ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

「歴史総合」「地理総合」に向けての研究を参観する

 新学習指導要領で「歴史総合」、「地理総合」が導入されます。その概要も徐々に明らかになってきました。

 

教育課程部会 社会・地理歴史・公民ワーキンググループ(第14回) 配付資料:文部科学省

 

 資料8-1によると「歴史総合」は「近代化」(産業革命帝国主義)、「大衆化」(二つの世界大戦)「グローバル化(冷戦~21世紀)という3つの柱で、地域と時系列の二面から比較し因果関係を考えるのが狙いです。今まで世界史Bの「付録」扱いの主題学習が「メインディッシュ」になったといえます。

 しかし「近代化」や「帝国主義」について高校1年生が理解する、しかもアクティブラーニングの方法を用いてというのは、なかなかハードルが高そうです。

 現在いくつかの学校がこれら科目の研究開発を行っています。

 そこで11月に文部科学省研究開発学校として「地理基礎」「歴史基礎」の研究を行っている神戸大学附属中等教育学校(神戸市東灘区)の研究発表会に参加しました。

www.edu.kobe-u.ac.jp

 

 

*7月31日の別の研究会で副校長の勝山先生に「研究開発の様子をブログに載せていいですか」と伺ったところ許可を頂きましたので、その様子を伝えます(写真はプライバシーに配慮しました)。

 

 この日は参観者が多く、研究授業は体育館のアリーナで行われました。

 

 最初は4年生=高校1年生の「地理基礎」を参観しました。「持続可能な世界の構築」の「現地化の視点とグローバル化」という学習内容でした。

 生徒はここまで南インドとサブサハラの自然環境等について学んでいて、この日の前半は「現地で使える商品を開発」を生徒が考え、ポスターにしたものを参観者にプレゼンしました。

 

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 南アジアやサブサハラは未舗装でぬかるんだ道が多く、車が通行しづらい(車を押すことを仕事にしている人もいるそうです)ので、タイヤの中に液体窒素を充填してぬかるみを瞬時に凍らせて走る工夫とか、ソーラー発電を利用した携帯電話や電動四輪車など、なかなか斬新なアイデアが紹介されました。

 その後、生徒は参観者の指摘を受けて「自分たちのプランに何が足りないのか」をグループで議論しました。

    確かに上述の工夫などは購入のコストやメンテナンスが現地の人には負担です。「現地化」とは現地の人のニーズなど現地の目線で考えなければいけない、というまとめでした。

 

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 授業の狙いは、「現地化」の意味を知識として得るというより「気づく」に重きが置かれていたように思います。担当の先生も「生徒にはしんどかった」といっていました。

    確かに生徒からすれば、色々知恵を絞って立派なポスターを作った上で、「君たちの発想には問題がある!」と「ちゃぶ台返し」される訳です(常に前提を疑う文学部出身の私にはすっと入ってきますが)。

 とはいえ議論の様子を聞いていると、生徒からは「もっと知りたい、考えたい」という素直な姿勢がひしひしと伝わってきて、試練に耐えるスポ根アニメ(笑)の主人公のような「柔軟な強さ」を感じました。

 

 次に4年生の「歴史基礎」を参観しました。「アジアの近代化と帝国主義」という単元で、ここまで学習してきたことのまとめとして、19世紀末から20世紀初頭の東アジアの近代化と帝国主義について、小学生向けの教科書を作るという活動でした。

 生徒たちはこれまでのワークシートや宿題の「イメージ図」(イラスト、地図、コラム)を元に何を、どうまとめるか、議論しながら模造紙に文章を書いていきました。

 

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 しかし学習してきた内容をさらに平易な言葉に置き換えるのは(しかも時間と字数の制限あり)大人でも難しい作業です。私が見た班は真面目な生徒たちで、勉強したことをなるべく詰め込もうとして苦労していました。

 とはいえ冊封朝貢体制、日本、清朝、朝鮮王朝の「近代化」の明と暗など、教科書を読んで先生の話を聞いただけでは容易に理解できない内容を大まかに把握していて、それを前提に班員で議論しているので感心しました。 

 

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*後の研究協議で「帝国主義という概念に対する批判的考察は?」という高度な質問が飛んでいましたが、もう少し学習が進めば帝国主義を「独占資本の世界進出」以外のアプローチ(例えばナショナリズムと国民統合)で捉える必要が出てくるので、きっとこの生徒たちなら気がつくと思います。

 

 研究協議の時に勝山先生が、この研究開発の核となる「21世紀型能力」と「歴史的思考力」のあり方について説明されていました。

 現状の歴史教育は「コンテンツ重視」から脱却できない、「コンピテンシー」つまりどういう能力や学力を伸ばすのか、を議論する必要があると指摘されていました。

 しかし「21世紀型能力」という汎用的能力(基礎力、思考力、実践力)に歴史教育が従属するのではなく、生徒が「歴史的な見方・考え方」「歴史的思考力」を身につけることが汎用性能力の育成につながる、と勝山先生は力説されていました。

 

 世界史は必ずヨコ(地域)タテ(時系列)の比較と因果関係で物事を解釈します。そして「解釈」するときには必ず「私の立ち位置」、今私はどこにいて、どのような問題に直面しているのかなど自分の問題に引きつけて「問い」を立てます。

 たとえば最近の「主権者教育」がうたう「公平・中立」は、「Aさんは…」「Bさんは…」と意見を羅列するだけになりがちです。

   そうではなくて各意見を時間軸の中に位置づけたり、似た事例と比較することを通じて、主張の根拠や背後にある意図を明らかにし、批判的に考察することが主権者に必要です。そのために歴史的思考力は欠かせません。

 

 また勝山先生はアクティブラーニングが「体を動かすこと」=隣の人と話したり、みんなの前で発表すること、ではなく「脳を活性化すること」と断言していました。 

 今回の研究発表を参観して、近現代の日本史でなじみのある範囲を突破口に「近代化」や「グローバル化」について問いを立てて考えるというのは、神戸大学附属中等教育学校ほどではないにしろ多少は脳を活性化する授業ができるかも、と思うことができた一日でした。

 

 授業および準備にあたられた先生方、大勢のギャラリーの中で物怖じせず議論を戦わせていた生徒のみなさん、どうもありがとうございました。

世界史の入試問題について考える(3 一橋大学2017)

2017年入試の世界史の問題について考えます。第3回は一橋大学です。

 

過去の出題についてはこちら

 

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

 

解答例作成の方針と問題の入試方法はこちら

 

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

 

一橋大学 2017年


課題 引用文が述べる現象(貨幣の量が増えると物価が上がる)が、スペインの盛衰と16~17世紀のヨーロッパ経済について与えた影響について 400字

 

マトリックス

 

スペイン

ヨーロッパ経済

16世紀

ポトシ銀山の開発 銀の流入

穀物価格の上昇 物価の騰貴

 

スペインの覇権

封建領主の没落

 

カトリック政策やオスマン帝国との戦いで軍事費増大。

国内貴族を保護して銀は国内産業育成に使われない

商業の中心が大西洋岸に 北イタリア諸都市の衰退

 

オランダ独立戦争

イギリスの私掠船がスペインの銀船隊を襲う 無敵艦隊の敗北

アントウェルペンに銀が集中 毛織物 バルト海交易

17世紀

衰退

オランダが商業の中心に アムステルダム 中継貿易

 

 

英仏の重商主義 毛織物工業を重視

 

解答例

3/6  イギリスと新大陸の銀の関係を追加しました

3/24 「17世紀の危機」について追加しました

16世紀にスペインがポトシ銀山を開発すると新大陸の銀がヨーロッパに流入した。人口増加による穀物価格の上昇もあってヨーロッパでは銀の価格が下落し物価が高騰する価格革命が発生した。このため西欧では封建地代に頼る領主が没落して市民層が台頭し、貿易の中心が大西洋に移動して地中海の貿易都市が衰退した。東欧では輸出用の穀物の生産のために農奴制が強化された。しかしスペインが得た銀はカトリック政策に基づく対外戦争に費やされ、国内産業にも投資されず、ネーデルラントアントウェルペンに銀が集まった。スペインはこの地を圧迫したが抵抗運動が発生しオランダが独立した。またイギリスに銀船隊が襲撃され無敵艦隊が敗北して大西洋の制海権も失い衰退した。17世紀に銀の流入が減って物価が下落し経済が停滞する中でオランダが世界商業の中心となり、イギリスは海賊行為で得た銀で毛織物業を奨励し、重商主義と西欧と東欧の国際分業が確立した。399字

 

 

学習のポイント

 ここ何年かの教養主義から打って変わって、今年は経済系の最高峰らしい世界システム論に関する出題。当ブログの「グローバル化」で一部紹介(予想したのではないので「ズバリ的中」ではないですが)。

 定番部分については「こんなの出ない」とか言わずにちゃんと一通り演習する。慶応の経済学部や商学部の問題をする。

 

 

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

 

 価格革命がスペインの盛衰と16~17世紀ヨーロッパの経済への影響について答える。

 スペインの盛衰については、新大陸から銀が流入→それを元手に対外戦争(カトリックの保護が大義名分)→ヨーロッパの覇権を握る→銀が国内産業育成に使われず、アントウェルペンに流出→オランダ独立戦争→イギリスが私掠船でスペイン船を襲う→無敵艦隊敗北→衰退というストーリーを書く。

 16~17世紀のヨーロッパ経済については、16世紀は価格革命の影響(領主の没落、西欧は工業化、東欧は農場領主制)、17世紀はオランダ、イギリス、フランスの台頭を説明する。スペインの重金主義、オランダの中継貿易、イギリス、フランスの貿易差額主義(毛織物工業の奨励)も比較したい。

 特にイギリスの重商主義はスペインの銀船隊を襲って獲得した「海賊マネー」が元手。ラテンアメリカガイアナスリナムフランス領ギアナが並ぶのは、英蘭仏の海賊行為の名残。

 

追記 3/24

 17世紀は経済の不振、人口増加の停止、物価の下落など「17世紀の危機」と呼ばれる状態になるが、成長に限界に来たこと、気候の変動に加えて新大陸からの銀が入ってこなくなったことも一因とされる(オランダが例外的に繁栄したのはアジア内貿易で日本の銀が手に入ったから)。

 東京書籍と帝国書院の教科書は経済史や「世紀の概観」に強いので先生に頼んで購入し、論述用の教材にすること。

 

 なおちくま新書の『銀の世界史』と『世界史を作った海賊』は「私掠船」などスペインとイギリスの対立について詳しい。最難関大学を受験するなら勉強の片手間に関係する新書ぐらい読んでおくこと。

 

 

問1 トルデシリャス条約

問2

課題 19世紀の奴隷解放の歴史のなかでハイチとアメリカ合衆国はそれぞれ他とどのような異なった特徴を持っているか。100字

 

解答例

ハイチではプランテーションの黒人奴隷が蜂起し、1804年にフランスから独立して黒人共和国となり奴隷制が廃止された。アメリカ合衆国では奴隷制をめぐって南北戦争が勃発し、北部が勝利して奴隷制憲法で禁止された。100字

 

ポイント

 ハイチは奴隷の蜂起から共和国成立、アメリカ合衆国南北戦争の結果であることを示す。字数が少ないので固有名詞は避ける。

 

問3

課題 ラテンアメリカ独立運動の契機、担い手、独立後の経済政策 275字

 

メモ

契機 アメリカ独立革命、ナポレオンのスペイン征服 ウィーン会議後の反動

担い手 中心はクリオーリョ。革命には他の階層も動員

独立後 イギリスに経済的従属 クリオーリョの地主制は解消されず。

ブラジル ポルトガル王子を皇帝に迎え平和的に独立。


解答例

スペインがナポレオンに征服され植民地支配が緩んだことやイギリスの海上封鎖を契機にラテンアメリカ生まれの白人であるクリオーリョが本国から自立しはじめた。ウィーン会議後スペインの支配が再び強まると、彼らはメスティーソなど従属階層を巻き込んで独立戦争を本格化させた。米英の支持を得て独立は達成されたが、クリオーリョが政治を独占しその大土地経営は維持され、一次産品の輸出と工業製品の輸入でイギリスに経済的に従属した。ブラジルではナポレオン戦争中にポルトガル王室が避難したが、周辺地域で独立運動が発生すると王族が皇帝となりブラジル帝国が平和的に独立した。272字

 

ポイント

 契機=直接の原因はナポレオン戦争について書く(いわゆる「大西洋革命」は背景=間接的な原因)。経済的な部分はイギリスとの関係を書く。

 ブラジルの部分は高校生には難しい。ちなみにポルトガル三十年戦争中にスペインから自立し、その後はイギリスのジュニアパートナーと化す(リカードの比較生産費説はイギリスとポルトガルが例)。大陸封鎖令の時代、ポルトガルがヨーロッパの穀物を闇で輸出する基地だった。難関私立でおなじみ「アシエント」も、奴隷貿易本体に深く関わっているのはポルトガル

 

 

課題 ザイトンとはどこか。その都市を取り巻く11~13世紀の国際関係 400字

 

マトリックス

 

泉州の様子

取り巻く国際関係

11

市舶司が置かれる。ジャンク船で東南アジアへ

北宋遊牧民の圧迫。朝貢貿易は廃れ私貿易が中心。

12

南宋時代の最大の貿易港

南宋が江南を支配。金と対峙。

13

ユーラシア循環経済で海の道と草原の道がつながる マルコ=ポーロが訪れたとされる

モンゴルの平和

周辺諸国に出兵。朝貢を促す。

 

解答例

泉州。11世紀に北宋は周辺の遊牧民の圧迫を受けて領土を縮小し、北では契丹と兄弟の礼を結び、西では西夏と君臣関係を結んだ。このため唐代の朝貢貿易は廃れ私貿易が主流になり、またチョーラ朝が宋に使節を送るなど海の道での交流も活発化した。泉州には市舶司が置かれてイスラーム商人が訪れ、中国商人はジャンク船を使って陶磁器や銅銭を輸出した。12世紀に北宋は金に首都開封を占領されたので杭州に逃れ南宋を維持した。南宋は金と和議を結び淮河を境とし南宋が金に臣下の礼を取った。南宋の拠点が江南に移ったことで泉州は最大の海港都市となった。13世紀にはモンゴル帝国西夏や金を征服し、南宋も元に滅ぼされた。また元は日本や東南アジアに出兵して各国に朝貢を促した。このモンゴル帝国の征服によって草原の道と海の道をつなぐユーラシア循環ルートが生まれ、東西交流が盛んになり、泉州はマルコ=ポーロが訪れるなど東西の結節点として繁栄した。398字

 

ポイント

 マルコ=ポーロの『世界の記述』ではザイトンが泉州、キンザイが杭州(臨安からキンザイ、と覚える)。

 

*正確には臨時の宮廷(行在 アンザイ)

 

 高校生だと400字が厳しい問題。教科書の宋、元で泉州の記述がある部分を「国際関係」と「交易」の面からピックアップする。

 北宋冊封体制が崩れて私貿易、南宋は江南の政権、元の征服活動は朝貢を促すことが目的であったことに気がつけば、それぞれの時代と泉州との関わりが見えてくる。日本もいわゆる「元寇」後は日元貿易を行っている。

 なお元代の「ユーラシア循環経済」は2015年の東京大学および大阪大学で何回か出題されている。ブログでも紹介済。

 

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

 

 またセンター試験で「チョーラ朝」が出た時にちゃんと復習してあれば宋代の南アジア、東南アジアとの関係が書ける。帝国書院や東京書籍の教科書だと「三仏斉」とか出てくるが、固有名詞が思い出せなくても話は通じる。

 

4 私大一般、国立二次の「削り問題」攻略のための復習ポイント 参照

 

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

 

 

まとめ

 今年は一橋大学「決めうち」の人より東京大学の過去問を含めてグローバル化など定番テーマを一通り対策していた人の方が有利な問題でした。

 「傾向が変わった」とも言えますが、過去に奴隷貿易グローバル化の話題は出ていますし、早稲田や慶応を併願しているなら当然準備している部分です。

 もともと一橋大学は社会科学系の最高峰であり、経済に関心のある生徒が集まるのですから、今回の話題は「ど真ん中の直球」なのかもしれません。

 ですから定番の中世史や東アジア近現代史に比べると今年は解答の方針が立てやすい問題でした。

 センター試験、併願の私立大学、国立大学二次とまんべんなく学習し、同じ難易度の大学の過去問をすることで実力を養成しましょう。

 

世界史の入試問題について考える(2 京都大学2017)

 2017年の世界史の問題を解答しながら、何が試されているのか、どのような準備をするかについて考えます。第2回は京都大学です。

 

2016年はこちら

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

 

問題の入手方法、解答例作成の方針についてはこちら

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

 

 

課題 匈奴について、中国との関係を中心にしつつ前3世紀から後4世紀初頭に至るまでの歴史 300字以内

 

マトリックス

 

中国王朝

匈奴

前3C

長城を修築 蒙恬の遠征

前3C末

前漢

冒頓単于 高祖を破る

前2C半

前漢

武帝の討伐

前1C半

前漢

匈奴が東西に分裂

後1

後漢

東匈奴が南北に分裂 南匈奴が内地に移住

後3

西晋

八王の乱で五胡が侵入

後4

西晋

南匈奴西晋を滅ぼす

 

解答例

匈奴は陰山山脈を拠点として活動していたが、前3世紀に秦の始皇帝蒙恬を送って匈奴を攻撃し、趙と燕が作った長城を修築した。前3世紀末に冒頓単于匈奴を率いて前漢の高祖を破り、和平を結んで毎年銀や絹を受けた。前2世紀半ばに武帝は衛青らを派遣して匈奴を討伐し貿易の利益を奪ったので匈奴は衰退し、前1世紀半ばに東西に分裂した。後1世紀に東匈奴が南北に分裂し、南匈奴は内地に移住した。後漢の時代になると匈奴は傭兵として用いられるようになり、3世紀末の西晋の内紛である八王の乱でも傭兵として活躍した。これ以後匈奴は五胡のひとつとして内地にたびたび侵入し、4世紀はじめに首都洛陽を占領して西晋を滅ぼした。295字

 

解説

 教科書ではばらばらに載っている匈奴について中国との関係を軸に再構成する。京都大学の定番「トピック抽出タテ整理」問題。

 難しいのは武帝の後。前1世紀東西に分裂→後1世紀東匈奴が南北に分裂、うち南匈奴が内地に移住、というところが受験生には書きづらいところ。

 蒙恬始皇帝の命で匈奴の制圧に乗り出し、オルドス地方(黄河が大きく湾曲している内側の砂漠地帯)に進出した。「蒙恬」はできれば書きたい(ⅡⅣレベル)。「オルドス」が書けるのはよっぽどの世界史マニアなので高校生は書かなくて良い。

 

*発展 名古屋大学の2014年の問題Ⅱをやってあった人はリード文と問題の内容を書けばほぼ2/3をカバーできる。ただしこれは「悪問」として有名で、『絶対に解けない受験世界史』にも収録されている。

 その原因は問4「北方ユーラシア騎馬民族と漢との関係中国と匈奴の関係の変化、紀元前2-1世紀の範囲で」。この文言だと紀元前1世紀なのか紀元後1世紀なのかはっきりせず、前か後かで解答が全く変化する! 京都大学はちゃんと「後4世紀」と書いてある。

 

 

難易度凡例

◎マスト ○書かないと差をつけられる △書くと差がつけられる

▲書けるとでかいが無理しない     ×たぶん無理

出題パターン凡例

ま:紛らわしい や:ややこしい こ:細かい知識 り:理解・推理 ぜ:有名ものの前後・左右 ゆ:由来・フルネーム て:抵抗

 

 

aり○班固  bま△総理各国事務衙門  c◎義和団事件

1り○禁書や文字の獄によって反清的と見なされた書物が取り締まられたから。

2ま○王羲之  3◎『資治通鑑』  4り○禅宗

5り○パリ講和会議で中国が主張した二十一か条要求の撤回が受け入れられなかったことに反発して北京で五・四運動が発生したから。

6◎グプタ朝  7◎郭守敬  8◎ネルチンスク条約  9◎広州

10り▲宣教師が儒教科挙など中国の文化をヨーロッパに伝え、特に啓蒙思想家に影響を与えたから。

11×三藩の乱


dぜ▲カルゲドン  eぜ△ウマル     f◎アイユーブ

gぜ▲バイバルス  hこ△ティマール

12(ア)◎エフェソス   (イ)り○ササン朝  13こ×アルメニア(共和国)

14こ○ミスル       15り○サーマーン朝  16こ▲12イマーム

17り△モンケ=ハン    18×サヌーシー教団

19(ア)◎ワッハーブ王国 (イ)ま○アブドゥルメジト1世

 

 

新三年生に向けてアドバイス

 

b 2 漢字を正確に書く練習をする。
10 教科書に書いてあるが普通読み飛ばすところ。ヴォルテールは「アダムとイブが生まれる前に中国に王朝があった」ことにショックを受けて、「これからは中国研究だ!」と言っている。

11 ドボン問題。三藩の乱か台湾の制圧か2択。

d g 16 難関私立大学の「削り」問題。

18はドボン、京大の先生で研究している方がいる模様。私も『世界史の窓』をチラ見(笑)。

19(イ) タンジマートはメジト ミドハトはハミト 有名な語呂判別もの。タンジール事件とアガディール事件、李鴻章(淮軍)と曾国藩(湘軍)、望厦条約(アメリカ)と黄埔条約(フランス)、ギリシア悲劇詩人、ヘレニズム科学者、WW1の講和条約などが難関私立大学の「紛らわしいもの」の定番。

 

有名どころの前後物や細かい知識がいつになく多い。去年が簡単すぎた反省?

 

 

課題  1980年代のソ連、東欧諸国、中国、ベトナムにおける当時の経済体制および政治体制の動向 300字

条件  それらの国、地域の類似点と相違点に着目

ヒント 大きな変革を迫られた

 

マトリックス

 

経済

政治

ソ連 前

経済の停滞 計画経済が非効率 

共産党独裁の弊害 自由主義の取り締まり

市場経済への移行

ゴルバチョフペレストロイカ 複数政党制 大統領制

東欧 前

経済の停滞 計画経済が非効率 

共産党独裁の弊害

市場経済への移行

東欧革命で共産党政権が崩壊

中国 前

鄧小平 改革・開放 社会主義市場経済 外資の導入

共産党独裁

 

第二次天安門事件

ベトナム 前

難民問題 ボートピープル

共産党独裁

ドイモイ 市場経済 外資

 

 

解答例

ソ連では計画経済の非効率から経済が停滞し、共産党の腐敗やアフガニスタンへの侵攻で政治も停滞した。85年からのペレストロイカで複数政党制、大統領制市場経済が導入された。東欧諸国も経済が停滞し民主化ソ連に抑えられていたが、ソ連が東欧への指導権を放棄すると市民のデモで社会主義政権が倒れて市場経済に移行した。中国では改革・開放政策によって社会主義市場経済外資の導入で経済が発展するが、共産党独裁は維持されたため89年に民主化運動が起こるが天安門事件で弾圧された。ベトナムでは統一後政治や経済の混乱から難民が相次いだが、86年からドイモイと呼ばれる共産党独裁の下での市場経済への移行や外資導入が始まった。299字

 

解説

 京大の特徴は「バーター出題」(Ⅰが中国古代ならⅢはヨーロッパ近現代)だが、出題パターンも「タテ整理」と「ヨコ整理」がバーターになっている。こちらはヨコ比較だが「ビフォーアフター」の比較も書く。

 天安門事件ゴルバチョフ訪中を契機に起きたのを含めて、すべての項目がペレストロイカとつながっている。ただしソ連と東欧では共産党一党独裁が崩れ、中華人民共和国ベトナム一党独裁の上で市場経済が導入されたことを比較する。

 「冷戦の崩壊」の単元で先生は必ず「なぜソ連が衰退したか」について話している(はず)。理解できていれば取り組みやすい問題だが現役生には厳しい。政治経済の授業を活用するしかない。

 一問一答は自習で知識を蓄積できるが、こうした論理については授業や演習が頼りになる。先生の話は聞くこと(笑)。

 解答例は「ゴルバチョフ」「鄧小平」「ワレサ」など人名を削って具体例を入れた。

 

*発展 2016年の東大の第1問にしろ、このところアラフィフの私にとって与しやすい問題がよく出題されるのは、出題者もそれぐらいの年齢だから?

 


a◎ケルト  b◎フン  c◎フランク

問1 こ○線文字B  問2 ◎イオニア人  問3 ◎エトルリア人  問4 ◎民会

問5 ◎テオドシウス帝  問6 ぜ△テオドリック大王

問7 ◎アタナシウス派に部下と共に改宗した。

問8 ○全国を州に分け、現地の有力者を伯に任命し、巡察使に監視させた。

問9 ◎アヴァール人 問10 ◎ビザンツ帝国

 

d ×ケーニヒスベルク  e り△オスマン帝国  fゆ▲クリム=ハン国

g △ダンツィヒ     h こ○フィンランド

問11 り▲十字軍時代の巡礼者の警護

問12 △宗教的にはスウェーデンプロテスタント、フランスはカトリックだが政治的には神聖ローマ皇帝を共通の敵としていて、三十年戦争主権国家間の戦争であることを表しているから。

問13 ◎カント  問14(ア) ◎七年戦争  (イ)◎グロティウス

問15 ◎エカチェリーナ2世がイギリスを孤立させ、北米13植民地の独立戦争を間接的に支援するために提唱した。

問16(ア) り○アメリカ合衆国 (イ)り○ウィーン会議

 

 

新三年生に向けてアドバイス

 

問1 文字の歴史は難関私大の定番なので一通り復習する。

問6 アラリックとガイセリックは教科書には載っていないがテオドリックは載っている。オドアケルのついでに覚える。

d ケーニヒスクローネは神戸の洋菓子メーカー。関西人だと地図で地名を見たとき頭に残る(笑)。こういう「県民スペシャル」は仕込んで損はない。私の県にもあるが企業秘密。

 

*追記 合格した生徒の自己採点メモを見たのですが、最初は「?」をつけていたのに問13「カント」を解答した後に思い出したそうです(カントはケーニヒスベルクの出身)。他教科(とはいってもテストに出るわけでない)の情報が目に入った時に記憶され(いわゆる「捨て目」)、ヒントから推理できるかがふるい落としポイントです。かなり難しいです。「学校の授業をギラギラしながら臨め」ということでしょう。 

 

e f クチュク=カイナルジ条約を知っていれば判断できる。難関私大レベル。

h 関東の難関私立大学でフィンランドの歴史が「削り」問題で時々出題されるが、この出題は最後の空欄で判断できる。WW2勃発後のフィンランド侵攻でソ連国際連盟を除名されたのは有名。

問12 宗教だけだと部分点かも。三十年戦争主権国家間の戦争であることを書きたいが、高校生が理念的なことをスラスラいうのは難しい。

 

 Ⅱと同じく単文論述問題が出たが、教科書レベルの問題。新三年生は北海道大学の問題で練習する。難関私立大学の入試問題も暇つぶしにする。