ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

世界史論述 定番テーマに挑む(4 グローバル化続き)

世界史の論述典型問題、グローバル化の続きです。

 

前回

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

 

問題は東進、代ゼミなどから入手してください。

 

 

3 モンゴルの世紀

 

例題3 東京大学 2015年

課題 13~14世紀のモンゴルの時代、日本列島からヨーロッパに至る交流の諸相

条件 経済的文化的側面に焦点を当てる 600字

語句 ジャムチ 授時暦 染付 ダウ船 東方貿易 博多 ペスト モンテ=コルヴィノ

マトリックス

 

西欧

ユーラシア中部

東アジア

日本

経済

ペスト←

ダウ船→

←染付

→博多

 

東方貿易←

ジャムチ←

 

←日元貿易

 

 

 

 

 

文化

 

コバルト→

→モンテ=コルヴィノ

 

 

 

 

授時暦→

→貞享暦

指定語句から芋づる

どこ(草原の道or海の道) なに(経済or文化)で分類

ジャムチ:草 両 モンゴルのパスポートがあれば移動が可能

授時暦:草 文 イスラームから

染付:海 経 西アジア産のコバルトで着色し、海外へ輸出

ダウ船:海 経 アラビア商人の来港

東方貿易:海 経 アジアの産物がイスラームを介してヨーロッパへ

博多:海 経 日元貿易

ペスト:海 経 人口の減少

モンテ=コルヴィノ:草 文 カトリックの布教

 

 解答例

モンゴル帝国は13世紀にユーラシアの草原地帯を支配しただけでなく海域にも進出してユーラシア循環経済ルートを構築した。草原地帯ではジャムチと呼ばれる駅伝制が整備され、東西の往来が盛んになった。西では十字軍でイスラームと対峙していたヨーロッパからフランチェスコ派修道士が派遣され、モンテ=コルヴィノは大都でカトリックを布教し、イル=ハン国ネストリウス派の僧バール=ソウマはローマ教皇を訪問した。またムスリム色目人として帝国内で活躍し、イスラームからは暦法が伝わって郭守敬が授時暦を作成し、またコバルトが伝わって染付という陶磁器が作られ西方に輸出された。元からは細密画がイスラーム世界に伝わった。海域では元は日本や東南アジア諸国に遠征した。その多くは失敗したが各国はその後元に朝貢したので東南アジアの貿易が活発化した。日本では元寇後は日元貿易が行われ、銅銭や陶磁器が博多などへ輸出された。このとき伝わった授時暦は後に貞享暦となった。また循環ルートに乗ってムスリム商人のダウ船がアラビアから東南アジアに来港し、神秘主義教団の活動もあってこの地でイスラームが広まった。ユーラシア循環経済ルートはヨーロッパの経済にも影響を与え、地中海では東方貿易が活発化して香辛料や絹が取引された。しかし交流の活発化によって中央アジアが原産と考えられる黒死病がヨーロッパの海港都市に伝わり、多数の犠牲者を出した。596字

 

ポイント

 「モンゴルの世紀」をグローバル化の端緒とする設問は有名だが、600字はつらい。

 高校生で難しいのは染付のコバルトの話。また「博多」は「元軍を博多で破った」ではなく「日元貿易」で使いたい(博多へ向かう沈没船を調査したらスゴイお宝が出た、というのは日本史の知識)。

 

 

4 ○○世紀の時代

 

例題4 大阪大学 2009年

課題 14世紀の危機 日本を含む3つ以上の地域 120字程度

条件 寒冷化による農業生産力の低下 モンゴル時代の交流の活発化

語句 紅巾の乱 黒死病

 

マトリックス

 

原因

結果

中国

天災 交鈔の乱発

紅巾の乱 元滅亡

ヨーロッパ

黒死病

百年戦争

日本

元寇後の幕府の衰退

南北朝 倭寇

 

解答例

中国では天災と交鈔の乱発で農業や商業が混乱し、紅巾の乱が発生して元が滅亡した。ヨーロッパでは英仏百年戦争に加えてアジアから伝来した黒死病のために人口が減少した。日本では元寇の結果武士が窮乏、鎌倉幕府が滅亡して南北朝時代となり、倭寇の活動が活発化した。125字

 

 

類題1 大阪大学 2009年

課題 17世紀の危機 ヨーロッパとアジアの主要国・地域での混乱や衰退 250字程度

語句 三十年戦争 ピューリタン革命 ユグノー 第二次ウィーン包囲 アウラングゼーブ 鄭氏(台湾)


解答例

ドイツでは三十年戦争が発生して国土が荒廃した。イギリスではピューリタン革命が起こり国王が処刑されるなど混乱が続いた。フランスではルイ14世がナントの勅令を廃止したためユグノーがヨーロッパ各地に逃亡した。オスマン帝国第二次ウィーン包囲に失敗してハンガリーを失うなどヨーロッパでの影響力を後退させた。インドではムガル帝国アウラングゼーブがジズヤを廃止したためヒンドゥー教徒シク教徒の反乱を招いた。中国では明が滅亡して清が北京に入城すると各地で反清運動が高まり戦乱で人口が減少、台湾の鄭氏の抵抗の影響で貿易も縮小した。258字

 

 

類題2 大阪大学2014年

課題 黒死病スペイン風邪を引き起こした要因のひとつである、地域間移動の頻度について、最も重要と思われる点 100字程度

 

解答例

黒死病は13世紀にモンゴルによって成立したユーラシアを循環する交易を通じて地中海にもたらされ各地に広まった。スペイン風邪第一次世界大戦でヨーロッパ戦線に投入された植民地の人々が復員したことで世界的に拡大した。104字


ポイント

「○○世紀」に同時多発的に起きた事件をざっくり俯瞰する練習は、大阪大学および東京大学で必要。

 資料集の「○○世紀の世界」を休み時間に眺める。

 2世紀はローマ、パルティア、クシャーナ朝後漢と「帝国」の時代。3世紀から5世紀にかけては危機の時代(ローマは軍人皇帝、中国は魏晋南北朝)。8世紀はフランク、ビザンツイスラーム、唐と「帝国」の時代…と共通性に注目する。

 

 スペイン風邪は「欧州戦線に植民地の人が動員された」という『映像の世紀』(難関ではこのビデオからよく出題される)の知識を引っ張ってくる。

 これはたぶん「ドボン問題」だが、阪大2015年の「ザールの戦後」と同じく「じたばたできるか」が大事。「最後まであきらめるな」はこの「未知のことに対して知識を総動員して言葉をひねり出す」こと

    そういう「あがき」が大学でやっていける資質。その辺を出題者は見ている。

 

*発展:国立(以下略)の先生の「最後まで…」は「とにかく出願し受験せよ」の意味の場合が多いですが、精神論的指導では綿密な準備が必要とされる難関大学の合格は失礼ですが無理です。

 

 ちなみにヨーロッパ全土で猛威をふるったのに「スペイン風邪」と呼ばれるのは、当時WW1で各国が情報統制をしていて、中立国のスペインの情報が流れたかららしい。横光利一の『雪解』のヒロインもこれで亡くなった。

 

こちら

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

 

 

5 人口の移動

 

例題5 大阪大学 2012年

課題 16~19世紀の大西洋の奴隷貿易が環大西洋世界の地域の歴史に及ぼした影響 140字

用語 プランテーション 産業革命 低開発

 

解答例

カリブ海や南米ではさとうプランテーションが発達しモノカルチャー化が進んだ。ヨーロッパでは奴隷貿易の利益が綿布の生産に投資され、産業革命が発生した。北米13植民地では商工業が盛んになり本国の対立から独立戦争が発生、19世紀には奴隷制度を巡って南北戦争が発生した。アフリカ大陸は人口が減少し低開発状態に陥った。151字

 

ポイント

 「環大西洋地域」なので、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカを書く。指定語句がヒント。「影響」と問われているので、間接的で長期の変化を書く。

 三角貿易の原理が分かっていれば簡単だが「低開発」という言葉は帝国書院の教科書を読んで「世界システム論」の何たるかを理解していないと難しい。

 ちなみに北米13植民地はカリブ海地域に商品を輸出して利益を上げていて、最初はイギリスも目こぼししていたが(有益な怠慢)、フレンチ=インディアン戦争以降本国の重商主義政策が強化された。割愛して他に字数を回してもいいと思うが、「環大西洋革命」が好きな大阪大学の学習向けに入れてみた。

 

 

類題 大阪大学 2012年

課題 19世紀後半~1920年代のアジア移民急増の理由、向かった先、現地の世界に与えた影響 180字

用語 交通・運輸革命 華僑・印僑 白豪主義 1924年民法

 

解答例

 

交通・運輸革命で鉄道や汽船が実用化され、19世紀後半にイギリスが中国とインドで勝利し北米で奴隷制度が廃止されると、華僑はアメリカの鉄道建設やオーストラリアの金鉱へ、印僑マレー半島カリブ海の鉱山やプランテーションへ移住した。前者は白人労働者との対立を生み、オーストラリアでは白豪主義が唱えられ、アメリカでは1924年民法でアジア系移民が全面禁止された。後者は現地で多民族社会を形成した。191字

 

ポイント

 華僑と印僑は読みやすいように分けたが、無理すれば合体も可能(読みにくい)。前回の東京大学の過去問をやってあれば「現地白人との対立」はひねり出せる。

 アロー戦争後にイギリス人が中国で大々的に労働者を募集したというのは高校生の知らない知識だが、シパーヒーの反乱奴隷解放宣言などと同時期であることから推理する(まあ現場では難しい)。

 

 人口の移動は、他にトルコ人19世紀半ばアイルランド人(ジャガイモ飢饉)、19世紀末南欧(『母を訪ねて三千里』)が思いつく。

 アルゼンチンとオーストラリアに白人が多いのは冷凍船の開発で牧畜が盛んになった後の移民だから、イタリア系移民がアメリカを目指したのはイタリア統一戦争後の混乱が原因、19世紀末にロシア系ユダヤ人がアメリカを目指したのはポグロムが影響、など移民の話題は探せば色々出てくる。

 

    西アジアの難民流入やアメリカの新大統領など移民の問題がクローズアップされているから復習しておきたい。

 

 白豪主義についてはこちら

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

 

 

 

まとめ

 

新三年生向け

  • 似たようなテーマは似たような大学で何度も出ているので、まずは過去問をやって傾向をつかむ。
  • 授業は「これは定番テーマだ」とぎらぎらしながら(笑)受ける。教科書や資料集に戻って関連事項の整理をする。

 

受験生向け

  • 過去問をやって、解説を見て、資料集のテーマ史コーナーで学習して、また過去問と類題をする。
  • 本番では、指定語句があればそこに芋づるで「いつ、どこ、なに」を書き込み方針をたてる。指定語句がない場合は時間をタテ軸、テーマ(経済、文化)をヨコ軸にとって事項を書き出す。
  • 本番では「え、そんなのやってない!」という設問が出ても、既存の知識を総動員して言葉をひねり出す。

 

 ラストは「宗教の寛容」。

 

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

 

 

世界史論述 定番テーマに挑む(4 グローバル化)

 世界史の論述定番テーマ 第4回は「世界史の中のグローバル化」についてです。

 歴史学は「現代の課題について歴史を通じて一言言う」というスタンスです。今回のは最もホットな話題のひとつです。

 

前回はこちら。

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

 

* 字数が4000字をオーバーしたので、近代以前のグローバル化は別の機会にします。

 

 

1 大航海時代~ヨーロッパの海外進出

 

例題1 大阪大学 2008年

課題 グローバル化がどのように進んだかについて 15~17世紀 300字程度

条件1 先導した主要勢力 主要な進出先の変化

条件2 アジアの諸国家や交易ネットワークなど非ヨーロッパ世界の動きとヨーロッパとの関係

条件3 グローバル化を先導した商品や産物

 

マトリックス

 

 先導勢力

主要な進出先

アジアの諸国家や交易ネットワークとの関係

商品・産物

15世紀

ポルトガル

アフリカ、アジア

既存の国家の秩序や交易ネットワークに参入する

香辛料、生糸

16世紀

スペイン

新大陸

既存の秩序を破壊する

銀 さとう

17世紀前半

オランダ

東南アジア、新大陸

 

香辛料

17世紀後半

イギリス

インド、新大陸

 

綿布 たばこ

17世紀後半

フランス

インド、新大陸

 

毛皮

 

解答例

15世紀末にポルトガルがインド航路を開発してインド、東南アジア、中国に達した。彼らは明の秩序やイスラームの交易圏に参入しつつ、時に武力を用いて拠点を確保し、日本銀を元手に香辛料や中国産の陶器を買い付けた。またアフリカの王国と結んで黒人奴隷を新大陸に輸出した。16世紀にスペインは新大陸で既存の権力を滅亡させ、銀山開発やさとうプランテーション経営を行った。17世紀前半にオランダはインド航路を押さえ香辛料貿易を独占し、北米やカリブ海にも進出した。17世紀後半にイギリスはインドで綿布の交易を行い、また北米に入植して先住民と争いながらたばこプランテーションを拡大した。遅れてフランスもインド貿易や北米植民地開発に乗り出した。306字

 

ポイント

 ヨーロッパの対外進出の展開を書かせる。私立の入試問題の定番。

 問題は条件2。アジア地域は商人の交易ネットワークや既存の秩序(明、ムガル帝国)がしっかりしている。ポルトガルはゴアやマラッカを占拠したり、ディウ沖でマムルーク朝と戦ったりするが、種子島に漂着したポルトガル人が王直(倭寇の親分)の船に乗っていたことからわかるように、現地勢力と仲良くしながら交易圏に食い込んできた。

 その辺を新大陸での横暴な振る舞い(アステカやインカを滅亡させて、自分たちの都合のいい経済システムを作る)と比較することが必要。

 

 

類題 京都大学 2009年

課題 新大陸の発見が新旧世界にもたらした直接の影響

語句 先住民 作物

 

マトリックス

新大陸

ヨーロッパ

中国

スペイン人が既存の秩序を破壊

銀が流入 価格革命

銀が流入

原住民を酷使 銀山の開発

固定地代の領主衰退

租税の銀納化

原住民の人口が激減 

封建制衰退 主権国家体制 

経済の発展 人口増加 

黒人奴隷の輸入

商業の中心が大西洋に

新大陸の作物

砂糖などのプランテーション

東欧は農場領主制

トウモロコシの栽培

複雑な民族構成

 

 

 

新大陸の作物が流入

 

 

ジャガイモの栽培  

 

解答例

新大陸ではスペインの侵略によって既存の国家が破壊された。先住民は銀山などで酷使され、疫病などで人口が激減した。そこでプランテーションの労働力として黒人が輸入されたので民族構成が複雑化した。ヨーロッパでは新大陸の銀が流入して物価が上昇し、固定地代に頼る封建領主が没落し、商業の中心は地中海から大西洋に移った。東欧では農奴制を強化され西欧向け穀物を生産する農場領主制が広まった。またジャガイモなど新大陸産の作物が伝来し、アイルランドなど寒冷地の食糧事情を改善した。中国では新大陸の銀が流入して経済が発展し、一条鞭法など租税の銀納が始まった。また新大陸産のトウモロコシが伝来して18世紀の人口増加を支えた。299字

 

ポイント

 こちらは大航海時代の「影響」=間接的な変化を書かせる問題。リード文に「アジア」「新旧両大陸」とあることに気づく。

 最近は、価格革命は新大陸の銀が流入する前から起きている(人口増加で穀物需要が増加した)という説が主流。

 

 

2 19世紀のグローバル化

 

例題2 大阪大学 2008年

課題 グローバル化がどのように進んだかについて 19世紀~20世紀初頭 300字程度

条件1 先導した主要勢力 主要な進出先の変化

条件2 アジアの諸国家や交易ネットワークなど非ヨーロッパ世界の動きとヨーロッパとの関係

条件3 グローバル化を先導した技術や人の動き

 

マトリックス

 

主要勢力

主要な進出先

アジアの諸国家や交易ネットワークなどとの関係

技術や人の動き

19世紀前半

イギリス

中国 東南アジア

戦争で現地勢力を破る 不平等条約

 

19世紀後半

イギリス、フランス、オランダ

中国 東南アジア

植民地の分割 抵抗運動

中国人、インド人の移民 蒸気船

19世紀末

イギリス、フランス、ドイツ

アフリカ

植民地の分割

海底ケーブル

20世紀初頭

アメリカ

中国 東南アジア

中国の半植民地化

 

 

解答例

19世紀に世界の工場の地位を築いたイギリスは清朝自由貿易を認めさせ、インドや東南アジアではプランテーションを開発して、工業製品の輸出と原料の輸入という国際分業体制を築いた。この結果インド系や中国系の労働者が汽船を使って東南アジア、カリブ海、オーストラリア、アフリカへ移住した。フランスもベトナムで現地勢力や清と争って植民地を拡大した。1870年代にドイツやアメリカの工業化によってイギリスの地位は低下するが、イギリスは海底ケーブルによる通信や鉄道・海運のインフラ、金融で優位を保ち、列強のアフリカ、太平洋、中国の分割でも多くの利権を得た。これに対して従属地域では民族主義的な反乱や、近代化を受容して自己改革をする動きが生まれた。311字

 

ポイント

 進出先の変化と、自由貿易推進の19世紀前半と、帝国主義による領域囲い込みの19世紀後半という質的変化を説明するという方針をたてれば、汽船や海底ケーブルといった技術の説明がスムーズにいく。ベトナムのくだりはなくてもよい。

 イギリスの19世紀前半は「自由貿易帝国主義」と理解する。公式の植民地をたくさん持たなくても(コストがかかって無駄)、イギリスの商品は世界一なので、自由貿易(それを可能にしたのが海軍力と各地に整備した港湾施設)を推し進めて経済的に世界の覇権を握ることができる。

 19世紀後半は「社会帝国主義」と理解する。アメリカ合衆国やドイツで工業力が増し、イギリスの「世界の工場」としての地位が低下すると植民地を囲い込んで、そこに資本を投下したり、国内の失業者を移民させて社会問題を解決する。また海底ケーブルによる通信網をイギリスが持っているので、先物取引の情報収集や世界中での為替の決済が可能。イギリス以外の国もイギリスのシステムに合わせたほうが便利(デファクトスタンダードの走り)。

 

 

類題 東京大学 2013年

課題  17世紀~19世紀の大西洋、インド洋~太平洋にかけての交易によって生じた開発の内容、人の移動、それに伴う軋轢 540字

条件1 カリブ海と北アメリカ両地域 非白人系の移動

条件2 奴隷制度廃止前後の差異

語句  アメリカ移民法改正(1882年) リヴァプール 産業革命 大西洋三角貿易 奴隷州 ハイチ独立 年季労働者(クーリー) 白人下層労働者

 

指定語句から「芋づる」

  • アメリカ移民法改正(1882年)…過去問のリード文。中国系移民の禁止(北米)
  • 奴隷州…南部と北部が経済対立。奴隷州をめぐる争い(北米)
  • 白人下層労働者…アジア系労働者に仕事を奪われる(北米)

 

書くべきこと

 1 開発の内容

 

 2 人の移動

  • 北米:黒人奴隷→中国人労働者


 3 軋轢

 

解答例

カリブ海地域では17世紀より砂糖プランテーションが形成された。ヨーロッパからアフリカへ日常品や武器を販売し、アフリカから黒人奴隷を購入してプランテーションで働かせ、生産した砂糖をヨーロッパへ輸出する大西洋三角貿易が発達した。リヴァプールは18世紀に奴隷貿易の港として繁栄し、その富は三角貿易の対価として取引されたインド産綿製品に刺激されて綿工業が起こったマンチェスターに投資されて、産業革命につながった。フランス革命が起こるとサント=ドマング島で黒人の蜂起が発生し、1804年にハイチ独立が達成された。この影響でカリブ海地域では奴隷制が廃止され、かわってインド系の年季労働者が導入された。北アメリカ地域では産業革命の影響で19世紀から綿花のプランテーションが拡大し、その労働力として黒人奴隷が使用され、イギリスの奴隷貿易禁止後も奴隷制が継続した。奴隷を必要とする南部と工業化が進み奴隷制に否定的な北部が奴隷州を巡って対立し、1861年に南北戦争が発生した。この結果奴隷制度は廃止され、新たな労働力として中国系移民が太平洋岸の農園や大陸横断鉄道の建設などに従事した。しかし移民労働者に職を奪われた白人下層労働者との間で対立が生じ、19世紀後半のアメリカ移民法改正で中国系移民が禁止された。533字

 

ポイント

 「黒人奴隷が禁止された後の労働力にインド系や中国系の労働者が汽船に乗って移動した」というのは高校生には厳しい(東京書籍や実教出版の教科書には載っている)。南北戦争インド大反乱、アロー戦争がほぼ同じ頃。最難関大学ではたびたび出題されるテーマ。

 リヴァプール奴隷貿易アイルランド移民についてはNHKの『世界遺産リヴァプールの回がコンパクトにまとめてある。

 

続きます。

 

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私大入試を復習して難関国立の世界史に備える

 私立大学の入試も終盤です。近畿圏では関関同立の一般入試が一巡しました。

 

 近畿圏私立大学の世界史の入試問題を10年分見ると、過去問から出題される(「かぶせ」問題)場合と、同じ年に複数の大学(あるいは同じ大学の別日程)で似たような問題がでる場合があります。しかもそれらが合否に直結する「崖っぷち問題」だったりもします。

 さらに難関国立と難関私立の間で問題が「かぶる」こともあります。特に京都大学同志社大学立命館大学では東洋史、教養もの(文化史や常識もの)、反権力ものがよく出題され、当然似たような問題に出くわします(理由は諸説あり)。

 

 大学の先生は基本的に同じような問題意識を共有していますし、日常的に研究会や学会で情報交換をしています。また学会のトレンドも現代の課題とリンクしています。

 したがって私立大学の入試問題を復習して関連事項を洗い出しておくと、近隣の国公立大学(首都圏だと早稲田、慶応)の準備になります。

 

 今日は近畿地区の2017年度世界史入試問題の大問で何が出題されたかを整理し、京都大学大阪大学の直前復習ポイントについて考えます。

 受験生は最終チェックに、新3年生は来年の準備と思って読んでください。

 入試問題は河合塾、東進、代ゼミのサイトを参考にしました(問題は新聞社のサイトに飛びます)。実物はそちらに当たってください。

 

*発展1:私は東進の「過去問データベース」がお気に入りですが、今年度はMARCH及び関関同立の世界史の問題掲載が少ないです! 更なる頑張りを期待します。

 

*発展2:私立大学や国公立大学の一般入試は概ね大学の夏休みに作られるので、前年度の9月~今年度の9月の時事問題と関連性のある事項が問われることがあります。立命館大学では今年度はスコットランド、2015年度はウクライナの歴史が出題されました(早稲田の文化構想の今年の問題で「国立西洋美術館の設計者の名前は?」とありました。舌噛みそうなあの人(笑))。

 ただ通常はもう少し「曲げて」きます。最近は米中の覇権争いを睨んでか、「清朝冊封体制の崩壊」「アメリカの対外膨張」がよく出題されています。グローバル化については「モンゴルの世紀」「大航海時代」「大西洋の三角貿易」など過去のグローバル化の様相に関する問題が頻出です。

 東京大学はここ3年覇権主義グローバル化、冷戦ときっちり現代社会の問題点を突いています。個人的にはそろそろ「宗教の寛容」についてメッセージを発信して欲しいのですが。

 

*発展3:国立至上主義の高校には「私立に合格するとモチベーションが下がるので受けるな」といった指導をする先生がいるそうですが、世界史に関しては私大の入試問題を解きながら関連事項を洗い出し、批判精神を培う必要があります。最難関国立大学文系にこのビジネスモデルは通用しません。

 

 

同志社大学 大問3題 6日分

1

儒教

ヨーロッパ科学史

戦後の東南アジア、西アジアの独立

2

ゲルマン人の世界

19世紀のヨーロッパ文化

孫文蒋介石魯迅毛沢東

3

遊牧民と中国王朝

17,18世紀のヨーロッパ文化

インドの植民地化と民族運動

4

唐の土地制度と税制

ヨーロッパ主権国家体制

アフリカの奴隷貿易、分割、独立

5

古代オリエント

ルネサンス19世紀の宗教と思想

サウジアラビア西アジア近現代史

6

イベリア半島北アフリカイスラーム王朝

アメリカ独立戦争19世紀

アフリカ戦後史

 

  • 大西洋の三角貿易は難関私立、国立大学を受験するならマスト知識。昨年大阪大学で出題された「アカプルコ貿易」「アシエント」など、名前だけ覚えずに構造を理解すること。関連事項としては19世紀の移民も大阪大学が好きなテーマ。

 

関西学院大学 大問5題 3日分のみ入手

1

ローマ帝国キリスト教

アメリカ合衆国の独立

律令制度

ヨーロッパ技術史

WW1後の民族自決

2

ギリシアとローマの文化

19世紀のドイツとフランス

チベット

アフリカ19~20世紀

朝鮮半島19世紀~20世紀

3

アイルランド

中華民国中華人民共和国

農業と農産物

唐代の東アジア

キリスト教の成立と中世世界

 

 

立命館大学 大問4題 3日分のみ入手

1

郡県制と封建制

第一次世界大戦

イタリアと主権国家体制の展開

アメリカ合衆国の拡大と帝国主義

2

三武一宗の法難

元曲

地中海の海賊

ド=ゴールの時代

3

女真族

第二次世界大戦

古代オリエントギリシアの文字の歴史

スコットランドアイルランド

 

  • 3の1は面白い問題。京都大学の入試に向けて、女真族鮮卑女真、モンゴルなど非漢族王朝の統治システムや宗教政策をタテヨコ比較する練習をしておくとよいかも。また同志社大学の入試問題にも隋唐を「拓跋王朝」と捉えるリード文があった。この辺が国立の論述で狙われるかも。
  • 京都大学は東洋前近代史の論述が2年飛んだので、今年は来るとの噂。もちろん一問一答で制度史などに穴を作らないのは当然。
  • アメリカの覇権に関する問題が同志社と同じく出題されている。

 

 

まとめ

 

  • 中国前近代の制度史、経済史、学問・宗教史、遊牧民・周辺関係史はノーミスクリアが基本。
  • 「覇権」に関わること(冊封主権国家体制、帝国主義、冷戦)は論理にもとづいて具体例があげられるようにする。特に中国とアメリカ合衆国(「パクス=ブリタニカ」はさすがに頭に入ってますよね?)。

 

 国立の前期入試は10日後。早稲田と慶応も未だ入試を残しています。第一志望の過去問だけではなく、今年の傾向にも注意して復習してください。

 

バレンタインデー ぐでたまクッキーキット

最近入試のことばかりで殺伐としているので(笑)別の話題。

 

うちの娘がバレンタインデー用にクッキーを焼いていました。

ん~、あの型抜きはどこかでみたような。

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朝8時にテレビでだらけているあの方ですね。

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チョコペンで輪郭を書きました。

隣はチョコレート。こちらも型に入れて作ります。

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この「ぐでたまクッキーキット」はサンリオオンラインショップで買いました。現在は売り切れ中。アマゾン等ではある模様。

 

ぐでたまはサンリオの登録商標です。

「どうせ義理チョコだし~」。

 

 

世界史論述 定番テーマに挑む(3 外交政策)

 世界史の論述試験の典型テーマ、第3回は外交政策です。

 最近大国が「一国行動主義」に傾こうとしています。「覇権」「帝国」は反権力を標榜する最難関大学を受験するなら用意しておきたい部分です。

 

過去ログ

 

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例題1 冊封体制

 

大阪大学 2008年

課題 中国の近代以前の世界観と外交関係 近代以降の変化 150字程度

語句 朝貢 冊封 アヘン戦争 不平等条約 日清戦争 宗主権


マトリックス

 

世界観

外交関係

近代以前

中華が世界の中心 周辺はその延長

周辺国は中国と形式的な君臣関係を結ぶ。貢ぎ物と贈り物の交換

朝貢冊封

近代以降

中国と外国は対等な主権国家

アヘン戦争 不平等条約

日清戦争

中国と冊封諸国は対等な関係。外交は力関係

宗主権

 

 

解答例

近代以前の中国は中華思想に基づき、周辺国の朝貢を受け入れ称号を与える形式的な君臣関係を結ぶ冊封体制を構築した。清はアヘン戦争敗北後ヨーロッパ列強と不平等条約を結び、アロー号戦争後は総理衙門を設置するなど対等外交を受け入れた、さらに清仏戦争日清戦争で敗北してベトナムと朝鮮の宗主権を放棄し冊封体制は崩壊した。

154字

 

ポイント

 「中華思想」は論述マスト概念(2015年の京都大学、2015年と2012年の一橋大学)。世界観は「中華思想」と「主権国家体制」、外交関係は「冊封」と「対等外交」を比較する。

 「対等外交の原則」は南京条約に出てくる。高校生だと「不平等条約って対等じゃないよ」と思うところだが、タテ社会で恩恵の冊封と、ヨコ社会で実力主義主権国家体制とを比較する。

 中華思想の理解は2の問題でも必要。また朝鮮王朝の「小中華」(朝鮮王朝は明の正当な後継者、清は夷狄、日本も夷狄)、江戸幕府の「四つの口」もバリエーション。

 

 一橋大学の類題は「外交の一環としての貿易」と「自由貿易」の比較もしたい。

 大阪大学朱印船貿易の理由を問う問題があった。日本は諸般の理由で明と朝貢貿易が出来ない(いわゆる「出禁」)ので、東南アジアで中国の絹などを手に入れた(「出会い貿易」)。

 

 

例題2 中華と遊牧民

 

京都大学 2007年

課題 中国歴代王朝が北方民族にとった懐柔策や外交政策

条件 紀元前2世紀から16世紀 できるだけ多くの事例を挙げる

 

マトリックス

 

北方民族

懐柔策

参考 討伐策

前漢 

匈奴

高祖 和親策 張騫を大月氏へ派遣

武帝の討伐

後漢

匈奴

東西に分裂 南匈奴の服属

 

隋  

突厥

突厥を分裂させる

高句麗の討伐

唐  

突厥 吐蕃 ウイグル 

突厥を服属させる 羈縻政策 家人の令 公主降嫁 安史の乱

 

宋  

契丹

澶淵の盟

 

南宋 

女真

紹興の和議

 

明  

オイラトタタール

海禁の緩和

 

 

解答例  追記 3/1 間違いを直しました

前漢の高祖は匈奴冒頓単于に敗北し毎年銀や絹を送るなど和親策をとった。武帝匈奴を挟撃するため張騫を大月氏に派遣した。後漢は分裂した匈奴のうち南匈奴を服属させた。隋は突厥を分裂させ、唐は東突厥を服属させ都護府を置いて間接統治を行った、有力な遊牧民とは家人の礼をとって同盟し、安史の乱後台頭したウイグルとは絹馬貿易で懐柔した。北宋契丹と澶淵の盟を結んで燕雲十六州の領有を認め、兄弟の礼を取り毎年銀や絹を送り、西夏とも君臣関係を結んだ。南宋は金と和議を結び、金に臣下の礼をとった。明は冊封体制を再整備して朝貢貿易を行ったが、15世紀にオイラト、16世紀にタタールが台頭すると和議を結んで貿易を拡大した。297字

 

ポイント

 匈奴の分裂、家人の令(『漢宮秋』に出てくる公主降嫁がまさにそれ)は現役生には難しいが他は書ける。東突厥の服属や絹馬貿易は難関私立の過去問にあり。

 清朝にとってアヘン戦争講和条約は「遊牧民に金を渡して懐柔する」みたいな認識だったので貿易額は増えず、アロー戦争につながる。

 


例題3 ヨーロッパの主権国家国民国家

 

東京大学 2006年

課題 戦争を助長したり戦争を抑制したりする傾向がどのように現れたか。510字

条件 三十年戦争フランス革命第一次世界大戦の三つの時期

語句 ウェストファリア条約 国際連盟 十四カ条 『戦争と平和の法』 総力戦 徴兵制 ナショナリズム 平和に関する布告

リード文のヒント

近代以降のヨーロッパで主権国家が成立→民主主義が発展するが各地で戦争が多発するという矛盾→民主化国民意識の高揚をもたらし、対外戦争を支える国内的基盤を強化したため→国際法制定、国際機関設立など戦争の勃発を防ぐ努力もなされた。


マトリックス

 

戦争を助長

戦争を抑制

主権国家と民主主義

国民意識の高揚 戦争を支える国内基盤

国際法 国際機関

三十年戦争

主権国家の利害対立 傭兵の使用

ウェストファリア条約勢力均衡

 『戦争と平和の法』→国際法の必要性

フランス革命

革命防衛戦争→ナショナリズム

徴兵制→国民軍、農民が戦争の主体

ウィーン体制 勢力均衡

民主主義

第一次世界大戦

秘密外交→祖国防衛戦争

総力戦→国民生活が戦争のために再編成される。

平和に関する布告→無併合無賠償

十四カ条

国際連盟  集団安全保障

 

解答例

三十年戦争主権国家成立後初の国際戦争であった。王朝の利害対立が戦争を引き起こし、傭兵の略奪によってドイツに大きな被害を出した。ウェストファリア条約でドイツの領邦を含む主権国家の権利が認められ勢力均衡が図られる一方、グロティウスは戦争と平和の法』国際法の必要性が訴えた。フランス革命では政府が民主主義など革命の成果を防衛するという名目で戦争を起こし、その結果ナショナリズムが高揚し徴兵制による国民軍が編成された。ナポレオンの大陸支配によってナショナリズムと国民軍がヨーロッパに広まると、国民国家を建設するための革命運動や統一戦争が19世紀後半まで断続的に発生した。その後国民国家体制が確立すると国家間の軍事同盟網が形成され、第一次世界大戦が勃発した。各国はナショナリズムを高揚させ総力戦体制を敷いたため、国民全員が戦争に巻き込まれることになった。総力戦に耐えかねたロシアで革命が起こり、ボリシェヴィキ平和に関する布告を出して即時停戦や民族自決を訴えた。それに対抗して出されたウィルソン大統領の十四か条には秘密外交の禁止や国際的平和機構の創設が盛り込まれ、戦後に初の集団安全保障体制である国際連盟が発足した。

505字


ポイント

 民主主義が戦争を助長する、国民国家の外交手段であった戦争が自己目的化する、など民主主義と戦争について考えさせられる良問。

 三十年戦争主権国家フランス革命国民国家、WW1=総力戦という意味づけができていて、その影響を抽象的に整理できているかが勝負所。

 高校生に難しいのが「ウェストファリア条約」から「主権国家勢力均衡」をひねり出すところ。次にフランス革命について「自由・平等」だけでなく「国民統合と国民軍」に着目する。総力戦体制の部分は指定語句がたくさんあるので書きやすい。

 

 

例題4 戦後の世界

 

京都大学 2014年

課題 第二次世界大戦終結から冷戦の終わりまでのドイツ史 300字

条件 ヨーロッパでの冷戦の展開との関連に焦点を当てて


マトリックス

 

ドイツ

冷戦

1940年代

4国で分割 ベルリンも4国分割

冷戦の開始

 

東西ドイツの分離独立

ベルリン封鎖 

1960年代

ベルリンの壁建設

キューバ危機

1970年代

ブラントの東方外交 東西ドイツ国連加盟

デタント

1980年代

ベルリンの壁崩壊 東ドイツ社会主義政権崩壊 ドイツの統一

ゴルバチョフペレストロイカ 冷戦終結

 

解答例   2/12修正

第二次世界大戦後ドイツとベルリンは東西に分割され西側を米英仏が、東側をソ連が占領した。ソ連ベルリン封鎖を契機に西側はドイツ連邦共和国、東側はドイツ民主共和国として独立し、それぞれNATOワルシャワ条約機構と東西陣営に組み込まれた。50年代にソ連の平和共存路線によって緊張が緩和するが東から西への人口流出を契機に東ドイツが東西ベルリン間に壁を建設して対立が再燃した。70年代の緊張緩和の中で関係改善が進み、両国は東西ドイツ基本条約で相互を承認し、国連に同時加盟した。80年代にソ連ゴルバチョフが現れ89年に冷戦が終結すると、ベルリンの壁が開放され東ドイツ社会主義政権が崩壊して90年に東西ドイツが統一された。299字

 

ポイント

 テーマに沿って必要な事項をピックアップする京都大学の定番問題。現代史は手が回らない受験生が多いと思うが、冷戦は一通り押さえておきたい。解答例は名前を削り、冷戦の対立と緩和の流れを重視した。

 

 

類題演習

 

1 大阪大学 2009年

課題 1947年~1949年のヨーロッパを舞台とした国際政治の情勢 300字程度

 

解答例

1947年にアメリカ合衆国がマーシャルプランを発表し、ヨーロッパの共産化を防止するため復興支援を表明した。それに対してソ連は東欧諸国らとコミンフォルムを結成し、翌年にはコメコンを結成した。48年にチェコスロヴァキア共産党のクーデタが起こると西ヨーロッパ諸国はブリュッセル条約を結び、49年に北大西洋条約機構に発展した。ドイツとベルリン市は西側を米英仏が、東側をソ連が占領していたが、48年に西側が通貨改革を行うとソ連が反発してベルリンを封鎖したが、西側は空輸による物資輸送で抵抗した。1949年にソ連ベルリン封鎖を解除したが、西側はアデナウアーを首相とするドイツ連邦共和国、東側はドイツ民主共和国として分離独立した。301字

 

ポイント

 授業で戦後史をしっかりやっているかどうかで差がつく問題。

 

 

2 京都大学 2007年

課題 米ソ冷戦下で1960年代に世界各地で起きた多極化の様相 300字

条件 1950年代半ばに変化の兆し、60年代に本格化

 

解答例

西側陣営ではフランスのド=ゴールが核保有を宣言し、NATOを脱退するなどアメリカと距離を置く姿勢を取った。また67年にはECが発足してアメリカの経済力に対抗した。東側陣営では中華人民共和国ソ連の平和共存路線に反発して中ソ論争を起こし、69年にはソ連と国境紛争を起こした。またフランスと共に部分的核実験禁止条約に参加せず核実験に成功した。東欧ではアルバニアルーマニアソ連と距離を置くようになり、68年にはチェコスロヴァキアドプチェクらが「プラハの春」と呼ばれる民主化運動を起こしたが鎮圧された。ユーゴスラヴィアでは非同盟諸国首脳会議が開かれ、アフリカでは1960年に17の国が独立するなど第三勢力が台頭した。296

 

ポイント

 「多極化」から東西陣営の独自路線と途上国からの異議申し立ての両方を思いつく。「50年代から変化の兆し」がヒント。アルバニアルーマニアは難関私立2周目知識。

 

* 1980年代の歴史は東京大学の2016年の問題をやっておく。

 

 次回はグローバル化について。

 

世界史論述 定番テーマに挑む(2 経済史)

国公立大学で課される世界史論述テーマの典型問題、第2回は経済史です。


*大西洋の三角貿易や東南アジアの植民地化は「グローバル化」で扱います。

*解答の方針、著作権の考え方などは過去ログを見てください。

 

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

 

 

例題1 中国の経済史


大阪大学 2009年

課題 中国華北から華南における経済的中心の移動について 180字程度

条件 7世紀~14世紀

語句 大運河 江南 ムスリム商人 稲作 海運


マトリックス

 

政治

経済

南北の統一

大運河で華北と江南が接続

唐初

長安中心 律令国

ムスリム商人の来港 市舶司

唐末

安史の乱

江南の経済力で延命

北宋

首都開封

物流盛んに 江南の開発 稲作

南宋

南へ逃げる

江南の開発

首都大都

ユーラシア循環 海運

首都南京

江南の経済力

 

解答例
隋代に大運河が建設され江南華北と結ばれた。唐は長安が政治経済の中心であったが8世紀にはムスリム商人が華南に訪れ、安史の乱後は江南の経済が王朝を支えた。宋では江南は囲田の開発や占城稲の導入で稲作が盛んとなり、開封に穀物を供給した。宋が南に逃れると江南の開発は進み、元代には大運河の改修や海運の整備で江南の穀物が大都へ運ばれた。14世紀には江南の経済力を背景に南京を首都として明が成立した。(193字)

 

ポイント

 江南の開発は京都大学(2011年)でも出題されている定番問題。「中心の移動」が引っかかるが、政治の中心は華北だが、次第に江南の経済に依存するようになり、最終的に江南の経済力を背景とした王朝が成立する、というように長いスパンでじりじりと経済の中心が江南に移動したことを書く、というのが私の見解。

 まずは縦軸。7世紀から14世紀なので、王朝に変換すると隋~明。指定語句に「大運河」があるので、大運河の建設の意図や影響を書く。ムスリム商人はヒントに「華南」とあるので唐で使いたい。「海運」は元で14世紀だが、明まで書いた方がいい。

 高校生に難しいのは安史の乱後の唐。節度使が内地におかれて唐はぼろぼろになるが、その後10世紀まで生き延びるのは江南の地主が協力したから。授業で先生が言っている(はず)。

 

*発展 大阪大学は「○○字程度」。解答欄は1行余分にあるので、20字オーバーは許してください(笑)。

 

類題演習

 

1 大阪大学 2013年

課題 10世紀中国の経済規模拡大の背景となった社会経済の動態 100字程度

語句 商業 都市 貨幣経済 農業開発

 

メモ

都市 商業→草市 鎮 首都開封の繁栄

貨幣経済→銅銭、交子・会子

農業開発→長江下流の開発、稲作

 

解答例

長江下流域では囲田の形成や占城稲の導入など農業開発が進んだ。その結果首都開封や草子や鎮など都市商業が盛んになった。貨幣経済も発達し、銅銭が大量に発行され手形から発達した交子や会子など紙幣も流通した。100字

 

ポイント

 マスト問題。教科書に『清明上河図』が載っているが(私大だと書かされる)、長安では東市と西市が置かれていて営業の場所や時間(昼しか営業できない)が定められていた。この絵から開封には常設店舗が軒を連ね(夜間営業できる)自由取引していた様子がうかがえる。

 

2 大阪大学 2012年

課題 クビライ以降の「海と陸をつなぐ交通ネットワーク」 150字程度

条件 どのように形成されたか。交易で活躍した人。用いられた通貨。

語句 泉州 海運 大都 ジャムチ

 

メモ

泉州→ユーラシア循環経済の海側

海運→江南~山東半島~大都

ジャムチ→ユーラシア循環経済の内陸側

 

解答例

草原やオアシス地帯ではジャムチと呼ばれる駅伝制が整備された。また泉州からイルハン国へいたる海の道が繁栄した。これらの交易ルートでは中央アジアやアラビアのムスリム商人が往来した。漢大陸では大運河が改修され、江南から大都への海運も整備されたのでユーラシア循環ルートが形成され、銀や銅銭の他、紙幣の交鈔が流通した。(154字)

 

ポイント

大阪大学を受験するなら「13世紀 モンゴル」は必ず復習すること。

 

3 大阪大学 2013年

課題 18世紀中国の経済規模の拡大の背景 150字程度

条件 政治、経済、社会的動態を説明する

語句 人口 トウモロコシ 移住 開発

 

メモ

人口→17世紀、明清交代で人口減少 18世紀、政治の安定で人口増加

トウモロコシ→人口増加で山間部が開発、トウモロコシを栽培

移住→南洋華僑

 


解答例

戦乱が終わり18世紀に清の統治が安定すると人口が増加し、内陸部で新たな耕地が開発されて人々が移住した。新大陸から伝わったトウモロコシが人口増加を支えた。台湾平定後は海禁が解除され、海上貿易が発展し銀が中国に流入して経済が繁栄した。福建や広東では商業目的で東南アジアへ移住するものが現れ、南洋華僑の元となった。153字


ポイント

 「トウモロコシ」の下りは教科書に載っている。難関国立大学を目指すなら授業中から「グローバル化」の視点で教科書を読む。

 

 

例題2 ローマの社会経済史

 

大阪大学 2016年

課題 ローマの征服戦争と版図の拡大がローマ社会にもたらした変化 100字程度

語句 重装歩兵 属州 無産市民 公有地 奴隷制大農場

 

メモ

重装歩兵→共和政ローマの軍の中核 自作農

属州→自作農が長年の征服戦争への従軍と属州からの穀物の流入で無産市民に

公有地→征服地はローマの公有で貸し出されるという建前。有力者が集積

奴隷制大農場→ラティフンディア

 

解答例

重装歩兵の中心であった農民が長年の従軍と属州からの安価な穀物の流入で没落し無産市民として都市に流入した。一方徴税請負で台頭した騎士階級は公有地を占有してぶどう酒やオリーブ油を作る奴隷制大農場を形成した。101字

 

ポイント

 共和政が対外発展をする中で変質してくる過程はローマ史の論述の鉄板のひとつ。ただ高校生には「公有地」という概念が難しい。リキニウス法を「大土地所有の制限」ではなく「公有地の占有の制限」と理解しているかがふるい落としどころ。

 軍制の変化(市民皆兵→有力者の私兵)に注目する出題もあるので要復習。

 コロナトゥス制度、元首政から専制君主政の変化も説明できるように。

 


例題3 封建制の比較

 

大阪大学 2013年

課題 10世紀~12世紀 ヨーロッパ、日本、西アジアにおける土地や農民への新しい支配・経営の状況 150字程度

条件 どのような勢力、どのような土地や農民の支配・経営が展開したか


メモ

共通点 武士、騎士、戦士が土地や農民を支配する

相違点 封建制度 軍役の負担の代わりに土地の安堵 自給自足的

    イクター制

    アター制:征服地からの徴税、カリフが俸給を戦士に支給

    →征服地から滅茶苦茶徴税する可能性

    →戦士に俸給に見合う土地の徴税権を認める(裁判権などはない)

    →滅茶苦茶な徴税はしなくなる

 

解答例

3地域とも軍人が土地や農民を支配・経営する体制が形成された。日本やヨーロッパでは武士や騎士が領主として荘園を領有し、有力者に忠誠を誓う代わりに土地の支配を保障され、農民を使用して自給的な経営を行っていた。西アジアではブワイフ朝の時代に軍人はカリフから給与に見合う土地の徴税権のみを授かるというイクター制が創始され、各地で一般化した。166字

 

ポイント

 用語だけ覚えずに内容を理解する。イスラームでは他にオスマン帝国のティマール、ムガル帝国のマンサブダール制も説明できるようにしておく。

 

 

例題4 中世封建制の解体

 

大阪大学 2014年

課題 黒死病によるヨーロッパの人口減少と、社会的な大きな変動と混乱の内容、短期的な影響と、数世紀にわたる長期的結果に分けて 200字

メモ

短期的:農民の人口が減少→領主が束縛を緩める 貨幣地代の拡大

    →農民の地位向上→領主が困窮→封建反動→農民反乱

長期的:領主が没落→王権の伸張→主権国家体制

    西欧で人口回復→食糧不足→東欧でグーツヘルシャフト

 

解答例

短期的には農民の人口が減少し、領主は束縛を緩めたので農民の地位が向上した。貨幣経済の浸透から独立自営農民も現れた。困窮した領主が再び農奴制を強めると農民反乱が起こり、荘園制が解体に向かった。長期的には諸侯が没落し、都市商人と結んだ国王が諸侯を廷臣化して中世封建制が解体して主権国家体制が形成された。また西欧では商工業が発達し、東欧では輸出穀物を作るため農奴制が強化されるなど両者の違いが明確になった。200字

 

ポイント

中世後期の有名な論理問題。短期:荘園制の解体と、長期:主権国家体制の形成を書く。東欧の再版農奴制は大航海時代の影響でも出てくる。

 

 

例題5 中世ヨーロッパ、商業の発達

 

一橋大学 2008年

課題 13世紀から17世紀のハンザ同盟の活動 400字

条件  担い手、地域、交易品、衰退の理由 レヴァント貿易との比較

 

メモ
担い手:北ドイツ商人 リューベックが盟主 デンマークに対抗

地域:北海、バルト海が中心

   ロンドン、ブリュージュ、ベルゲン、ノヴゴロドに在外商館

交易品:材木、穀物など日常品

衰退の理由

14世紀:カルマル同盟との争い

16世紀:オランダ商人が東欧の穀物貿易に乗り出す。イギリスがロンドンの在外公館を閉鎖して東インド会社を設立する

17世紀:三十年戦争による荒廃。領邦国家の台頭。自治都市の衰退

レヴァント貿易:香辛料、絹など奢侈品を扱う イスラームとの取引

 

解答例

ハンザ同盟デンマークに対抗してリューベックを盟主として結成された北ドイツを中心とする都市同盟であった。北イタリア諸都市のレヴァント貿易がイスラーム商人と香辛料や絹など奢侈品を取引していたのに対して、ハンザ同盟は北海やバルト海を中心に北欧の木材、鉄、ニシン、東欧の穀物を扱った。またロンドン、ブリュージュ、ベルゲン、ノヴゴロドに在外商館をおき、14世紀には共通の通貨や海軍を持った。しかし15世紀にデンマークを中心とするカルマル同盟に敗北してバルト海制海権を失い、またポーランドが強大化して北ドイツ都市を圧迫した。16世紀に大航海時代が始まり西欧の人口増加で穀物需要が高まるとオランダやイギリスの商人がバルト海貿易に乗り出し、17世紀にはオランダがバルト海穀物貿易を独占し、イギリスやロシアは在外公館を閉鎖した。また三十年戦争の被害や領邦君主の集権化によって都市への圧力が強まり、ハンザ同盟も衰退した。399字

 

ポイント

経済界に圧倒的な人脈を持つ一橋大学らしい無茶ぶり問題。ただ17世紀オランダの繁栄は、東インド会社ではなくバルト海穀物貿易を独占したから(オランダ船は小回りがきくのでユトランド半島を突破して大西洋側に直接穀物を運べた)というのは覚えて損はない。

 

次回は外交。

 

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世界史論述 定番テーマに挑む(1 統治システム)

 国公立大学個別試験の世界史では必ず論述問題が出題されます。


 筑波大学の2016年の問題を見ると、第4問「19世紀末から20世紀前半までの朝鮮半島をめぐる歴史の展開」は穴埋め問題と同じく記憶を「はき出す」ことで対応できますが、第2問「14世紀半ばから18世紀末までの明清の海上貿易管理体制」は「海禁」や「中華帝国」などのマクロな視点が求められます。

 国公立大学の個別問題を攻略するには、1「センター試験の知識」に2「マクロな視点」を二周目の知識として加える必要があります。

 

 入試問題を専門的な知識で解説するサイトは他にありますので、ここでは高校生が利用可能な教科書レベルの知識と理解で問題にアプローチする方法について考えます。

 私は演習で生徒たちが意見を出し合いながらマトリックス(タテヨコ表)を完成させていく方法をとっています(おお、アクティブラーニング(笑))。今回はその再録です。

 主に大阪大学京都大学の問題を使用します。教科書に載っていても高校生の知識を超えるような内容も出てきますがご容赦ください。

 

 国立の定番問題について、次の順番で紹介する予定です(前期試験までに全部行くのは無理そう)。

  1. 統治システム
  2. 経済
  3. 外交
  4. グローバル化
  5. 宗教

 

*入試問題は著作物なので、著作権法の範囲で引用します。解答例は私の創作です。問題文は外部サイトから入手してください。

 

*論述用教材は過去ログを参考にしてください。

 

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 最近出版された『みるみる論述力がつく世界史』(山川出版社)は、マクロな視点が必要な例題として選んでいて、解法に至る過程や解説も充実しています。私が補習でしていることに近いです。新3年生には夏休みぐらいから取り組んで欲しい、お薦めの一冊です。

 

  

1 政治制度

 

大阪大学 2011年

問題  秦と漢で形成された中華帝国の仕組み 250字程度

条件1 中央が地方を支配する制度 対外関係の原則 正統とされた思想 歴史書

条件2 秦漢で変化があれば触れる

語句  封建制 郡県制 委奴国王 儒家 司馬遷

 

マトリックス 

 

地方を支配する制度

対外関係の原則

正統思想

歴史書

郡県制→中央集権

遊牧民と争う

法家

 

郡国制→郡県+封建

漢委奴国王→冊封体制

儒家中華思想

司馬遷→正史

 

解答例

統治制度では秦は中央官僚を地方に派遣する郡県制を実施した。漢の初期には有力者を地方に封じる封建制と郡県制を併用する郡国制がとられたが、前2世紀半ばには実質郡県制になった。思想では秦は法家、漢は儒家を採用して政治の指針とし、後者は華夷の別など王朝の正統性の根拠になった。対外関係では、遊牧民とは妃を降嫁させるなど懐柔で関係を保ち、周辺国とは委奴国王朝貢に代表される形式的な君臣関係を結ぶ冊封体制が確立した。歴史書では過去の王朝の業績を紀伝体で記録する正史の形式が漢代の司馬遷や班固によって完成した。(248字)

 

ポイント

 

 皇帝を中心とする中央集権システムのハード面(郡県と冊封)、ソフト面(儒学と歴史)が課題です。「中華帝国」という概念がちゃんと理解できているかが問われています。

 まず問題文の指示をマトリックスにします。この場合は秦と漢を縦軸、4つの条件を横軸に取ります。

 

*発展 論述問題の多くは先ほどの筑波大学のように「19世紀末から20世紀前半」という文章から「何から書き始めて、何で終わるか」と縦軸を正確にとれるかが第一関門です。

    「初頭」は01〜10年、「末」は91~00年、「前半」「後半」は50年区切り、「半ば」は40年代〜60年代、が目安です。

    筑波大学の問題の場合「14世紀半ば」は明の建国、「18世紀末」はマカートニーの訪問になります。

 

 表の中に指定語句を入れて文章の枠組みを決めます。

  • 地方統治:秦は郡県制、漢は郡国制を採用した
  • 思想:秦は法家、漢は儒家を採用した
  • 歴史:正史が編纂された

 

 この枠組みに沿って文章にしていきます。字数が少ない場合は事実だけ、字数が多い場合は内容や前後のつながりを加えて、目標字数に届くようにします。

 

 追加する事項は次の5つです。

1 背景(間接的な原因)

2 契機(直接的な原因)

3 内容(事項の詳細 事件の経過)

4 結果(直接的な変化)

5 影響(間接的な変化)

 

 出題の意図は「秦漢で生まれたシステムが後の中華帝国のシステムになったことを事例を挙げて説明しなさい」ですから、誘導どおりに事例を挙げていきます。

 「変化があれば書くように」とありますから、郡県制と郡国制の違いがわかるように内容を書きます(封建制がヒント)。

 また後世につながる「中華帝国の仕組み」が問われていますから、冊封体制についても内容をしっかり書いて、後世への影響を匂わせます。

 

 文章にするときは各トピックの説明をなるべく均等にします。例題の場合は4項目なので、250÷4=だいたい60字、ただこの例題の場合は指定語句の兼ね合いで「地方制度」と「対外関係」で字数を多めに消化した方がいいです。

 

*発展 解答例では遊牧民との関係も書きましたが、高校生には難しいと思います(対外関係の「原則」なので「家人の礼」は書かなくてよいかも)。ただ京都大学に「遊牧民の懐柔の歴史」という有名出題があり、大阪大学遊牧民の研究が盛んです。

 

 高校生は最初は事項の羅列でかまいません。とにかく自力で書いてみて、わかっている先生に見てもらって、出題の意図に沿うような追加情報をどの程度入れるか教えてもらいましょう。

 

  ここからは演習です。頑張って解答してください。

 

2 税制

 

大阪大学 2014年

問題  8世紀~18世紀 中国の農民が負担した税制の変化 150字程度

条件1 8世紀、16世紀、18世紀の画期 何で納めた、誰が負担したか

語句  土地税 人頭税 穀物 銭 銀 成人男子 世帯

 

マトリックス 

 

Before

After

8世紀

租庸調:成人男子に現物で課税

両税法:世帯の資産に対して銭で納付

16世紀

両税法が複雑化→一条鞭法

土地税と人頭税を銀で一括納付

18世紀

人頭税逃れが横行する→地丁銀

土地税と人頭税を繰り込んで人頭税を廃止

 

解答例 

成人男子に土地を支給し穀物など現物で徴税した均田制が行き詰まると、8世紀後半に世帯の資産に応じてで徴税する両税法が実施された。明代に税の項目が複雑化すると、16世紀に土地税人頭税を一括して納する一条鞭法が実施された。清代に人頭税逃れが横行すると18世紀に土地税に人頭税を繰り込む地丁銀が実施されて人頭税が消滅した。(158字)

 

ポイント

 

 各時代の税制はセンター試験的に判別できても、内容の違い、背景を知っていないと文章になりません。

 政治制度、税制、官吏任用制度などは、なぜそれらが実施されたのか、背景や契機についても抜け漏れをつぶしておきましょう。

 

 

3 支配階級

 

京都大学 2008年

課題 宋代の士大夫層の新しさ 300字以内

条件 新しい土地制度、学術 以前と比較する

 

マトリックス 

 

支配層

貴族

士大夫

土地制度

荘園制

佃戸制

学術

訓詁学

宋学

 

解答例

唐では貴族が門閥を形成して政治の実権を握り、均田制が崩壊し両税法で大土地所有が公認されると没落農民を私有民化して荘園を拡大した。しかし唐末五代に貴族が没落すると形勢戸と呼ばれる新興地主層が台頭して貴族の荘園を集積し、小作人に土地を貸し出す佃戸制を行った。宋が文治主義を進め科挙を盛んに実施すると、形勢戸が科挙官僚として政界に進出し、儒教的素養を持つ士大夫層を形成して皇帝親政体制を支えた。儒教は、唐では経典の解釈を中心とする訓詁学が盛んで学問が固定化されたが、宋では禅宗の影響を受けて物事の本質を追求する宋学士大夫層に受け入れられ、遊牧民の圧迫の元で大義名分論や華夷の別など中華思想が体系化された。

(300字)

 

ポイント


 中国史の定番「唐宋比較」を士大夫の観点から書かせます。

 高校生だと字数が不足すると思います。まず佃戸制と士大夫の説明をしっかりまとめ、「荘園と貴族はその逆」と考えて、知識をつなぎ合わせて文章にします。

 最難関、難関国立大学の世界史はこの「知らないことでも知っていることを使って言葉をひねり出す」ができるとライバルに差が付けられます。

 京都大学駿台の話だと「加点法」の模様なので、苦手な人は必要な説明をして部分点でしのぐしかないです。

 

 

4 官吏任用制度

 

京都大学 2014年

課題 科挙制度の変遷

条件 政治 社会 文化に与えた影響

 

マトリックス

 

任用制度

政治

社会

文化

南北朝

九品中正法

貴族中心

門閥貴族の固定化

 

科挙始まる

北朝の貴族牽制

 

 

科挙

門閥貴族は蔭位の制

 

訓詁学唐詩

科挙

殿試、科挙官僚が政治の中心に

地主の政界進出、士大夫

宋学発達

科挙中断

モンゴル人優遇

士大夫冷遇

朱子学発達

科挙復活

皇帝親政

郷紳

朱子学が官学に

科挙

満漢偶数官制

 

考証学

清末

科挙廃止

ヨーロッパの進出について行けない

 

 

 

解答例 

隋は門閥貴族を牽制するため九品中正にかわって試験による官吏登用制度である科挙を実施した。唐代には蔭位の制などで貴族の勢力は維持されたが、則天武后以降科挙官僚が重視され、五経正義など儒教の教義が整理され、試験科目でもある唐詩が発達した。宋代には皇帝の面接試験である殿試など皇帝親政体制が確立して科挙が盛んになり、新興地主層が政界に進出して士大夫層を形成し、文化の担い手になった。元代には科挙は一時中断するが明代には復活し、朱子学が官学化された。また科挙合格者は郷紳として地方の政治や文化を担った。清代にも科挙は行われたがヨーロッパ列強との争いの中で政治の近代化が求められ、1905年に科挙は廃止された。

(297字)

 

答案作成のポイント


 テーマ史の定番です。受験生は「キター!」と思ったでしょうが「社会や文化との関わり」がくせ者です。科挙から蔭位の制、則天武后唐詩朱子学、郷紳あたりが逆検索できるかです。

 マトリックスからストーリーを建てましょう。この場合は「科挙が貴族支配を牽制し、地主を取り込んで皇帝親政体制を確立したが、近代化に負ける」です。これに儒教を中心とする中国文化史の流れがリンクすれば解答に近づきます。

 

まとめ

  • まずは事項の正確な内容、「いつ、どこ、誰、なに、なぜ」をセンター試験の勉強を通じて確実にしましょう。
  • 論述では事項の背景、契機、内容、結果、影響が問われます。用語を機械的に覚えるのではなく、教科書の記述の中で覚えましょう。
  • 論述はマクロな視点がないと解答できません。教科書の概念的な記述、資料集のモデル図、講義本や論述問題集の解説を読んで、普段から「へーっ」と思うことが必要です。

  

次回は経済史。

 

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