皇帝派に分かれて争った。151字

 

ポイント

 名古屋大学に中世後期のドイツとイタリアを比較する類題あり。

 高校生だと「アンジュー家」「アラゴン家」は出てこない(関東難関私大レベル)が、それ以外は書ける問題。

 

 

問2

課題 引用史料で述べられているシステム(元の通貨システム)が当時の中国経済に与えた影響について、前後の時代やユーラシア西方地域との相違点にも注意して 250字程度

 

ヒントから芋づる 

史料の内容:商人の銀を取り上げて引き替えに紙幣を渡す。中国内でどこでも使える。
システム:銀と紙幣(交鈔)

前後の時代:銅銭。宋代の交子・会子。手形から発達した紙幣。

ユーラシア西方地域:現物経済が中心。十字軍以降貨幣経済が進展。金貨と銀貨

中国経済に与えた影響:

ユーラシア循環交易圏で銀が基本通貨に。

使わなくなった銅銭は日本などに輸出。

紙幣を乱発しすぎて物価が高騰し、元が滅亡する一因になる。

明は貿易を縮小する。銀の使用を一時禁止。

 

解答例  3/19  少し直しました。

ヨーロッパでは金銀が通貨として用いられていたが、中国では宋代より銅銭に加えて交子・会子など紙幣が使われ、元代には紙幣の交鈔と銀が主に使われた。モンゴルのユーラシア支配の時代には草原の道と海の道の循環ルートが形成され、銀を通貨とする東西貿易が繁栄した。余った銅銭は日本など海外に輸出されて貨幣経済の発達を促した。しかし元が交鈔を濫発したことで物価が騰貴するなど経済が混乱し、元の滅亡の一因となった。明は当初紙幣を発行し銀の使用を禁止するなど商業を抑制したが16世紀には銀が流入して決済の中心となった。251字

 

ポイント

 大阪大学の「グローバルヒストリー」研究とも関係が深い杉山正明先生が専門のモンゴルからの出題(2016年に新しい本が上程されている。出版記念?)。

 

*発展:『世界史の窓』は、交鈔は小額紙幣(銅銭の絵が描いてある)、高額紙幣の役目を果たしたのは「塩引」という塩(国家の専売)の引換券、と杉山先生の本を引用している(いつもお世話になります)。

 

 紙幣はすでに宋代で使われていたこと、当時のヨーロッパに紙幣がない(紙幣は巨大権力が存在する証)、金と銀の二本立てだったことが比較ポイント。

 「影響」=間接的変化は、東西交易の活発化と交鈔の乱発による経済の混乱を書きたい。

 明の紙幣「宝鈔」は『世界史用語集』では頻度1。明は宝鈔と銅銭(洪武通宝や永楽通宝)を発行し、金銀の使用を禁止していた(宝鈔も銀との交換禁止)が、民間では銀が流通して宝鈔の価値は下落した(『詳説世界史研究』参照)。

 高校生には「ドボン」だが、明が海禁と農村への統制を強めたことは有名なので、「元の重商主義の行き過ぎを反省?」と推理して言葉をひねり出したい。

    高校生は文章的に収まりが悪いが「16世紀に銀が流入した」と飛んだ方がいいかも。

 

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

 

 

 

 

課題 ロシア革命(十一月革命)とその結果成立したソ連によって、何が達成され、何が課題として残されたのか。300字程度

ヒント 生産手段を公有化した最初の社会主義革命

語句 民族自決 五カ年計画 冷戦 人工衛星

 

マトリックス

 

政治

経済

外交

十一月革命

ボリシェヴィキメンシェヴィキや社会革命党を打倒

土地に関する布告 農民に土地を分配

平和に関する布告 即時停戦 民族自決

ソ連成立

ボリシェヴィキ一党独裁

戦時共産主義→新経済政策

周辺地域の独立運動は失敗

1920年

スターリンの一国社会主義

第一次五カ年計画 重工業 農業の集団化

コミンテルン

世界恐慌

スターリンの個人崇拝 粛正

第二次五カ年計画 工業化すすむ

 

WW2

独ソ不可侵条約独ソ戦

独ソ戦で餓死者続出

東欧の解放

冷戦

社会主義陣営

核開発 ミサイル技術 人工衛星

対立→雪解け→対立→デタントアフガニスタン侵攻

冷戦終わり

政治の停滞→ペレストロイカ→複数政党制 大統領制

経済の停滞

新思考外交→東欧革命

ソ連解体

クーデター失敗 共産党解散

市場経済の混乱

バルト三国独立

チェチェン紛争

 

解答例 3/19  民族自決のところのニュアンスを変えました。

ボリシェヴィキは十一月革命後に地主の土地の没収と農民への分配を約束し、民族自決を原則とする共和国からなるソヴィエト連邦を結成した。1920年代からは2度の五カ年計画によって国営企業化と重工業化を達成する一方、農業の集団化を実行した。戦後は社会主義陣営を形成し、核開発と人工衛星に代表されるミサイル技術でアメリカと対峙し、冷戦体制の一翼を担った。計画経済は資本主義の行き過ぎの是正、民族自決は抵抗運動のモデルなどソ連社会主義は各地で資本主義の代替案となったが、実際には市民的権利の抑圧や計画経済の非効率、領内の少数民族の抑圧など矛盾が多く、前者は社会主義諸国の課題、後者は旧ソ連地域の民族問題として今なお存在し、核軍縮も未解決である。309字

 

ポイント

 「ロシア革命100周年、ソ連社会主義の総括をしなさい」という問題。ソ連崩壊を目の当たりにしたアラフィフの私なら600字でもokだが(笑)、高校生には厳しい。

 センター試験の復習でロシア革命スターリン、冷戦、ペレストロイカチェチェン紛争の抜け漏れをつぶした人は、「なぜペレストロイカなのか」で習う「ソ連社会主義の問題点」を軸にパーツをつなぎ合わせれば文章になる。その年のセンター試験や私大入試の復習は大事!(手前味噌)

 

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

 

 解答例は先にソ連の歴史をおさらいし、評価できる部分、課題となる部分を書いた。この方が書きやすい。

 

*発展:昔ロシア近現代史の石井規衛先生が研究会で「ソ連は重工業時代のユートピア」と説明していた。計画経済は鉄鋼や石炭をがんがん作ってじゃんじゃん消費する(ソ連のロケットはアメリカと比べるとかなりでかい!)時代には「みんな平等」という思いを抱かせることが可能でも(しかし農村の収奪が背景にある!)、省資源情報化時代にはフィットしない、といえる。

 

*発展:ソ連社会主義はなぜ国家主義で人民の自由を制限するのかというと、ロシア革命第一次世界大戦=総力戦体制の「申し子」だから、と考えればつじつまが合う。ジャコバン独裁も革命戦争勝利が名目だった。民主主義を守るために人々の自由が抑圧されるという逆説。

 

*発展:マルクスの言葉に「宗教はアヘン」とあるが、ソ連ユーゴスラヴィアは領内の様々な文化集団に対して「宗教や民族にこだわるのは時代遅れ。社会主義のもとでユートピアを実現する」と問題に蓋をした。しかし社会主義政権が崩壊すると人々は再び拠り所を民族や宗教に求めだした、と捉える。

 

 

Ⅲ(外国語学部以外)


課題 ガンダーラ地域で制作されたと考えられる仏像に英雄ヘラクレスが描かれている。このような像が造られた歴史的背景 200字

条件 文化交流と仏教の発展という二つの側面に注目しながら

 

条件から芋づる

文化交流:アレクサンドロス大王の東方遠征に付いてきたギリシア人が各地に植民する。前3世紀にバクトリアが自立する。ヘレニズムの彫刻技法やギリシアの宗教が伝わる。

仏教アショーカ王の時代の仏教は個人が修行して解脱する仏教クシャーナ朝の時代に大衆の救済を目指す大乗仏教が成立、菩薩信仰が生まれ、その像を造る必要が出てきた。

 

解答例

アレクサンドロス大王の東方遠征によって中央アジアギリシア人が植民し、後にバクトリアが自立してヘレニズム文化を伝えた。一方インド発祥の仏教は最初個人が修行によって解脱することを目指したが、中央アジアから北インドを支配したクシャーナ朝の時代に大衆の救済を目指す大乗仏教がおこった。この仏教は大衆を導く菩薩に救いを求めたので、信仰の対象として仏像が必要となり、ヘレニズム文化と結びついてガンダーラ美術が生まれた。204字

 

ポイント

サービス問題。解答例は固有名詞を減らして地理的な広がりを意識した。

 

 

Ⅲ(外国語学部)

 

問1 イ.タスマン ウ.クック

 

問2 

課題 アメリカ合衆国が太平洋を囲む地域に対してどのような政治的な発言権を有するようになったか。1860年代~90年代、1940年代後半~80年代のそれぞれの過程について、その時期に起きた戦争と関連させながら それぞれ80字程度

 

条件から芋づる

1860~90 ナポレオン3世のメキシコ出兵モンロー主義を適用 アメリカ=スペイン戦争でグァム、フィリピンを獲得 門戸開放宣言

→自国の利益を自由主義自由貿易で正当化

 

1940後半~80 日本の占領政策 太平洋諸島の信託統治 朝鮮戦争 SEATOやANZUS ベトナム戦争 中国との

→世界の自由主義を守ることが自国の利益

 

解答例

ナポレオン3世のメキシコ出兵に抗議しヨーロッパとの相互不干渉を主張した。また米西戦争に勝利して太平洋に進出し、列強の中国分割に対して門戸開放や主権尊重を唱えた。82字

国連常任理事国として太平洋諸島を信託統治朝鮮戦争に出兵した。またベトナム戦争に介入するなど共産主義からの自由主義の防衛を唱えたが、戦後は中国との関係改善に努めた。85字

 

ポイント

 アメリカの覇権主義に関するタイムリーな話題。

 前半はモンロー主義とアメリカ流帝国主義(アメリカファースト)、後半は国連反共主義自由主義の守護者)と比較の視点で書く。

 韓国はAPEC加盟国。「日本の占領軍の中心として民主化を指導し」も「政治的発言」(自由主義を広める)に当たるので私的にはOK

 SEATOとAUZUSを入れたいが「80年代」まで書く必要があるので、米中国交回復が79年なので「関係改善」と「逃げた」(笑)。高校生はANZUSの方が書きやすい。


*発展 1848年のアメリカ=メキシコ戦争アメリカ合衆国の領土が太平洋岸に達するが、当時はパナマ運河がない。50年代のペリー艦隊の世界周航は「合衆国は太平洋国家」というデモンストレーションともとれる。

 

 

問3

課題 ヨーロッパ連合に見られる協力の特徴 50字

条件 アジア太平洋経済協力との違い

メモ

EUの特徴 市場統合(域内のヒト・モノの移動の自由)、通貨統合(ユーロ)、政治統合(欧州議会

APECの特徴 多角的自由貿易体制を推進・強化、貿易・投資の自由化・円滑化、経済・技術協力を推進

 

解答例

加盟国間の商品や労働力の自由移動や共通通貨を設定するなど経済的統合度が強く、欧州議会で政治統合も進めている。55字

 

ポイント

サービス問題。EUの特徴を書く。

 

 

まとめ

 

 難関大学の世界史の論述問題を指導するには、普段から大学の先生が高校の先生向けに書いた入門書を読んで、「新しい歴史のとらえ方」をアップデートしておく必要があります。

 そうした「アップデート」は必ず現在の課題とリンクしています。歴史学は決して「象牙の塔」ではなく、文部科学省の「競争的予算配分」にせき立てられなくても、「今起きている問題を歴史に問う」が研究の動機です。

 世界史選択生はそうした「知の最前線」にいます。ぜひ世界史を楽しんで欲しいと思います。だから抽象的な話をしても寝ないで聞いてください(本音)。

特別展 古代ギリシャ -時空を超えた旅-@神戸市博物館2016-17

    先日神戸市立博物館で開催されている「古代ギリシャ展」に行ってきました。世界史好きな人にオススメなので紹介します。

 

公式サイト

www.greece2016-17.jp

 

*チラシを見ると展示物に©マークがついているので、チラシのアップは遠慮します。実物はHP及び展覧会で見てください。

 

 

館内の写真撮影許可ポイント 雄牛のリュトンの看板あり

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神戸市立博物館 表玄関

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 最初のセクションはクレタ文明以前の新石器時代、初期青銅器時代の展示です。

 

 目を引くのはスペドス型女性像です(HPの作品紹介第1章)。よくある豊満体型ではなく八頭身です(○々緒さん系の土偶?)。顔は「のっぺらぼう」ですが、元々は目や口や髪の毛が描かれていました。この方が色々とイマジネーションを掻き立てられます。

 出土したキュクラデス諸島はアナトリア(現トルコ共和国)からギリシアにかけての飛び石のような島々です。古代は海の方が移動に適しているので、「文明の伝播は島づたい」というのはアジアやポリネシアと同じです。

 

 絵で描くとこんな感じ めっちゃ適当(笑)

 

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 次は世界史の教科書でおなじみクレタ(ミノス)とミケーネ文明の展示です(同第2、3章)。

 

 資料集に載っているタコが描かれた壺などが展示されましたが、牛頭形の「リュトン」(お酒を注ぐときに壺にかぶせるカバー)は入口のポスターにもなっていて(左側に映り込んでいる)、展覧会の目玉のようです。

 クレタ文明というとミノタウロスの伝説に見られるように牛が有名です。神への供物として牛を犠牲にすることがありますが、そう毎回牛を解体するわけにはいかないから、これを酒の容器にかぶせて代わりにしたのだと思われます。

 

*発展 ギリシアの考古学に詳しい教授がいる名古屋大学の2017年の論述は「地中海世界におけるキリスト教以前の宗教について」で、リード文が動物を犠牲にする儀式の話でした。しかし高校生だとせいぜいエジプトとギリシャ多神教しか書けないのでは…。


 ミケーネ文明になると金や装飾品、儀礼用の武器など権威を見せつけるグッズが増えます。また線文字Bの実物が展示されていました。宮殿で作業をした人に日当としてイチジクと小麦を配った記録や、生け贄にした雄牛のリストでした。教科書がいうオリエントの影響を受けた「貢納王政」の実例です。

 

 

 次はポリス成立期の展示でした(同第4章)。いわゆる「アルカイックスマイル」はこの時代の後期の彫刻です。最初は陶器の壺の絵柄に幾何学模様(線だったりピクトさんみたいな人)が描かれますが、後半になると神や人々の活動の様子が壺に描かれたり、大理石の彫刻として作られるようになります。

 

 少女が走っている像がありました。スパルタでは「リュクルゴスの制」の下、子どもは男女問わず小さいときに親元から離れて訓練を受けますが、「ヘライア競技会」は女子のスポーツ大会で、像はその様子を描いたものです。丈夫な子ども=次世代のスパルタ戦士を産むためには身体を鍛えろ、ということでしょう。

 またセイレーンの像が多くありました。ホメロスの詩にも出てくる、海の航路上の岩礁から美しい歌声で船人を惑わし、遭難させる怪物です(某外資系コーヒーチェーンのあの人)。ギリシャ人が地中海や黒海に進出し、交易をしたり植民市を建設した時期に重なります。

 展覧会のハイライトは大理石で作られた男性像です。入り口のポスターにもありました(右側に映り込んでいる)。2017年度センター試験、国語の小説に登場する男の子なら、指さしして「○×○×!」と言いそうです(下ネタごめんなさい)。

 

 

 次は民主政時代の展示でした(同第5、6章)ギリシャで人々が最も躍動していた時代です。陶器の壺に描かれる神々や人々がダイナミックな表現になります。

 

 教科書に載っている「テミストクレス」と書かれた陶片(オストラコン)がありました! 世界史教員としては結構感動です。また民衆裁判員を抽選する機械(クレロテリオン)の一部がありました。裁判の当日に石製の身分証(古代にIDカードですか!)を穴に差し込み、ガチャガチャやって裁判員を決めるそうです。

 

 

こんな感じ 「テミストクレス」と読めます

 

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 さらに亡骸を清める香油を入れる壺には戦士の絵が描かれるなど、市民皆兵のポリスが戦死者の追悼を重視していた様子も垣間見ることができます。

 

*発展 高橋哲哉さんの『靖国問題』(ちくま新書)は賛否両論ありますが、彼が整理した「犠牲のシステム」と「国家による戦死者の追悼」は世界史を語る上で避けられない論点です。


 他にも病気治癒を祈願して奉納された乳房(小説の男の子なら(以下略))や足など「患部のレリーフ」、オリンピックの競技者を描いた記念の壺、競技者が身体に塗った香油をはがすための垢擦り棒(スキー板の「リムーバー」!)など、当時の人々も私たちも生活の様子や考えは基本的に変わらないのだとしみじみしました。

 


 最後はヘレニズムとローマ時代の遺物で、マケドニア人やローマ人がギリシャ好きだったことがわかります(同第7、8章)。

 

 しかしキリスト教が広がり、392年にキリスト教以外の信仰が禁止されると(テストに出ます! みくにの信仰)、ギリシャの文化も「異教」扱いになり、古代オリンピアの祭典は禁止(これも名古屋大学の過去問にあり)、彫刻の額に十字が刻まれたり、使わなくなった彫刻は建材の一部などにされたそうです。

 

 世界史好きな人には教科書の「あれだ!」が満載の展覧会です。音声解説が市村正親というのもいいところついています(笑)。

 

 神戸での会期は4月2日(日)までです。まだの人はお早めに。

「歴史総合」「地理総合」に向けての研究を参観する

 新学習指導要領で「歴史総合」、「地理総合」が導入されます。その概要も徐々に明らかになってきました。

 

教育課程部会 社会・地理歴史・公民ワーキンググループ(第14回) 配付資料:文部科学省

 

 資料8-1によると「歴史総合」は「近代化」(産業革命帝国主義)、「大衆化」(二つの世界大戦)「グローバル化(冷戦~21世紀)という3つの柱で、地域と時系列の二面から比較し因果関係を考えるのが狙いです。今まで世界史Bの「付録」扱いの主題学習が「メインディッシュ」になったといえます。

 しかし「近代化」や「帝国主義」について高校1年生が理解する、しかもアクティブラーニングの方法を用いてというのは、なかなかハードルが高そうです。

 現在いくつかの学校がこれら科目の研究開発を行っています。

 そこで11月に文部科学省研究開発学校として「地理基礎」「歴史基礎」の研究を行っている神戸大学附属中等教育学校(神戸市東灘区)の研究発表会に参加しました。

www.edu.kobe-u.ac.jp

 

 

*7月31日の別の研究会で副校長の勝山先生に「研究開発の様子をブログに載せていいですか」と伺ったところ許可を頂きましたので、その様子を伝えます(写真はプライバシーに配慮しました)。

 

 この日は参観者が多く、研究授業は体育館のアリーナで行われました。

 

 最初は4年生=高校1年生の「地理基礎」を参観しました。「持続可能な世界の構築」の「現地化の視点とグローバル化」という学習内容でした。

 生徒はここまで南インドとサブサハラの自然環境等について学んでいて、この日の前半は「現地で使える商品を開発」を生徒が考え、ポスターにしたものを参観者にプレゼンしました。

 

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 南アジアやサブサハラは未舗装でぬかるんだ道が多く、車が通行しづらい(車を押すことを仕事にしている人もいるそうです)ので、タイヤの中に液体窒素を充填してぬかるみを瞬時に凍らせて走る工夫とか、ソーラー発電を利用した携帯電話や電動四輪車など、なかなか斬新なアイデアが紹介されました。

 その後、生徒は参観者の指摘を受けて「自分たちのプランに何が足りないのか」をグループで議論しました。

    確かに上述の工夫などは購入のコストやメンテナンスが現地の人には負担です。「現地化」とは現地の人のニーズなど現地の目線で考えなければいけない、というまとめでした。

 

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 授業の狙いは、「現地化」の意味を知識として得るというより「気づく」に重きが置かれていたように思います。担当の先生も「生徒にはしんどかった」といっていました。

    確かに生徒からすれば、色々知恵を絞って立派なポスターを作った上で、「君たちの発想には問題がある!」と「ちゃぶ台返し」される訳です(常に前提を疑う文学部出身の私にはすっと入ってきますが)。

 とはいえ議論の様子を聞いていると、生徒からは「もっと知りたい、考えたい」という素直な姿勢がひしひしと伝わってきて、試練に耐えるスポ根アニメ(笑)の主人公のような「柔軟な強さ」を感じました。

 

 次に4年生の「歴史基礎」を参観しました。「アジアの近代化と帝国主義」という単元で、ここまで学習してきたことのまとめとして、19世紀末から20世紀初頭の東アジアの近代化と帝国主義について、小学生向けの教科書を作るという活動でした。

 生徒たちはこれまでのワークシートや宿題の「イメージ図」(イラスト、地図、コラム)を元に何を、どうまとめるか、議論しながら模造紙に文章を書いていきました。

 

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 しかし学習してきた内容をさらに平易な言葉に置き換えるのは(しかも時間と字数の制限あり)大人でも難しい作業です。私が見た班は真面目な生徒たちで、勉強したことをなるべく詰め込もうとして苦労していました。

 とはいえ冊封朝貢体制、日本、清朝、朝鮮王朝の「近代化」の明と暗など、教科書を読んで先生の話を聞いただけでは容易に理解できない内容を大まかに把握していて、それを前提に班員で議論しているので感心しました。 

 

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*後の研究協議で「帝国主義という概念に対する批判的考察は?」という高度な質問が飛んでいましたが、もう少し学習が進めば帝国主義を「独占資本の世界進出」以外のアプローチ(例えばナショナリズムと国民統合)で捉える必要が出てくるので、きっとこの生徒たちなら気がつくと思います。

 

 研究協議の時に勝山先生が、この研究開発の核となる「21世紀型能力」と「歴史的思考力」のあり方について説明されていました。

 現状の歴史教育は「コンテンツ重視」から脱却できない、「コンピテンシー」つまりどういう能力や学力を伸ばすのか、を議論する必要があると指摘されていました。

 しかし「21世紀型能力」という汎用的能力(基礎力、思考力、実践力)に歴史教育が従属するのではなく、生徒が「歴史的な見方・考え方」「歴史的思考力」を身につけることが汎用性能力の育成につながる、と勝山先生は力説されていました。

 

 世界史は必ずヨコ(地域)タテ(時系列)の比較と因果関係で物事を解釈します。そして「解釈」するときには必ず「私の立ち位置」、今私はどこにいて、どのような問題に直面しているのかなど自分の問題に引きつけて「問い」を立てます。

 たとえば最近の「主権者教育」がうたう「公平・中立」は、「Aさんは…」「Bさんは…」と意見を羅列するだけになりがちです。

   そうではなくて各意見を時間軸の中に位置づけたり、似た事例と比較することを通じて、主張の根拠や背後にある意図を明らかにし、批判的に考察することが主権者に必要です。そのために歴史的思考力は欠かせません。

 

 また勝山先生はアクティブラーニングが「体を動かすこと」=隣の人と話したり、みんなの前で発表すること、ではなく「脳を活性化すること」と断言していました。 

 今回の研究発表を参観して、近現代の日本史でなじみのある範囲を突破口に「近代化」や「グローバル化」について問いを立てて考えるというのは、神戸大学附属中等教育学校ほどではないにしろ多少は脳を活性化する授業ができるかも、と思うことができた一日でした。

 

 授業および準備にあたられた先生方、大勢のギャラリーの中で物怖じせず議論を戦わせていた生徒のみなさん、どうもありがとうございました。

世界史の入試問題について考える(3 一橋大学2017)

2017年入試の世界史の問題について考えます。第3回は一橋大学です。

 

過去の出題についてはこちら

 

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

 

解答例作成の方針と問題の入試方法はこちら

 

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

 

一橋大学 2017年


課題 引用文が述べる現象(貨幣の量が増えると物価が上がる)が、スペインの盛衰と16~17世紀のヨーロッパ経済について与えた影響について 400字

 

マトリックス

 

スペイン

ヨーロッパ経済

16世紀

ポトシ銀山の開発 銀の流入

穀物価格の上昇 物価の騰貴

 

スペインの覇権

封建領主の没落

 

カトリック政策やオスマン帝国との戦いで軍事費増大。

国内貴族を保護して銀は国内産業育成に使われない

商業の中心が大西洋岸に 北イタリア諸都市の衰退

 

オランダ独立戦争

イギリスの私掠船がスペインの銀船隊を襲う 無敵艦隊の敗北

アントウェルペンに銀が集中 毛織物 バルト海交易

17世紀

衰退

オランダが商業の中心に アムステルダム 中継貿易

 

 

英仏の重商主義 毛織物工業を重視

 

解答例

3/6  イギリスと新大陸の銀の関係を追加しました

3/24 「17世紀の危機」について追加しました

16世紀にスペインがポトシ銀山を開発すると新大陸の銀がヨーロッパに流入した。人口増加による穀物価格の上昇もあってヨーロッパでは銀の価格が下落し物価が高騰する価格革命が発生した。このため西欧では封建地代に頼る領主が没落して市民層が台頭し、貿易の中心が大西洋に移動して地中海の貿易都市が衰退した。東欧では輸出用の穀物の生産のために農奴制が強化された。しかしスペインが得た銀はカトリック政策に基づく対外戦争に費やされ、国内産業にも投資されず、ネーデルラントアントウェルペンに銀が集まった。スペインはこの地を圧迫したが抵抗運動が発生しオランダが独立した。またイギリスに銀船隊が襲撃され無敵艦隊が敗北して大西洋の制海権も失い衰退した。17世紀に銀の流入が減って物価が下落し経済が停滞する中でオランダが世界商業の中心となり、イギリスは海賊行為で得た銀で毛織物業を奨励し、重商主義と西欧と東欧の国際分業が確立した。399字

 

 

学習のポイント

 ここ何年かの教養主義から打って変わって、今年は経済系の最高峰らしい世界システム論に関する出題。当ブログの「グローバル化」で一部紹介(予想したのではないので「ズバリ的中」ではないですが)。

 定番部分については「こんなの出ない」とか言わずにちゃんと一通り演習する。慶応の経済学部や商学部の問題をする。

 

 

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

 

 価格革命がスペインの盛衰と16~17世紀ヨーロッパの経済への影響について答える。

 スペインの盛衰については、新大陸から銀が流入→それを元手に対外戦争(カトリックの保護が大義名分)→ヨーロッパの覇権を握る→銀が国内産業育成に使われず、アントウェルペンに流出→オランダ独立戦争→イギリスが私掠船でスペイン船を襲う→無敵艦隊敗北→衰退というストーリーを書く。

 16~17世紀のヨーロッパ経済については、16世紀は価格革命の影響(領主の没落、西欧は工業化、東欧は農場領主制)、17世紀はオランダ、イギリス、フランスの台頭を説明する。スペインの重金主義、オランダの中継貿易、イギリス、フランスの貿易差額主義(毛織物工業の奨励)も比較したい。

 特にイギリスの重商主義はスペインの銀船隊を襲って獲得した「海賊マネー」が元手。ラテンアメリカガイアナスリナムフランス領ギアナが並ぶのは、英蘭仏の海賊行為の名残。

 

追記 3/24

 17世紀は経済の不振、人口増加の停止、物価の下落など「17世紀の危機」と呼ばれる状態になるが、成長に限界に来たこと、気候の変動に加えて新大陸からの銀が入ってこなくなったことも一因とされる(オランダが例外的に繁栄したのはアジア内貿易で日本の銀が手に入ったから)。

 東京書籍と帝国書院の教科書は経済史や「世紀の概観」に強いので先生に頼んで購入し、論述用の教材にすること。

 

 なおちくま新書の『銀の世界史』と『世界史を作った海賊』は「私掠船」などスペインとイギリスの対立について詳しい。最難関大学を受験するなら勉強の片手間に関係する新書ぐらい読んでおくこと。

 

 

問1 トルデシリャス条約

問2

課題 19世紀の奴隷解放の歴史のなかでハイチとアメリカ合衆国はそれぞれ他とどのような異なった特徴を持っているか。100字

 

解答例

ハイチではプランテーションの黒人奴隷が蜂起し、1804年にフランスから独立して黒人共和国となり奴隷制が廃止された。アメリカ合衆国では奴隷制をめぐって南北戦争が勃発し、北部が勝利して奴隷制憲法で禁止された。100字

 

ポイント

 ハイチは奴隷の蜂起から共和国成立、アメリカ合衆国南北戦争の結果であることを示す。字数が少ないので固有名詞は避ける。

 

問3

課題 ラテンアメリカ独立運動の契機、担い手、独立後の経済政策 275字

 

メモ

契機 アメリカ独立革命、ナポレオンのスペイン征服 ウィーン会議後の反動

担い手 中心はクリオーリョ。革命には他の階層も動員

独立後 イギリスに経済的従属 クリオーリョの地主制は解消されず。

ブラジル ポルトガル王子を皇帝に迎え平和的に独立。


解答例

スペインがナポレオンに征服され植民地支配が緩んだことやイギリスの海上封鎖を契機にラテンアメリカ生まれの白人であるクリオーリョが本国から自立しはじめた。ウィーン会議後スペインの支配が再び強まると、彼らはメスティーソなど従属階層を巻き込んで独立戦争を本格化させた。米英の支持を得て独立は達成されたが、クリオーリョが政治を独占しその大土地経営は維持され、一次産品の輸出と工業製品の輸入でイギリスに経済的に従属した。ブラジルではナポレオン戦争中にポルトガル王室が避難したが、周辺地域で独立運動が発生すると王族が皇帝となりブラジル帝国が平和的に独立した。272字

 

ポイント

 契機=直接の原因はナポレオン戦争について書く(いわゆる「大西洋革命」は背景=間接的な原因)。経済的な部分はイギリスとの関係を書く。

 ブラジルの部分は高校生には難しい。ちなみにポルトガル三十年戦争中にスペインから自立し、その後はイギリスのジュニアパートナーと化す(リカードの比較生産費説はイギリスとポルトガルが例)。大陸封鎖令の時代、ポルトガルがヨーロッパの穀物を闇で輸出する基地だった。難関私立でおなじみ「アシエント」も、奴隷貿易本体に深く関わっているのはポルトガル

 

 

課題 ザイトンとはどこか。その都市を取り巻く11~13世紀の国際関係 400字

 

マトリックス

 

泉州の様子

取り巻く国際関係

11

市舶司が置かれる。ジャンク船で東南アジアへ

北宋遊牧民の圧迫。朝貢貿易は廃れ私貿易が中心。

12

南宋時代の最大の貿易港

南宋が江南を支配。金と対峙。

13

ユーラシア循環経済で海の道と草原の道がつながる マルコ=ポーロが訪れたとされる

モンゴルの平和

周辺諸国に出兵。朝貢を促す。

 

解答例

泉州。11世紀に北宋は周辺の遊牧民の圧迫を受けて領土を縮小し、北では契丹と兄弟の礼を結び、西では西夏と君臣関係を結んだ。このため唐代の朝貢貿易は廃れ私貿易が主流になり、またチョーラ朝が宋に使節を送るなど海の道での交流も活発化した。泉州には市舶司が置かれてイスラーム商人が訪れ、中国商人はジャンク船を使って陶磁器や銅銭を輸出した。12世紀に北宋は金に首都開封を占領されたので杭州に逃れ南宋を維持した。南宋は金と和議を結び淮河を境とし南宋が金に臣下の礼を取った。南宋の拠点が江南に移ったことで泉州は最大の海港都市となった。13世紀にはモンゴル帝国西夏や金を征服し、南宋も元に滅ぼされた。また元は日本や東南アジアに出兵して各国に朝貢を促した。このモンゴル帝国の征服によって草原の道と海の道をつなぐユーラシア循環ルートが生まれ、東西交流が盛んになり、泉州はマルコ=ポーロが訪れるなど東西の結節点として繁栄した。398字

 

ポイント

 マルコ=ポーロの『世界の記述』ではザイトンが泉州、キンザイが杭州(臨安からキンザイ、と覚える)。

 

*正確には臨時の宮廷(行在 アンザイ)

 

 高校生だと400字が厳しい問題。教科書の宋、元で泉州の記述がある部分を「国際関係」と「交易」の面からピックアップする。

 北宋冊封体制が崩れて私貿易、南宋は江南の政権、元の征服活動は朝貢を促すことが目的であったことに気がつけば、それぞれの時代と泉州との関わりが見えてくる。日本もいわゆる「元寇」後は日元貿易を行っている。

 なお元代の「ユーラシア循環経済」は2015年の東京大学および大阪大学で何回か出題されている。ブログでも紹介済。

 

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

 

 またセンター試験で「チョーラ朝」が出た時にちゃんと復習してあれば宋代の南アジア、東南アジアとの関係が書ける。帝国書院や東京書籍の教科書だと「三仏斉」とか出てくるが、固有名詞が思い出せなくても話は通じる。

 

4 私大一般、国立二次の「削り問題」攻略のための復習ポイント 参照

 

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まとめ

 今年は一橋大学「決めうち」の人より東京大学の過去問を含めてグローバル化など定番テーマを一通り対策していた人の方が有利な問題でした。

 「傾向が変わった」とも言えますが、過去に奴隷貿易グローバル化の話題は出ていますし、早稲田や慶応を併願しているなら当然準備している部分です。

 もともと一橋大学は社会科学系の最高峰であり、経済に関心のある生徒が集まるのですから、今回の話題は「ど真ん中の直球」なのかもしれません。

 ですから定番の中世史や東アジア近現代史に比べると今年は解答の方針が立てやすい問題でした。

 センター試験、併願の私立大学、国立大学二次とまんべんなく学習し、同じ難易度の大学の過去問をすることで実力を養成しましょう。

 

世界史の入試問題について考える(2 京都大学2017)

 2017年の世界史の問題を解答しながら、何が試されているのか、どのような準備をするかについて考えます。第2回は京都大学です。

 

2016年はこちら

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問題の入手方法、解答例作成の方針についてはこちら

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課題 匈奴について、中国との関係を中心にしつつ前3世紀から後4世紀初頭に至るまでの歴史 300字以内

 

マトリックス

 

中国王朝

匈奴

前3C

長城を修築 蒙恬の遠征

前3C末

前漢

冒頓単于 高祖を破る

前2C半

前漢

武帝の討伐

前1C半

前漢

匈奴が東西に分裂

後1

後漢

東匈奴が南北に分裂 南匈奴が内地に移住

後3

西晋

八王の乱で五胡が侵入

後4

西晋

南匈奴西晋を滅ぼす

 

解答例

匈奴は陰山山脈を拠点として活動していたが、前3世紀に秦の始皇帝蒙恬を送って匈奴を攻撃し、趙と燕が作った長城を修築した。前3世紀末に冒頓単于匈奴を率いて前漢の高祖を破り、和平を結んで毎年銀や絹を受けた。前2世紀半ばに武帝は衛青らを派遣して匈奴を討伐し貿易の利益を奪ったので匈奴は衰退し、前1世紀半ばに東西に分裂した。後1世紀に東匈奴が南北に分裂し、南匈奴は内地に移住した。後漢の時代になると匈奴は傭兵として用いられるようになり、3世紀末の西晋の内紛である八王の乱でも傭兵として活躍した。これ以後匈奴は五胡のひとつとして内地にたびたび侵入し、4世紀はじめに首都洛陽を占領して西晋を滅ぼした。295字

 

解説

 教科書ではばらばらに載っている匈奴について中国との関係を軸に再構成する。京都大学の定番「トピック抽出タテ整理」問題。

 難しいのは武帝の後。前1世紀東西に分裂→後1世紀東匈奴が南北に分裂、うち南匈奴が内地に移住、というところが受験生には書きづらいところ。

 蒙恬始皇帝の命で匈奴の制圧に乗り出し、オルドス地方(黄河が大きく湾曲している内側の砂漠地帯)に進出した。「蒙恬」はできれば書きたい(ⅡⅣレベル)。「オルドス」が書けるのはよっぽどの世界史マニアなので高校生は書かなくて良い。

 

*発展 名古屋大学の2014年の問題Ⅱをやってあった人はリード文と問題の内容を書けばほぼ2/3をカバーできる。ただしこれは「悪問」として有名で、『絶対に解けない受験世界史』にも収録されている。

 その原因は問4「北方ユーラシア騎馬民族と漢との関係中国と匈奴の関係の変化、紀元前2-1世紀の範囲で」。この文言だと紀元前1世紀なのか紀元後1世紀なのかはっきりせず、前か後かで解答が全く変化する! 京都大学はちゃんと「後4世紀」と書いてある。

 

 

難易度凡例

◎マスト ○書かないと差をつけられる △書くと差がつけられる

▲書けるとでかいが無理しない     ×たぶん無理

出題パターン凡例

ま:紛らわしい や:ややこしい こ:細かい知識 り:理解・推理 ぜ:有名ものの前後・左右 ゆ:由来・フルネーム て:抵抗

 

 

aり○班固  bま△総理各国事務衙門  c◎義和団事件

1り○禁書や文字の獄によって反清的と見なされた書物が取り締まられたから。

2ま○王羲之  3◎『資治通鑑』  4り○禅宗

5り○パリ講和会議で中国が主張した二十一か条要求の撤回が受け入れられなかったことに反発して北京で五・四運動が発生したから。

6◎グプタ朝  7◎郭守敬  8◎ネルチンスク条約  9◎広州

10り▲宣教師が儒教科挙など中国の文化をヨーロッパに伝え、特に啓蒙思想家に影響を与えたから。

11×三藩の乱


dぜ▲カルゲドン  eぜ△ウマル     f◎アイユーブ

gぜ▲バイバルス  hこ△ティマール

12(ア)◎エフェソス   (イ)り○ササン朝  13こ×アルメニア(共和国)

14こ○ミスル       15り○サーマーン朝  16こ▲12イマーム

17り△モンケ=ハン    18×サヌーシー教団

19(ア)◎ワッハーブ王国 (イ)ま○アブドゥルメジト1世

 

 

新三年生に向けてアドバイス

 

b 2 漢字を正確に書く練習をする。
10 教科書に書いてあるが普通読み飛ばすところ。ヴォルテールは「アダムとイブが生まれる前に中国に王朝があった」ことにショックを受けて、「これからは中国研究だ!」と言っている。

11 ドボン問題。三藩の乱か台湾の制圧か2択。

d g 16 難関私立大学の「削り」問題。

18はドボン、京大の先生で研究している方がいる模様。私も『世界史の窓』をチラ見(笑)。

19(イ) タンジマートはメジト ミドハトはハミト 有名な語呂判別もの。タンジール事件とアガディール事件、李鴻章(淮軍)と曾国藩(湘軍)、望厦条約(アメリカ)と黄埔条約(フランス)、ギリシア悲劇詩人、ヘレニズム科学者、WW1の講和条約などが難関私立大学の「紛らわしいもの」の定番。

 

有名どころの前後物や細かい知識がいつになく多い。去年が簡単すぎた反省?

 

 

課題  1980年代のソ連、東欧諸国、中国、ベトナムにおける当時の経済体制および政治体制の動向 300字

条件  それらの国、地域の類似点と相違点に着目

ヒント 大きな変革を迫られた

 

マトリックス

 

経済

政治

ソ連 前

経済の停滞 計画経済が非効率 

共産党独裁の弊害 自由主義の取り締まり

市場経済への移行

ゴルバチョフペレストロイカ 複数政党制 大統領制

東欧 前

経済の停滞 計画経済が非効率 

共産党独裁の弊害

市場経済への移行

東欧革命で共産党政権が崩壊

中国 前

鄧小平 改革・開放 社会主義市場経済 外資の導入

共産党独裁

 

第二次天安門事件

ベトナム 前

難民問題 ボートピープル

共産党独裁

ドイモイ 市場経済 外資

 

 

解答例

ソ連では計画経済の非効率から経済が停滞し、共産党の腐敗やアフガニスタンへの侵攻で政治も停滞した。85年からのペレストロイカで複数政党制、大統領制市場経済が導入された。東欧諸国も経済が停滞し民主化ソ連に抑えられていたが、ソ連が東欧への指導権を放棄すると市民のデモで社会主義政権が倒れて市場経済に移行した。中国では改革・開放政策によって社会主義市場経済外資の導入で経済が発展するが、共産党独裁は維持されたため89年に民主化運動が起こるが天安門事件で弾圧された。ベトナムでは統一後政治や経済の混乱から難民が相次いだが、86年からドイモイと呼ばれる共産党独裁の下での市場経済への移行や外資導入が始まった。299字

 

解説

 京大の特徴は「バーター出題」(Ⅰが中国古代ならⅢはヨーロッパ近現代)だが、出題パターンも「タテ整理」と「ヨコ整理」がバーターになっている。こちらはヨコ比較だが「ビフォーアフター」の比較も書く。

 天安門事件ゴルバチョフ訪中を契機に起きたのを含めて、すべての項目がペレストロイカとつながっている。ただしソ連と東欧では共産党一党独裁が崩れ、中華人民共和国ベトナム一党独裁の上で市場経済が導入されたことを比較する。

 「冷戦の崩壊」の単元で先生は必ず「なぜソ連が衰退したか」について話している(はず)。理解できていれば取り組みやすい問題だが現役生には厳しい。政治経済の授業を活用するしかない。

 一問一答は自習で知識を蓄積できるが、こうした論理については授業や演習が頼りになる。先生の話は聞くこと(笑)。

 解答例は「ゴルバチョフ」「鄧小平」「ワレサ」など人名を削って具体例を入れた。

 

*発展 2016年の東大の第1問にしろ、このところアラフィフの私にとって与しやすい問題がよく出題されるのは、出題者もそれぐらいの年齢だから?

 


a◎ケルト  b◎フン  c◎フランク

問1 こ○線文字B  問2 ◎イオニア人  問3 ◎エトルリア人  問4 ◎民会

問5 ◎テオドシウス帝  問6 ぜ△テオドリック大王

問7 ◎アタナシウス派に部下と共に改宗した。

問8 ○全国を州に分け、現地の有力者を伯に任命し、巡察使に監視させた。

問9 ◎アヴァール人 問10 ◎ビザンツ帝国

 

d ×ケーニヒスベルク  e り△オスマン帝国  fゆ▲クリム=ハン国

g △ダンツィヒ     h こ○フィンランド

問11 り▲十字軍時代の巡礼者の警護

問12 △宗教的にはスウェーデンプロテスタント、フランスはカトリックだが政治的には神聖ローマ皇帝を共通の敵としていて、三十年戦争主権国家間の戦争であることを表しているから。

問13 ◎カント  問14(ア) ◎七年戦争  (イ)◎グロティウス

問15 ◎エカチェリーナ2世がイギリスを孤立させ、北米13植民地の独立戦争を間接的に支援するために提唱した。

問16(ア) り○アメリカ合衆国 (イ)り○ウィーン会議

 

 

新三年生に向けてアドバイス

 

問1 文字の歴史は難関私大の定番なので一通り復習する。

問6 アラリックとガイセリックは教科書には載っていないがテオドリックは載っている。オドアケルのついでに覚える。

d ケーニヒスクローネは神戸の洋菓子メーカー。関西人だと地図で地名を見たとき頭に残る(笑)。こういう「県民スペシャル」は仕込んで損はない。私の県にもあるが企業秘密。

 

*追記 合格した生徒の自己採点メモを見たのですが、最初は「?」をつけていたのに問13「カント」を解答した後に思い出したそうです(カントはケーニヒスベルクの出身)。他教科(とはいってもテストに出るわけでない)の情報が目に入った時に記憶され(いわゆる「捨て目」)、ヒントから推理できるかがふるい落としポイントです。かなり難しいです。「学校の授業をギラギラしながら臨め」ということでしょう。 

 

e f クチュク=カイナルジ条約を知っていれば判断できる。難関私大レベル。

h 関東の難関私立大学でフィンランドの歴史が「削り」問題で時々出題されるが、この出題は最後の空欄で判断できる。WW2勃発後のフィンランド侵攻でソ連国際連盟を除名されたのは有名。

問12 宗教だけだと部分点かも。三十年戦争主権国家間の戦争であることを書きたいが、高校生が理念的なことをスラスラいうのは難しい。

 

 Ⅱと同じく単文論述問題が出たが、教科書レベルの問題。新三年生は北海道大学の問題で練習する。難関私立大学の入試問題も暇つぶしにする。

 

世界史の入試問題について考える(1 東京大学2017)

 国公立の前期試験、みなさん実力を発揮できましたか?

 昨年度に引き続き、問題を解きながら来年度に向けてどのような準備をしたらよいか考えます。

 

*解答例の方針

  • 解答例は受験生と同じように何も見ないで書くことを基本にしています。ただしブログに載せる以上推敲はしています(本番では推敲している暇はないです)。
  • 教科書の記述を超えない程度にしていますが、一部先生が授業で必ず話す(はずの)知識は入れます。
  • 解答例の紹介ではなく、解答へのアプローチの仕方や新三年生が何を準備するかについて考察することが主眼です。
  • 予備校の解答例の方が練られているのは当然です。当方はそちらと勝負する気はありません。解答例が知りたい人はそちらを見てください。だから比べないでください(笑)。

 

*発展 2月に定番テーマについて特集をしましたが、2017年の名古屋大学の世界史で「魏晋南北朝仏教道教」「士大夫」「冊封体制」の説明問題が出ました。予備校風に言うと「ズバリ的中」ですが、別に名古屋大学の対策をしたわけではないですし、定番テーマは必ずどこかで出ます。ただ名古屋大学を受験した人がブログを見ていただいたなら幸いです。

 

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

 

入試問題の現物は日本経済新聞、読売新聞、毎日新聞より拾ってください。

 

 

東京大学 2017年

 

第1問

課題 前2世紀以降のローマ、春秋時代以降の黄河・長江流域について、「古代帝国」が成立するまでの二地域の社会変化。

条件 古代帝国の類似性と法則的な発展が論じられてきた。しかしそれぞれの地域社会の発展、帝国統治者の呼び方の登場の経緯には違いがある。

語句 漢字 私兵 諸侯 宗法 属州 第一人者 同盟市戦争 邑

 

語句から芋づる ローマか中国かで使う

漢字 中 漢字文化圏 始皇帝が篆書に統一

私兵 ロ 有力者が無産市民を私兵化

諸侯 中 周王から封土を与えられる

宗法 中 宗族が守るべき規範

属州 ロ 征服活動で得た海外領土

第一人者 ロ アウグストゥス、第一市民

同盟市戦争 ロ 内乱の1世紀 イタリア半島の自由人に市民権が認められる

邑 中 都市国家

 

マトリックス

 

ローマ

中国

背景

属州の拡大による自作農の没落 ラティフンディアの拡大

周王の封建と宗法による邑の連合国家

契機

奴隷の反乱 同盟市戦争 市民権の拡大

周室の内紛、遊牧民の侵入で周王の権威が低下

経過1

有力者が無産市民を私兵化

有力者が周王の権威を元に諸侯を統率

経過2

有力者の私的な同盟

諸侯が王を自称し富国強兵政策

結果1

最も強力な有力者が属州を監督し、その富で軍隊を維持して治安を守る

王が貴族を介さず役人を派遣して農民を直接支配する

結果2

オクタウィアヌス地中海世界を統一

秦王政が黄河と長江流域を統一

皇帝概念

元老院からアウグストゥスの称号 共和政の伝統を名目上は守る

王の上位権力である皇帝の称号を創始した

影響

市民の自由な経済活動を保障する帝国

政治制度を整え官僚を地方に派遣する中央集権的な帝国

 

解答例

ローマでは前2世紀に長年の対外戦争と属州からの穀物流入で自作農が没落して市民皆兵が崩れる一方、属州で富を蓄積した騎士が奴隷制大農場を拡大した。こうした中で属州や奴隷の反乱が相次いだ。そこで有力者は無産市民を私兵化して反乱を鎮圧し互いに抗争した。カエサルは広大な属州を支配下におさめ、その収入で軍隊を維持しローマ世界の治安を守る体制を構築した。彼の暗殺後オクタウィアヌス地中海世界を平定し、元老院からアウグストゥスの称号を得て、市民の第一人者と自称して共和政の伝統を守り、同盟市戦争以後拡大したローマ市民権を持つ者の自由な活動を保障する地中海帝国を確立した。黄河流域では周王が諸侯と主従関係を結び、同族集団が宗法にもとづいて結合する都市国家の邑の連合政権を形成したが、周室が衰退すると有力諸侯が周王の保護を名目に諸侯と盟約を結んだ。この春秋時代から実力主義の風潮が強まり、戦国時代には周室の権威は失墜し諸侯は王を自称し戦国の七雄が覇権を競った。鉄製農具の普及で生産力が高まると小家族経営が可能になり、七雄の秦は法家の思想を採用し、郡県制で農民を直接支配して軍備を整え、他の6国を破って黄河・長江地域を統一した。秦王政は諸王の上に立つ権力者という意味で皇帝の称号を創始し、全国に郡県制を敷き、法を整備し、度量衡・貨幣・漢字を統一して官僚制や文書行政による集権的な帝国体制と漢字文化圏を構築した。597字

 

ポイント

 ローマ帝国秦帝国が成立するまでの「社会変化」を比較して論じる。

 ひとつは社会のあり方。前者は「自作農からなる市民皆兵の都市国家」から「独裁者が管理する属州の富で傭兵を維持する地中海帝国」へ、後者は「氏族的な都市国家の連合体」から「皇帝が小農を直接支配する官僚制帝国」への変化。

 もうひとつは地理的広がり。前者は「ローマ人だけの都市国家」から「ローマ市民権を持つ者の地中海帝国」へ、後者は「黄河流域だけの文化圏」から「漢大陸全体の文化圏」への変化。この2つを要領よくまとめれば解答になる。

 

 たぶん使いにくいのが「漢字」という指定語句。

 ローマ帝国は官僚があまりいない。一方で中華帝国は官僚による文書行政が特徴。文字を篆書に統一したのは中央の命令を地方に伝えるため(始皇帝展で政府の命令を記した竹簡が展示されていた)。

 解答例では「漢字」を氏族支配から文書行政への変化という意味で使った。

 

今後に向けて

 今回はここ数年の時代を区切って世界を俯瞰する出題ではなく、「帝国のあり方」を抽象的に比較する出題だった。

 知識の出し入れだけではなく、抽象的な概念が比較できるかが問われている。馴染みのある範囲なので受験生的には「よしっ!」だが、実は書けそうで書けないタフな問題。

 最難関大学を受験するなら、ただ用語を覚えるのではなく歴史の「論理」にも注意する。「冊封体制」「世界の一体化」「帝国主義」など、授業中に抽象的な話が出てくれば漏らさず聴き、論述演習で復習する。

 

*発展 古代史オンリーで最近の出題とはテイストが違うように見えるが、アメリカ合衆国中華人民共和国の覇権のあり方に関する婉曲論評ともとれる。穿ち過ぎ?

 

 追記 3/24

*発展 京都大学の典型問題分析で「古代ローマとヨーロッパ中世封建制の軍制と社会のあり方を比較する」問題を紹介しました。京都大学はこうした社会経済と政治のあり方の関連性を問う出題がよくあります。第一志望の過去問研究はマストですが、決めうちはやめましょう。

 

第2問

難易度

◎マスト ○書きたい △難しいが差がつく問題 ▲完全解答は難しい

 

問(1)(a)ポーランド人の国家が隆盛した時期の状況とその後衰退した背景 90字以内

解答例▲

14世紀カジミェシュ大王の時に発展し、ドイツ騎士団に対抗するため同世紀末にリトアニアと合併してヤゲウォ朝が成立した。しかし貴族が強大化して王朝断絶後は選挙王制となり国内が分裂した。90字


ポーランドプロイセン人をキリスト教化するためにドイツ騎士団を誘致したらこの人たちも困った人で(笑)、彼らに対抗するために同じ目に遭っているリトアニアと合併したというのは有名な話。2015年の阪大に類題。


(b)ドイツ統一の際南部に存在した少数者集団と、当時いかなる政策が彼らに対してとられたか。60字以内

解答例○

ドイツ政府は南部に多いカトリック教徒を帝国の敵ととらえて政教分離を進める文化闘争を起こして現地の中央党と対立した。57字

*教科書には政教分離の具体例が書いていないので高校生にはこれが限界。

 

問(2)(a)清朝は藩部を掌握するためにどのような政策をとっていたのか。60字以内

解答例○

清は理藩院を設置して現地の有力者の自治を認める間接統治を行った。また現地の伝統的な文化や風習などを認めて懐柔した。57字。

 

ウイグルではベク制、チベットではダライ=ラマの制度が具体例。清朝は漢族社会では中華皇帝、遊牧民地域ではモンゴルの後継者として振る舞った。

 

(b)シンガポールの独立の経緯について、多数派住民が誰かに触れながら 60字以内

解答例△

マレーシア連邦が成立した時にその一部となるが政府がマレー人を優遇したのでこの地の多数派の中国系住民が不満を持ち分離した。60字


京都大学で既出。戦後史の有名問題。マレーシアはマハティール、シンガポールはリー=クァン=ユーが開発独裁の指導者として有名。今年出来が悪いと来年第3問で「かぶせて」くるかもしれないので周辺事項を復習すること。


問(3)(a)ケベック州が英語以外の言語を母語とする状況が生まれる前提となった、17世紀から18世紀にかけての経緯。60字以内

解答例○

17世紀にフランスが毛皮取引等を目的に北米に植民地を開発したが、七年戦争でイギリスに敗北しパリ条約でこの地を割譲した。58字


*高校生は「フレンチ=インディアン戦争」を書いて「毛皮取引…」を削る。


(b)南北戦争を経て奴隷制が廃止されるが、その後も南部諸州ではアフリカ系住民に対する差別的待遇が続いた。その内容 30字以内、

解答例▲

州法で選挙権が制限され公共施設の使用などが白人と別にされた。30字

その是正を求める運動の結果制定された法律  ◎公民権

その時の大統領  ◎ジョンソン


*関東の私大では定番の「ジム=クロウ法」の説明。授業で「バスボイコット事件」のビデオを見ると印象に残る。

 

今後に向けて

第2問は毎年同じで、有名語句だけ覚えないで意味もちゃんと分かっていて書けるかどうかが試される。普段の心がけ。

 

第3問

難易度

◎マスト ○書かないと差が付く △書くと差が付けられる

出題パターン

ま:紛らわしい や:ややこしい こ:細かい知識 り:理解・推理 ぜ:有名ものの前後・左右 ゆ:由来・フルネーム て:抵抗


問1 ま△シャープール1世  問2 ◎ウマイヤ朝 り○メロヴィング朝

問3 こ○グスタフ=アドルフ 問4 ◎トラファルガーの海戦

問5 や○李鴻章       問6 ぜ△サン=ステファノ条約

問7 ◎ファショダ事件    問8 て△ベトナム独立同盟

問9 こ○アメリカ合衆国ソ連、イギリス  問10 ◎グロティウス

 

東京大学志望者なら全問正解必須。

問5 漢字は正確に書く練習を。関西人は書ける(鴻池)

問1、問6、問8 「ど忘れ」に注意。

問9 PPAPならぬPTBT(笑)

 

今後に向けて

紛らわしいもの、有名どころの「いつどこだれ」や前後の知識、権力に抵抗した人は東京大学および難関私立大学の定番。日頃の心がけおよび難関私立大学の過去問の活用。